2012年09月16日

椎葉焼畑蕎麦紀行


5月に「蕎麦春秋」誌の読者宛に「椎葉蕎麦紀行」の案内が届いた。旅程に「蕎麦」と「民謡」という私にとって最も関心の高いキーワードがあったので喜んで参加した。


参加者は、関西から参加した限界集落(65歳以上の人が半数以上を占める集落)の活性化に取り組んでいる四方八洲男前綾部市長及びその関係者一行と椎葉に感心のある九州の方々が殆どで、蕎麦春秋の縁で参加したのは、四方洋編集長のお嬢さんと私のみ。


以下は、蕎麦に絞ったツアー報告記。




峰越の館〜民宿「焼畑」



初日は、まず、NHKテレビ「よみがえりの森 千年の村 クニ子おばばの焼畑物語」で徹夜神楽が奉じられた峰越の館という公民館へ。ここで、同番組の主役である椎葉クニ子氏より焼畑体験について興味深い話を聞いたあと、椎葉クニ子氏の息子勝氏一家が営む民宿「焼畑」へ徒歩で移動する。上り坂が続くが汗をかくこともなく、深山にいることを実感する。


山の幸をふんだんに用いた品々が並ぶ夕食の中でソバを使ったものは「ソマ切り」。湯ごねし短く幅広く切ったそば切りを昆布や干しシイタケなどで取った温かいダシ汁に入れたもので、大切な来客があったときに出されるものとされている。お代り自由で食べたい気だけはあるのだが、他にも料理にも箸が移り、お代りは1回だけ。その後、椎葉民謡の大会で何回も日本一となった方の熱唱を拝聴する。





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焼畑〜共同作業体験場



翌日は、朝食後速やかに焼畑に移動。今年は、気候不順のせいで畑を焼くのが例年より大幅に遅れ、8月20日過ぎとなったため、ソバはふた葉が出揃った状態というところ。ソバばかりに気が回って、上から下を見下ろすとかなりの急斜面。よく、このような場所で作業が出来るものと感心。焼畑の下には御幣と火入れ許可証が祀られたままで、その前で、勝氏が山の神への祈りを再現してくれる。なお、先般のテレビ番組の中で、クニ子おばばが土を食べるシーンがあり、千葉佐原の小堀屋秘伝書の土切りとの関係を伺おうとしたのだが、椎葉でもこのような習慣は殆ど無く、地元でもあの場面に当惑している声があるとのこと、詳しくは伺えなかった。



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続いて焼畑のすぐ下にある共同作業体験場で石臼でのソバ碾き体験とワクド汁作りをする予定だったが、天気が良いのでワクド汁作りは地元の皆様にお願いし、熊本県境までの見物となった。ワクド汁とは、干しシイタケやイリコでダシを取った味噌汁に野菜を入れ、そばがきを入れて煮たものであるが、そばがきが椎葉ではワクドと呼ぶ蛙に似ているのでその名がついている。


ワクド汁は昼食にアワを入れて炊いたおにぎりと一緒に出されたが、素朴さの中にも蕎麦の甘さが際立ち、加藤晴之氏が絶賛した焼畑の蕎麦の素晴らしさの一面を理解出来たような気がした。



なお、焼畑の蕎麦は小粒の在来種。その蕎麦粉は高価で通信販売されている。(ただし、新蕎麦が収穫されるまで販売用の在庫はなしとのこと)

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旅館鶴富屋敷


2日目は旅館鶴富屋敷泊りとなる。夕食の会場は重要文化財である鶴富屋敷の座敷。膳には大根おろしをのせた細切りの冷やかけそばが並んでいる。椎葉産と隣町の美郷町産の粉とを混ぜ外二で打ったものとのこと。量が寂しいので、もりそばを追加オーダー。そばの香り、風味は良く、汁はほとんど浸けず、一気に食べてしまった。食後、椎葉神楽が演じられた。重要文化財の建物の下で演じられる重要無形文化財の神楽舞の組み合わせ。このような恐れ多い機会は再び得ることがあろうかと思いつつ、間近で見物させて貰った。


また、鶴富屋敷には、水唐臼・唐臼・搗き臼・石臼と様々な臼が展示されており、そちらにも興味を惹かれた。



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紀行のそば関連報告は以上。私は、熊本空港で解散後、更に福岡で2軒のお蕎麦屋さんを訪問し翌日LCCで帰京した。


帰京してからこのツアーの目的を私なりにまとめたところ次の3つにまとまった。

   秘境といわれた椎葉の焼畑の蕎麦を実感すること(聴く、見る、食べる)

   秘境と言われた地でも限界集落とならないよう努力している人がいることを知ること

   椎葉の自然、民俗を楽しむこと

ということで、いずれをも堪能出来た旅であった。実行関係者の皆様に心より感謝する次第。



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posted by 石臼の会会員 at 19:29| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | ⇒宮崎・大分・熊本・鹿児島 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする