2012年04月02日

祖谷(風)そば@徳島駅2番ホーム「麺家れもん」

諸事情あって、四国周遊うどんの旅に御伴することに相成った。もともと食いしん坊の麺喰いであるからして、この旅のお誘いがあった時に「面白そうだねぇ」と曖昧ながらも肯定的な返事をしておいたら、あとはベルトコンベアーに乗せられたが如く、飛行機で海を渡ったかと思ったら、来る日も来る日も、電車で移動しては「うどん」、バスで移動しては「うどん」、うどんタクシーに乗ったら「うどん」「うどん」「うどん」と、太く白い麺が次々と目前に現れた。



そう ちょうど、養鶏場のブロイラーの気持ちが、或いは強制的に食べさせられ肝臓を太らされるガチョウの気持ちが分かるような?過酷な状況になった頃である。


突然「そば」の文字が視界に入ったような…気がした。あぁ〜この圧倒的うどん圏で、砂漠に広がる蜃気楼のような、ありもしない物が見えるようになったのか?あぁ〜っ、幻が見えるほどに、それ程までに私は蕎麦が好きだったんだなぁ。訳も分からず目をこすってもう一度見てみると、なんと嬉しや、風にはためき反転した「そば」の文字が実在した。


祖谷そば幟.jpg


(※うどんも好きですよ。好きですけれど、うどんの食べ歩きは、蕎麦の食べ歩きよりも、ずぅ〜〜っと厳しいということを、この度、身を以て知りましたです。はい。)

祖谷蕎麦


おぉ〜っ!ここに?!祖谷そば?!

幟を見てもまだ「ここに?」と半信半疑。四半世紀前に、やはり四国周遊を行った際、そうとは知らずに少し寂れた祖谷で「かけうどん?」と見紛う「蕎麦」を食べた。それが祖谷蕎麦だ。



徳島祖谷地方の無骨なほど逞しいうどんのような生粉打ち蕎麦は、うどん王国四国の中では例外的で、剣山から流れ出る清水と深い谷に囲まれて群生した地元のソバ粉(当時は祖谷在来種だけだったと思われる)で、江戸蕎麦とは対極にあるような蕎麦を打っていた。平家落人伝説とセットで聞いた解説が興味深く、滞在中何杯も頂いた記憶がある。



何とか今一度味わいたいと熱望していたのだが、あのかずら橋のある谷に入らないと食べられない物と諦めていたのだ。謀らずもそれが今日、乗り替えの為に降り立った徳島駅のホームで?である。こんな幸運に恵まれるなんて、まるで私の日頃の行いが善いことが、ここで証明されたかのよう…なぁ〜んちゃって。



参考:

祖谷の粉挽き唄」のことのを書いた石臼の会ブログ内ページ




麺家れもん



「麺家れもん」は、徳島県美馬市脇町の契約農家からソバ粉の提供を受けて2011121日徳島駅2番ホームに開店したそうだ。

後に東京に戻ってから知ったのだが、社会福祉法人が知的障害者のための就労支援事業としてこの蕎麦屋を運営しているそうで、障害をもった方々が、吉野川市や美馬市の「名人」と呼ばれる職人からそば打ちを学び、お店から徒歩10分の距離にある同法人の施設で製麺をしている。



祖谷そば看板.jpg

看板メニューの「祖谷(風)そば」は、手延し、機械切り、茹で置きを再度温めて、熱々のお汁を掛けている。(風)と入れているのが、奥ゆかしいというか、正直というか、真面目で好感がもてる。十割ではなさそうだし、大正時代から30年程まえまでJR土讃線阿波池田駅構内で祖谷蕎麦をだしていた「清月別館」という蕎麦屋をイメージしての開業と、ことわり書きがあったから、もしかしたら、その辺りのことを考えての(風)なのかもしれない。


さて、いよいよ。今回の四国周遊中に食べる唯一の「蕎麦」である。しみじみと手繰った。熱々のお汁が、ふわぁ〜っと体を温めてくれて、思わず両手でどんぶりを抱える。美味しい。そして、四半世紀前に祖谷で食べたものの印象とかわらず「これは、蕎麦というより、かけうどんだぁ」と感じた。たぶんそれは、ソバ粉の入ったうどん状の麺の太さや柔らかさからの印象ではなく、イリコの効いた出汁によるところが大きいのだと考えたが、どうだろう。


徳島駅の祖谷風そば.jpg


トッピングには、油揚げ 青ネギ かまぼこ。テーブルにセットされた薬味には、一味 七味 柚子胡椒があった。店員さんは皆親切で、一生懸命。祖谷そばの説明も、キチンとしてくれる。



■品書き

祖谷そば    350円  かけうどん   200

きつねうどん  300円  わかめうどん  250

各うどん大   100円  和風ラーメン  250


やはりうどん王国のただ中で営業しているだけあって、品書きにもうどんが多いなぁ。




■住所徳島県徳島市寺島本町西1丁目 徳島駅2番ホーム■営業時間7:0019:00■定休日日・祝 カウンター8席



わがままな…雑感



この石臼の会ブログは蕎麦ブログなので、うどん巡りの詳細は載せないけれど、私にとって四国周遊(うどんメイン)麺爆食体験の感想は、全体として塩辛かったというのが正直なところだ。まぁ〜、関西の薄口醤油のほうが、関東の濃口醤油よりも塩分が高いのだし、うどんは塩を入れて製麺することもあって、全体を少々塩辛く感じるのは、当たり前と言えば当たり前?なのか。



それから、讃岐だけでなく日本のうどんを、今やオーストラリア産コムギASW(オーストラリア・スタンダード・ホワイト)など抜きには語れないという自給率の問題は、なんとかならないのかなぁ〜と思っている。そんな状況を打開しようと、農業試験場がうどん用に品種改良したコムギ(さぬきの夢2000)を、この十年消費者として応援しているけれど…現実は厳しくまだまだなかなかではある。



国内自給率の問題は、蕎麦も瓜二つ。

けれど勝手な物で、自給率がグンッと上がってもらいたいと思いつつ、あくまで蕎麦オタクとしての望みは、日本各地の在来種がそれぞれに独自の個を持ち続けて欲しく、例えば祖谷在来種を、あちこちで栽培してしまっては面白くないし、何か1種類の種だけが、どぉ〜んと作付面積を増やすのは、なんだかつまらないような気もしたり…。安定した改良品種で収量を増やし、かつ、個を大切にして欲しいと、わがままな事を思っている。



最後になったが、うどん巡りの旅に、ご協力くださった方々、情報提供してくださった方々に感謝したい。有難うございました。



posted by 笑門来福 at 11:17| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ⇒徳島・香川・愛媛・高知 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする