本八幡駅から歩けば15分くらいか。少しある。以前、歩いて店の前まで辿り着いたら、なんとお休みでガックリした経験もあり、今回は事前確認をした。空腹を抱え、昼休憩に迫る時間の都合もあり、更に今にも降ってきそうな真っ黒な雲が近づく空を見て、どうしようかなぁ〜〜と思いつつ、結局タクシーを利用。運転手さん、近くてごめんなさい。
■■蕎麦前
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大きな錦鯉の泳ぐ池を横目に暖簾を潜ると、入り口で迎えてくださった花番さんが「申し訳ないのですが、ランチのセットは、あともぅ1人前だけになってしまいました。」と、恐縮なさっている。その旨了解して、4人掛け掘りごたつに設えてある小あがりに通してもらう。庭の見える古い日本家屋の個室は、とても心地よく落ち着く。つい、ゆるゆるとして長居したくなる気持ちにもなる。それで、まぁお店としては致し方なく、この4月からは閉店時間を明記することにしたようだ。
さてさて
まず、うすはりのグラスで良く冷えた恵比寿ビール。グビっと一口「くぅ〜いぃ〜〜〜ぃっ。」と言語不明・気持明快な吐息を漏らす。
お通しの蕎麦チップと、「青ねぎサラダ」¥500.-。
目前に現れた青々と美しいねぎに胡麻油風味の大人のサラダ、これからの期待が膨らむ。
直ぐに、日本酒にかえて。2ケ月以上漬けて作るという「豆腐のみそ漬け」¥340.-を。濃厚な旨味が堪らなく美味しい大好きな1品。あぁ〜お酒がどんどん進んでしまう。
香ばしくパリっと焼かれて歯ごたえのある「油揚げ」¥440.-と、この季節のご馳走「穴子の白焼き」¥450.-/1本。
「出汁巻玉子」¥800.-(写真は、その半分量。人数分に小皿で出してくれた。)甘さ控えめで、たっぷりの熱々出汁がジュワァ〜と染み出る、ぷるるん柔らか優しく上品な仕上げ。混雑時お時間の掛かる場合も…と品書きにあったけれど、出汁巻も直ぐでてきたし、何を頼んでも早い。
「鱧(2貫)野菜(椎茸・南瓜・プチトマト)の天ぷら」¥900.-
残念ながら「稚鮎天ぷら」は売り切れ。で…やっぱり夏は、鱧。サクッと衣軽やかに、中身ふっくらと揚がっていた。プチトマトの天ぷらは初めて頂いた気が…焼けどしそうなほどに熱せられて甘さの増したトマトの中身が、口の中で弾けた。おぉ〜危な美味しい。ゴージャスな事に揚げ油は、太白の胡麻油100%使用とのこと。
■■蕎麦
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にしん冷かけそば ¥1350.-
箸で持ち上げればホロリと崩れる程に柔らかく煮含められた鰊は、冷たいお汁とも好相性で、添えられた茗荷や紫蘇とも爽やかに馴染んでいる。台の蕎麦は、のど越しの良い1.5o幅。
せいろ¥800.-
会津在来種や長野産のソバなどを自家製粉し、9:1くらい、夏場は8.5:1.5くらいの割合で打っているそうだ。概ね1.5o幅に切り揃った美しい蕎麦は、淑々とした外観。蕎麦の量は、最初の修行先でもあった「竹やぶ」なみに上品(つまり…少ない)。蕎麦徳利はなく、蕎麦猪口に直接注がれて供される辛汁は、出汁とかえしのバランスが良く好みのタイプ。「竹やぶ」よりも、ほんの少し甘目というか、優しく辛さ控え目。
蕎麦湯は、ナチュラル。
■■蕎麦後
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お店のご厚意で、よぉ〜く冷えた無花果を頂いた。店を出て交差点を渡って直ぐのご近所に直販所があって、そこの無花果だとのこと。フレッシュでいて柔らか、子供の頃を思い出す懐かしい甘さ。
あぁ〜美味しかった。ご馳走様でした。
■■あれやらこれやら
■■ 藪から妄想〜を…つい。
若きご店主の経歴もさることながら、なにやら意味も有りそうな、一度聴いたら忘れられないチャーミングな店名にも興味が湧いて、是非その由来を聞きたいと思っていた。けれど、今回の訪問でもそれが叶わず…、つい妄想を。
いつも参考にさせていただいている夢八さんのブログによれば、「藪から坊」の店主さんは18歳の頃、飲食店経営の父親から「蕎麦屋か寿司屋をやるのはどうか?」と促され、その伝手で柏「竹やぶ」の天才阿部孝雄さんとの衝撃的出会いを得て、弟子入り。その後にも人脈に恵まれ、蕎麦屋や割烹など有名店で合計15年の修行を行い、2009年めでたくご自身の「藪から坊」を開業したらしい。
伺った時には、カウンターの上に「二笑(=阿部さんの画号)」のサイン入り書画が飾ってあったので、ご主人とその話をしたら「まだ凄く若かったから、きちんと意味が分からなかった」と謙遜していた。
三省堂大辞林では、「藪から棒」を〔藪から唐突に棒を突き出す意から〕 だしぬけに物事をすること。前触れや前置きのないさま。としている。
私的に勝手に考えるならば、15年間の修行後の出店なので開店そのものに唐突感はないけれど、ご主人はお客にサプライズを提供する店にとの思いを持っていたのか、或いは語呂も良いし蕎麦屋修行の出発点は 柏「竹やぶ」ということで、「藪」から出てきた「坊」っちゃん?と考えてもみた。
更に、ここの地名「八幡」と店名の一部「藪」を聞いた瞬間思い出す言葉は、「八幡の藪知らず」。これとも、ひっかけての命名だったら面白いなぁ。(本八幡駅の、「藪から坊」とは反対側、北側に位置する市川市役所の向かいにある鬱蒼とした場所は、1700年代後半には既に「八幡の藪知らず」と言われた禁足地で、神隠し伝承もある場所だ。)
三省堂大辞林では、「八幡の藪知らず」を〔千葉県市川市八幡にある竹藪。ここに入った人は二度と出て来られないと言い伝えられたところから〕
@ 出口のわからないやぶ。
A 出口のわからないこと。迷うこと。やわたしらず。 としている。
慣用句になったくらい有名な場所であるし、ご主人のご実家が展開しているいくつかの店舗からも6〜7km圏内にあるから、地域の腕白は肝試しに垣根の外から覗きに行ったことくらいはあるかもしれない。今ではお化け屋敷に使われるような、不思議な響きを持ったこの言葉の出どころが、ある意味近所の名所で、店舗名を考えたときに、蕎麦界のワンダーランド的ニュワンスを盛り込められるこの言葉も念頭にあって、「藪から棒に、八幡で藪の蕎麦。これだっ!」と膝を打ったのではないかと勝手に妄想し、一人面白がった。
おまけ:「八幡の藪知らず」この地への立ち入り禁止の由来は、将門や、水戸黄門、日本武尊の御陣所説もあり、と大層な?大物も名を連ねて錦絵になったものもある。その中の一つに、「藪」は「八幡」のものではなく、「行徳(=たまたまご実家の店舗所在地)」の飛び地であるから、勝手に足を踏み入れてはいけない。というものもある。これも面白い!?どうです?面白くない、あっそうですか、すみません。
でもまぁ私の妄想は、店主さんにその実を聞くまで続きそう…かな。
■住所千葉県市川市稲荷木1-1-14■電話047-377-5587■営業時間:平成26年4月1日以降変更になり、昼11:30〜14:00(14:15LO・14:45閉店)/夜17:00〜20:15(20:30LO・21:00閉店) ※蕎麦売り切れ御免■定休日水・第2火の夜(水が祝日の場合は、翌木が休み)。更に、江戸川花火大会の日(2014年は8月2日)、また店主勉強会の日など不定休有り。だからつまり、駅から遠いし、心配な場合は事前御問い合わせが無難。