カウンター7席だけのお店であるから、直ぐ満席となる。特にゆっくりしたい夜などは、確実に席を予約確保して行きたいのも人情なのだけれど、こちらのお店は、店主お一人で切り盛りされていて、作業中はなかなか電話を受ける体制にない。だから、電話番号をここに載せることに、もしかして迷惑になるかなぁ〜と躊躇の気持ちも。1人〜2人で行ってみて、席があれば幸運と心得て、出掛けてみるのが良いかもしれない。
■■蕎麦前
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ランチ時は別として、平日18時からの営業時間、店主吉田さんは、日本酒を飲まない方の入店を断っている。「蕎麦前を楽しんで、蕎麦で〆る」これがこの店の大原則。外見からはそうと知れないかもしれないけれど(ん?なにか?!)、私は日本酒をほんの少し嗜むので、なんとかギリギリ入れてもらえた。むふっ、う・れ・し・い。
さて、いろいろ摘まんで飲みたい人にうってつけなのが、「おまかせ」だ。前菜・鶏料理・季節の1品または鶏料理・こめたまの出汁巻玉子・季節の野菜焼き・媛っこ地鶏と千住葱の塩焼き、それに〆の蕎麦(せいろ又は田舎)がついて、全部で7品目¥3500.-。内容から考えると他の品書きも、どれも良心的な値段なのだけれど、この「おまかせ」は、とりわけ鶏ワケ(おやじ化してますな)超お得だと感じる。※当然!酒代は別途
ということで、まず、サントリープレミアムモルツ小瓶で喉を潤して、
今宵の「おまかせ」を。
前菜
左:うるいの和え物 右:蛤と菜の花の辛子酢味噌和え
おぉ〜綺麗、最初の一皿が出た瞬間に、グッと心をつかまれた。何もかにもが「春だよぉ〜。」と言っているではないか。季節を愛でる和食って素敵だ。いいなぁ〜日本っ、ここに生まれて幸せ。
お酒のラインナップは、えぇ〜〜純米生原酒がほとんど。むふっ、きゃぁ〜好き。前菜の姿を見て直ぐ、奈良「風の森」こぼれ酒笊籠採り純米無濾過生原酒へ。甘くフレッシュな香りで濃醇。香りにほんのりとした酸味を感じたとおり、飲んでみれば柔らかな甘みにバランスよく酸味が加わり、濃醇なのに意外に後口爽やか。輪郭はっきり。むふっ、美味しいっ。
どっしりとした広口の酒器は、織部だろうか。えぇ〜と、この酒だけを冷でやり、以後は燗でお願いをする。あ、あと、言わずとも初めから和水を、すっと用意くださる。素晴らしいぃ。
ささ身のづけ 山芋和え
薄口醤油やを基調とした出汁で溶いた山芋は、ふんわりと摩り下ろしたものだけではなく、中に5o角位のサイコロ状のものも仕込んであり、山芋とろとろシャキシャキ、ささ身づけの旨ねっちり、刻み海苔のパリッ磯香…と、食感や味わいが幾重にも重なり、薬味の山葵やねぎと一体となって、これは、もぅ美味しいに決まっているでしょう。
名物 こめたまの出汁巻玉子
青森県トキワ養鶏の米を食べて育った鶏のたまご「こめたま」でつくった出汁巻。カウンター越しに玉子を割るところから見ていると、出てきた黄身は “黄”じゃなくって…なんだろ“クリームイエロー”…っていうか。これを甘くせず塩分も強くない上品な玉子焼きとして、熱々ふっくらと焼き上げてあるので、玉子そのままの風味がきちんと伝わってくる。見た目の色はさっぱりと白いけれど、味は風味豊かで旨みが濃い。へぇ〜凄い。
後で知ったことだけれど、とある生協でも共同購入で入手できるらしい。
鳥取「諏訪泉」富田 純米生原酒50 を燗で。
私の感覚では、諏訪泉の酒はここ20年?位で2度変身したように感じている。伝統的で知性豊かな綺麗な酒を造っていた頃から、1度目の変身でガラッと変わって花酵母とか女性向けの商品開発とかぁ、いろいろお試しの頃があった。何処へ行くの?と、ちょっと不安になった頃、全量純米酒に切り替え2度目の変身をした。正面にがっしりと仁王立ちに立つような今が一番好きだ。てぇ〜ことで、富田。冨田銘柄は、生産農家(冨田ひさつぐさん)と協力して生まれた限定流通銘柄だそうだ。磨き具合が50%、7号酵母を使っている。やさしい伸びやかな“米”が感じられるし、バランスが良くって食中酒として良い感じだなぁ。こめたまの玉子焼きに合うぅ〜。
若竹煮
カメラを覗くと湯気で、ふわぁ〜んと曇った。朱塗りのお椀に入った熱々のお出汁の美味しさ。ふんわり優しい昆布の香りと筍の食感。ほぉ〜〜とする。
新潟「鶴齢」特別純米無濾過生 山田錦55
皆が、よぉ〜〜く知っている銘柄。書く必要もないような。
それで、あのぉ、生原酒だからね。17〜8度か…ですからね。若竹煮でホッ〜としている私を見て、ご主人は流石に、もぅ飲まないと思ったでしょう、きっと。6席埋まった客を相手に、丁寧にテキパキと仕事を進める中で、もぅ飲まない人とまだ飲む人への料理を出すスピードや順番の加減を絶えず気配りしているから、私への料理のスピードを上げようとした矢先?次の酒をたのんじゃったんですよぉ。つい。
進行の計算が狂ってしまったでしょうかね、すみません。
焼ブロッコリー
焼いたブロッコリーの下に、クリーミーなこれまたブロッコリーソースが敷いてあり、それに絡めるようにして、香ばしいブロッコリーを食べる。
媛っこ地鶏と千住葱の塩焼き
地鶏は、余分な脂を感じずに、“皮がパリッと、中がじゅわぁ〜っ”と。この表現は、良く聞くけれど、今まで食べた鶏は実は違った物ではないかと思うくらい、美味しかった!炭火のなせる技なのか?文字通りご主人の技なのか?まぁ〜どっちでもいいわ、兎に角、とても美味しかった。また、食べたいっ。
以前TV番組「試してガッテン」で、“皮がパリッと、肉がジューシー”にきちんと火が入ってできあがる「チキンソテー」の作り方を見た。その教え通りに実践し、とても美味しい“皮がパリッと肉がジューシー”を作っていたのだ。というか、そのつもりになっていた…。でも、今この鶏を食べた後になると、もぅ別の料理だったのだと思う。
大阪「秋鹿」奥鹿 生酛 山田錦60
純米無濾過生原酒
あぁ〜美味しいっ!
燗上がりという言葉があるけれど、このふっくらとした旨み、複雑な熟成感は、燗をしてこそ本領発揮しているのだなぁ〜。美味しい地鶏と、いいわぁ。
3500円のコースは、あと〆の蕎麦を残すのみとなった。酒も奥鹿で止めて、〆蕎麦に進むのが順当というもの。順序といい、量といい、理想的だと思う。
が、が、が、先ほどの媛っこ地鶏があまりに美味しかったので、もぅ〜少しその鶏を食べたくなる。お腹も丁度良い具合なのに…口が卑しいのだ。
生来素直な私は欲望に負け、コースとは別に品書きから、「鶏の炙り昆布〆」をお願いすることにした。
ところが、あぁ〜なんと、ご主人は「先ほどのお客様で、最後になってしまったんです。」と。連れまで「そうですか、まぁ〜ちょうど良いところ。〆にするのがいいという事ですね」と言い出す始末。くぬぅ〜先ほどまで隣に座っていた二人組か。あの二人大して飲まずに、パクパクパクパク私の頼もうとする分まで食べおって、満足そうに出て行ったばかりだ。そう言えばどうも人相が悪かった。などと急に恨めしくなって、心の中でとんでもなく悪態をついた。
仕方ない平静を装って、「それでは、手羽先のコンフィと凱旋陣を、お願いします」。今思えば、ブロッコリーの後にこのセットにしたかったな。まっいいや。
香川「凱旋陣」純米無濾過生とコンフィ
■■蕎麦
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さて、今度こそ〆に。
このコースの〆蕎麦は、せいろ 又は 田舎 である。どちらも食べたい。連れに田舎を食べさせて、私がせいろとすべきだな、うん。でもその連れが、酔っぱらったのか「自分が せいろ だ」と言い張るではないか。さっきまでご主人相手に、物分りの良い風を装っておいて、自分勝手な奴だ。自己主張ばかりで(?!あれ、私のことか?)、耳を疑う。迷っていると、先ほど来の我々の欲深さを見ていたご主人が、気迫に気圧されたのか?同情したのか?ただ単に呆れたのか?「二色にしましょうか?」と言って下さる。おぉ〜ラッキー!
テキパキと、蕎麦猪口、汁徳利と薬味を目前に並べてくださる。あらまぁ〜蕎麦猪口の可愛らしい事。
私と連れの蕎麦猪口、1つは自動車、もう1つには自転車が描いてある。欲しいなぁ、欲し〜〜い!
〆蕎麦 二色あいもり
蕎麦の表面がややザラザラとして、内包する粒感と相まって、いかにも手間を掛けた手挽きの手打ちという風情があるのに、写真が酷い! どの写真もひどかったけれど、とりわけ蕎麦は!こんな写真じゃぁ〜蕎麦を打った「大愚」さんに申し訳ない。我ながら酔っ払いの体たらくを恥じる。といいつつ、他に写真がないので、載せちゃうんだけど。
この日は、せいろが茨城の常陸秋そば、田舎が信濃1号。手挽きして時間の経っていない、どちらもしっかりとしたソバの香味がある蕎麦だ。鶏の旨みに続く〆蕎麦として、飛ばされないしっかり感も好みだし、キリリと品格のある蕎麦の姿にも惹かれる。少人数を相手にして、平板均一化したものを毎日大量に出すつもりなど端からないから、季節で産地が変わる中で、この「きちんと味のある蕎麦」をキーワードにしているのかもしれない。辛汁は甘みは抑えてあるしっかり濃度の辛口。蕎麦湯は、しっかり作りこんだソバの旨みたっぷりトロトロ系。
■■雑感
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対面でしっとりと、高水準の美味しい鶏料理と手間を掛けた手挽きの蕎麦を出す。この技術力を加えてこの値段って、経営に対して適正なのかなぁ?と感じる新橋値段だ。好きだぁ〜。
偶々幸運にも、カウンターの両端ながら同時間を過ごさせて頂いた日本酒の専門家(自称専門家はよくいるけれど、ホントに専門家でしたぁ)とお話しができた。その方々は「大愚」さんの燗の付け方を褒めて、解説くださった。客同士が日本酒の話で盛り上がる中、頑固で寡黙なご主人もキビキビと動く手は休めず、合間にポツリと興味深い話題を提供してくださる。プロは、日本酒や蕎麦に対する気持ちが、並大抵ではないのだなぁ〜と、こちらまで熱くなるものを感じた。美味しいものを食べて、勉強になって二重にラッキー。
蕎麦は人を繋ぐなぁ〜。感謝。
誰にも知らせたくないっ!ましてや下戸になどに、教えてなるもんかーっ…の詳細情報■住所港区西新橋1-19-10新橋HSビル1F■電話03-3597-0359(←電話してもダメな感じ)■営業時間[月・水・金]11:00〜14:00売り切れ終い [月〜金]酒を飲まない方入店お断り18:00〜22:30■定休日土・日・祝■アクセス都営三田線内幸町A3出口から徒歩3分、東京メトロ銀座線虎ノ門駅1番出口から徒歩5分、JR 京浜東北線,東海道本線,山手線,横須賀線 新橋駅烏森口から徒歩8分
posted by 笑門来福 at 20:01| 東京 ☀|
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