前回訪問から度々覗いていた「夢想庵」ブログで、粗挽き無篩いの手挽き「せいろ」\1200.-を出していると知り、再訪の機会をねらっていた。
手挽きの手間や時間を考えると、厨房をご主人一人できりまわしている「夢想庵」では、一日の限定数がそう多くはなさそうだし、伺って売り切れでは残念だから、早めの時間に伺うのが無難だろうと思っていた。そんな折、梅雨入り宣言も出て、朝からそれはそれは派手な音を立てて雨が降っていた。間違いなく?絶好の「夢想庵」訪問日!と、訪問決行を決意。
いそいそと家人を誘うと「はぁ?」「この雨の日に?」「朝から?」と気のない返事が帰ってきた。「えぇ〜い、機は熟したんだ。このタイミングが分からんか!この虚け者どもが!」と心の中で叫びつつ、笑顔を作って優しく「美味しいよぉ、皆で行こうよぉ」と言ってみた。
本当は一人で行っても良いのだが、蕎麦の種類をあれこれと複数枚食べるには、人数が多い方が好都合。揉み手で更に続けていると、難攻不落と思っていた息子が食べてみたいと言う。しめたっ!とほくそ笑んだところを夫に見て取られ、条件闘争へと縺れ込んでしまった。呑兵衛の夫は、一本付ければついて行ってやっても良いと言う。一本などと嘘をつくな!と思いながらも、急いで首を縦に。やれやれ、健全にさらりと昼蕎麦を手繰って帰ることが、今日もできなくなった。
■蕎麦前まずお手拭きお茶と一緒に、かえしを吹き付けた揚げ蕎麦がでる。今度は3人前だから山盛りだ。それを見て「あぁ、ビール」と横の呑兵衛から吐息が漏れる。やっぱりね。時間はまだ11時半、開店間際だというのに。今日は私の責任ではない。
↑奥が「揚げ蕎麦」手前が「飯蛸旨煮」 桜海老揚げ
「くぅは〜っ」っと、キリンラガー¥500.-仕方なく飲む。ビールの突出しは、ピクルス用の品種だと思われる小さな小さな胡瓜の味噌漬け。カリと歯ごたえが残り旨い。うふふ。さくら海老揚げ¥500.-サクサクの衣も美しい。家族皆、にんまりと恵比須顔。
飯だこの旨煮¥450.-、蛸は柔らかく鰹節がたっぷり、日本酒とよく合いそうだということで、熱燗にかえ「くぅ〜っ」と、仕方なく飲む。これで冷たい雨に濡れてやってきた体も温まるというもの、旨い。そして今回も3合とも徳利になみなみ注がれていた。有難うっ!(花番の)お母様。日本酒の突出しは、江戸味噌をベースに、胡麻やハチミツ、ソバ丸抜きの入った蕎麦味噌と、胡瓜。
出汁巻き玉子¥400.-は、江戸前老舗の卵焼き程どっしりと強い甘みはないが、ほんのり甘い味付けで、外側焦がしぎみ御出汁たっぷりの柔らか仕上げ、ホ〜ッとする味だ。
我々の大好物の鴨は、2種類お願いした。まず、鴨焼き1人前\800.-(2人前は¥1500.-)、醤油の風味が効いて香ばしさも加わり、熱燗ともぴったり合って、(私のせいではないが)酒が止まらなくなる。これらは嬉しいことに何も言わなくとも、3人の客には3人で取り分けることを前提に盛り付けしてあり、つくねが3つに、焼きねぎも3本付けてくださっているのだ。有難うっ!「夢想庵」ご主人。
2種類目の鴨は、前回も舌鼓を打った合鴨スモーク\500.-、山葵と醤油で頂く。添えられた白髪ねぎと紫蘇の風味がスモークの旨味を引き立てている。この日はこのスモークの鴨で、ちょっとだけビールに戻りたくなったが、なんとか踏みとどまる。
鴨焼き 鴨のスモーク
■蕎麦いよいよ、お目当ての粗挽き無篩いの手挽き「せいろ」だ。週替わりで粗挽き無篩いの手挽きの「せいろ」と「田舎」を出しているという。今週は「せいろ」ということで、私は並盛り(150g)\1200.-、息子は大盛り(220g)¥1500.-で〆。
無篩いにするということは、石臼で挽く前の準備も大変だ。指先で徹底した選別を行い、抜き実を甘皮ごと一緒に挽き込む。その為に「夢想庵」ご主人は慢性の寝不足らしい。この日は、北海道は奈川在来種を、9割で打ったとのこと。無篩いを初めた頃にだしていたソバと、つい最近換えてみたのだそうで、以前のものが美しい緑色を出すために、未成熟ぎみであったのに比べ、こちらは味や香りがしっかりしていると説明してくださった。玄庵系の他の店で供されている奈川のソバも評判が良く、期待が膨らむ。
現れた蕎麦は、見ただけで“これはきっと美味しい”と分かる蕎麦だった。今日の雨なんて全然問題じゃない。来てよかった。汁を付けずに、まず一手繰り。ソバの香りが旨味が嬉しく、気がつけばあっという間にそのまま笊1/3程手繰っていた。なんだか蕎麦打ち仲間の蕎麦を食べている気分。商売でだしているものでなく、マニアの仲間うちの蕎麦。時間を掛けて手間を掛けて、丹精込めて仲間に振舞う蕎麦のよう。蕎麦汁も突出したところがなく良い塩梅に調和がとれて、誠実そうな店主の人柄のように角がない。いい感じ。
息子の様子をみれば、黙ってどんどん手繰っている。本当は、普通の「ざるそば」を食べさせて、私が少しご相伴に預かり、粗挽き無篩いの手挽き「せいろ」の麺と、どの位どう違うのか比べてみたかったのだが、今日この雨の中を出掛ける際の援軍になってくれた功労に報いなくてはならない。それに、夢中になって急いで食べるのは、彼が美味しいものを食べるときの癖だから、粗挽き無篩いの手挽きを随分と気に入ってくれたのだろうと嬉しくなった。たぶん、蕎麦の分かる大人に育ってくれる…と期待したい。
さて、まだ飲みたい夫は、かき揚げ天そば¥1000.-で、手繰りつつ、飲みつつである。横からちょっと箸を伸ばすと、三つ葉の香りも爽やかで、かき揚げの油でコクのでた温かな甘汁も、なかなか乙であった。
■薬味と蕎麦湯薬味は、大根おろし(瑞々しい普通の大根で、辛み大根にあらず)とねぎ。山葵はついていない。蕎麦湯は、熱々とろ〜〜りと濃いのをいただいた。やはり、そのままの釜の湯でなく別製だ。私勝手な蕎麦湯ランキングをつけるとすれば、1位としたい。
■品書きざるそば¥800.-、かけそば\800.-、田舎そば\1200.-、玉子とじそば¥1000.-、桜えび揚げそば\1200.-、鴨南ばんそば¥1500.-、鴨せいろ¥1500.-(鴨は蔵王地鴨を使用とあり)、出汁巻き玉子\400.-、いいだこの旨煮¥450.-、桜えび揚げ¥500.-、鴨焼き一人前\800.-、二人前¥1500.-、いかの塩辛¥300.-、山芋の千切り¥300.-
■住所江東区北砂4‐21‐6■電話03‐3646-7725■営業時間11:30〜14:00、17:00〜20:00■定休日日・月(祝祭日は営業)■アクセス東京メトロ東西線南砂町徒歩15分、都営新宿線大島駅徒歩20分、都営バス北砂4丁目バス停下車徒歩2分
北砂「夢想庵」2008年2月24日の記事を読む
2008年06月07日
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コメント有難うございます。
美味しいお蕎麦を食べ歩くのは、私の楽しみの一つです。
美味しい物は、人を幸せな気持ちにしてくれますよね。
家族や友人にもこの楽しみをお裾わけ?しているうちに、(強制してたりして?)(^^ゞ
お蕎麦が繋ぐ細く長い御縁で、和が拡がり
楽しみが倍増するのが、またまた嬉しくて。
そんな好循環の舞台を提供してくださる「夢想庵」さんですから、
こちらこそ、「有難うございます」と言いたいです。
一人厨房で大変だと思いますが、頑張ってください。
友人の家から近いような感じがして
行ってみたくなりました。
夜行くと、手挽きにはありつけないでしょうかね。
コメント有難うございます。
毎日粗挽き無篩いの手挽きを
どの位用意しているか…わかりませんが、
夜遅く行くならば、行く前に
ちょっと電話してみるのもいいかもしれません。
でも、もしかしたら全然心配なく、
追い打ち(あとから別途打つこと)して
出しているのかもしれないです。
<m(__)m>今度機会があったら聞いてみます。
ばっちぐ〜さまやお友達の食後感コメントお待ちしています。
★興味津々さま
砂町銀座から、脇道にちょっと入って2〜3分だったと思います。
バス停からは、本当にすぐなんですけど、
最寄りの電車の駅からは、ちょっと歩くようですよ。
方向音痴の私の説明は危なっかしいのですが…
方向感覚の優れたバイク派の興味津々さんなら
ちゃんと到着できると思いますので、
その内に是非一度行ってみてください。
自宅から徒歩15・6分ってところですか・・・砂町銀座を散策して ひさびさにお蕎麦をたぐりました、なかなかいいお蕎麦です。ととのってますね、きれいなお蕎麦です。あの木鉢でのそば打ち いいですね、いい仕事してますね。お蕎麦屋であの木鉢を使っているところはあまりないと思います。
歩いて15・6分とは…結構近い?ですね。
興味津々さんは、歩くのが早そうだから
すぐそばって感じでしょうか?
そう、あの木鉢いいですよね。
あれで水回しするのは、気持よさそうです。
店主さんが凄く良い方で、私はあのお蕎麦に
お人柄が良くでているなぁ〜と思っていますが、
いかがでしょう。