手には蕎麦の実と蕎麦徳利も
江戸ソバリエ倶楽部の蕎麦屋訪問企画に乗って深大寺へ。ここは、「石臼の会」松岡ももこさんのホームグラウンドだ。深大寺も蕎麦屋「門前」も彼女の活動の本拠地であるから、当日参加のご本人にご案内いただくには絶好のチャンスである。喜び勇んで参加してみることに。
伺ったのは3月8日。蕎麦好き20余名が集結し、団体さんでのお参り・散策・蕎麦の宴を囲んだ。一応の集合場所であった深大寺山門では、満開となった紅白の梅が、匂い立つ春の装いで出迎えてくれた。
山里の趣きのある深大寺は、それでも都心から小一時間の距離。日ごろ無信心な私でも、(仏法を求めて天竺を旅した中国僧玄奘三蔵を守護した神「深沙大将」にちなむ)天台宗別格本山を訪れ清々しい気持ちになる。季節ごとに魅力のある素敵な場所である。
一般では入る機会のない釈迦堂で、地元有志と「深大寺蕎麦を作る会」も組織していらっしゃる執事長・張堂完俊さんのお話を伺った。「深大寺の僧は、御経の練習よりも、まず最初に美味しい蕎麦が打てないとダメなんですよ」などとソバリエ相手の楽しい冗談を混ぜ、内容豊富ながら肩ひじの張らないお話しぶりに、予定時間超過を忘れて引き込まれる。
目前に安置された銅造釈迦如来倚像(間近にみると若々しい端正なお顔立ち。椅子に腰掛けた珍しいポーズ)、深大寺の成り立ち、最近の見どころ等をご説明くださる。続いて回った本堂やそば観音(近所の蕎麦屋さん達の総意により昭和38年建立)でも、僧侶の皆さんの話術と「石臼の会」松岡ももこさんの掛け合いには、感心させられことしきり。各宗派の修行僧を受け入れてきた古刹ならではの、懐の深い歓待ぶりに気持ちが和らぐ。
さてお腹もすいて、
いよいよ蕎麦屋「門前」そばごちそう。
この企画の為に、まず「石臼の会」highlandさんから届いたのは、下のメールであった。
>武蔵野の名残をとどめる深大寺の周辺には多くの蕎麦屋があります。
>有名なのに余り美味しくないと思ったことはありませんか?
>実は数をこなすために打つ蕎麦と蕎麦を愛する人に出すものは違うのです。
>深大寺の山門前でいつも参詣客でにぎわっているのが「そばごちそう 門前」です。
>松本清張が「波の塔」を執筆したことでも有名なお店です。
>この小説が縁で出雲より水車挽きした希少な蕎麦粉を取り寄せて打っています。
>冬枯れの深大寺で蕎麦を愛する人として野趣溢れる蕎麦を食べてみませんか?
魅了的な文句が幾つもならぶ中、
●…蕎麦を愛する人に出すものは違う…
●出雲より水車挽きした希少なソバ粉を取り寄せ
この2点を体験せずには、いられない?!
上:蕎麦味噌 左下:蕎麦豆腐 右下:蕎麦掻き
ちらりほらりと塩こぶが混ぜられている揚げ蕎麦は、塩加減や昆布の旨味がビールにピッタリ。かわり汁とは、蕎麦湯仕立てのスープの様なもの。雪ノ下・ふきのとう・うど”などが入りった山菜天麩羅にも春を感じた。
かわり汁 塩昆布の入った揚げ蕎麦 蕎麦饅頭
〆の蕎麦は、1枚目が貴重な貴重な深大寺産ソバ粉を使った細打ちの蕎麦。旨味も香りも素晴らしく、喉ごしも申し分ない。やはり特別な蕎麦というだけのことはある。
深大寺産 出雲亀嵩産と北海道沼田産ブレンド
2枚目は、松本清張「砂の器」のご縁で繋がる出雲亀嵩の水車挽きソバ粉と北海道産沼田産(普通門前では、これを自家製粉している)を使った蕎麦。一枚目と比べると少し太めで色が濃い。風味があり野趣豊か。
コースの途中で、4代目店主の浅田さんがご挨拶に見えてくださった。浅田さんは、あの片倉康雄さんからも蕎麦を学んだ云わば「一茶庵系」のそば職人でもある。深大寺蕎麦と幟が立ち並ぶなかで、立派な観光地となった多くの蕎麦屋の蕎麦は、そば粉の割合の低い「うどん」に近いものがだされていることもあるそうで、手打ちも少ないとのことだった。
そんな深大寺では数少ない本格的な蕎麦を出す「門前」で、今回いただく“そばごちそう” の(要予約¥3500.-飲み物別)コースは、昔からこの地域で、“ごちそう”と捉えられていた蕎麦を、現在の我々も特別な晴れの日のものとして楽しめるものにしている。「門前」の方々の優しい心遣いとともに、私たち蕎麦好きの気持ちを十分に満足させてくれるものだった。
■住所調布市深大寺元町5-13-5深大寺山門前■電話0424-87-1815■営業時間10:00〜17:00(予約の場合は17時以降も可)■定休日月■アクセス京王線調布駅・つつじヶ丘駅北口/JR三鷹・吉祥寺より バス「深大寺」下車■深大寺と周辺地区のみどころは、調布市観光協会042-481-7184へ
松岡ももこ関連記事:
マミークラン12月号 2007年11月29日の記事を読む
私と会話いたしませんでしたか?!
あの頃何度かこちらを拝見いたしました。
その後、鷹匠さん貸切をなさったとか。
あとどちらかでも2度ほど拝見致しております。
「他の方々とご一緒だったのでお声はかけませんでしたが」
コメント有難うございます。
お礼の書き込みが大変遅くなりました。<m(__)m>
現在私たち江戸ソバリエ「石臼の会」は70名ほどの会員がおり
このブログは、その中の複数のソバリエが掲載記事を書いています。
そば箸さまと、鷹匠でご一緒させていただきましたソバリエは、
どうもシャイな性質なのか、それとも
このそば箸さまのコメントを見逃しているのか
残念なことに、お返事を書けずにいるようです。
勝手ながらなり代わりましてお礼申し上げます。
今後とも、蕎麦のように細く長いお付き合いを
どうぞよろしくお願いいたします。