2008年01月08日

「蕎麦屋の系図」

蕎麦屋の系図.jpg


岩崎信也
光文社新書 


第一章:そばの文化
第二章:「砂場」の系図
第三章:「更科」の系図
第四章:「藪」の系図
第五章:「東家」の系図
第六章:「一茶庵」の系図




何を隠そう著者岩崎信也さんが好きだ。2003年8月15日初版発行の「蕎麦屋の系図」は、一冊目は書き込みラインマーカーだらけになってしまったので、もぅ一冊を保存版として購入しなおしたくらいだ。もぅ何年も前になるがたった一度、浅草橋「更里」でご一緒できる機会に恵まれた折、もし許されるならばサインをいただこうと綺麗な方の本を差し出したつもりが、書き込みラインマーカー本の方だった。そのことに気がついたのは、帰りの電車に乗ってから。あぁ〜ぁ。

 
少々の酔いもあったのか、舞い上がって何を話したか詳細を覚えていない。あぁ〜ぁ。が、強烈に記憶に残ったのは、私の質問に対して「そこのところは、明確な記録が見つかっていないのですよ」「だから、仰るように私は明確に書けなかったし、書かなかった」という趣旨のことを仰った。 

確たる証拠がない場合、岩崎信也説をふわりふわりと作り上げたりしない。益々ファンになった。ジャーナリストとして、当然と言えば当然なのだが、とかく趣味趣向を扱う食べ物関連の本や雑誌に携わると、日々主観や大まかな感覚で断定的に書くことも珍しくなく、感覚が麻痺してくる。物語を紡ぐ書き方との線引きが、曖昧になってしまう。その辺りを意識しているのだろう、2007年6月20日初版発行「江戸っ子はなぜ蕎麦がなのか?」光文社新書の裏表紙著者プロフィールが、変わった。フードジャーナリスト、ノンフィクションライターという文字が入ったのだ。
 

さて、前置きがとても長くなった。「蕎麦屋の系図」は5つの暖簾のルーツ、発展の様子を詳しく知る為にとてもいい。連綿と受け継がれる老舗を訪問する際は、この基礎知識を知っているか否かで、その魅力を骨の髄まで存分に堪能できるかどうか分かれるような気がする。知らずに行っても、勿論懐深く迎えてくれるのが老舗の老舗たる所以ではあるのだが、せっかく行くのならやはり蕎麦の味をつくりあげてきたその歴史まで味わいたい。 
 

ニューウェーブと呼ばれる(この言葉自体が既にニューではない?)新鋭の蕎麦屋を訪ねる折も、修業先がどこであったのか、それとも誰にも師事しなかったのか、どんな蕎麦やつゆを目指しているのか、店を系図で追っていくやり方は、情報整理にも結構役にたつように思っている。蕎麦屋の食べ歩きを、一層楽しくしてくれる本だ。
posted by 笑門来福 at 13:54| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ■「脳学」レポート&著作物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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