お昼の時間を少し過ぎた頃暖簾をくぐると、暖められた店内には先客もおらず、静まり返ってもぬけの殻。少し気後れしつつも「こんにちは〜」と小さく声を掛けてみる。厨房からでてきた店主は、私を認めるとソバリエ仲間が昨日お店を訪問していたことを教えてくれた。
席に座るなり「温かいお蕎麦をいただいたことがないので、今日は十割そばをかけでお願いします。」と告げるが、店主は直ぐに厨房に入る気配はまったくなく、例によって蕎麦談義が展開されることに。
■製粉昨年12月になって、やっと新蕎麦が入ったと聞いていたので、さてどんなものかと訪問の機会をうかがっていた。全て戸隠産在来種のソバを、上石45kgの石臼で手挽きの自家製粉。本日頂いた十割そば・かけ(\800.-)用には、60メッシュで振るった粉をつかっている。
■十割かけそばと野菜天麩羅「それでは、用意にかかります。」と宣言が聞けたのは、蕎麦談義の開始からゆうに45分を経過した後。蕎麦四方山話で、今日は静岡御前崎の芥子菜があると知り、天麩羅にしてもらうことにした。
すると素材の面白さを味わう為に、天麩羅にする前に軽く宮古島の雪塩で揉んだものの、味見を勧められる。ピリリとした香味が心地よく、大好きな味だ。天麩羅への期待も高まる。こうなるとなかなかジッとしていられない。私の様子を察した店主が「天麩羅を揚げるところを見ますか?」と声を掛けてくれた。ソバ打ちの様子も度々見せていただいているので、躊躇なく厨房へ入って行ってしまう。
「野島」の天麩羅は、全卵と水で溶いたソバ粉で揚げる。グルテンのある小麦粉と違って粘りもでず、しかも衣が油を吸わないので、カラッと仕上がるという。私は今まで馬鹿の一つ覚えのように、天麩羅とくれば氷水で小麦粉を溶いて…とやっていたので、衣をくぐらせ油に食材を投入する様子に目が釘付けとなり、質問を連発。その度に店主は丁寧に解説をしてくださった。お調子者の私が直ぐにその気になり、自宅でソバ粉の天麩羅衣に挑戦してみたくなったのは、お察しの通りである。
むかご と 蓬 芥子菜 と 人参
揚げていただいた野菜天麩羅(\600.-)の本日の具は、御前崎産芥子菜 むかご 御前崎産よもぎ 牛蒡 人参 薩摩芋 いんげん。天つゆではなく、宮古島の雪塩でいただく。大根おろしはつかない。して、期待の芥子菜は、天麩羅よりも塩揉みの方が独特の苦みや辛味がすっきりと味わえ、私は好きだった。葉物では、よもぎが美味しかった。そして見たこともない程大粒のむかごも、野島の天麩羅衣と非常に相性が良いと知った。
入店後1時間半で、やっと「野島」で初めての温かいそば、十割そば(かけ)\800.-まで辿り着いた。とうに店の昼休憩の時間に突入しているのは言うまでもない。色も濃く砂糖の甘さと醤油の塩辛さを両極端に感じる独特な甘汁は、鰹節と利尻昆布の出汁。十割の麺も強い甘汁の中でしっかり主張しており、今までどこの店でも食べたことのないかけだっだ。
昨年末の年越し蕎麦の忙しさから、今年の始業は遅めの9日からであった。還暦を迎えた店主の体では、「もぅ〜それが精一杯です。」と苦笑いをしておられる。それなのに?普段火曜日が定休であるが、御前崎への食材探しの旅などの為に、この1月の臨時休業日を、14日(月)・20日(日)・25日(金)とるという。店を開けるより食材探し…、体を使う方向に「野島」らしさを感じる。
四方山話の中ででた御前崎産の特別な豚肉も揚げてくださったが、芥子菜の塩揉みとともに、「私が勝手に出したのですから」と言って料金をとらない。という訳で、本日の会計は かけ¥800.-+野菜天麩羅\600.-=\1400.-(2時間のレクチャー付き)である。こんなに良くしていただきながら、時間に余裕のあるときでないと行けないなぁ〜などと不埒なことを言うのは罰が当りそう。それにしても、いやぁ〜凄かった。毎回毎回「野島」では驚かずに帰ることがない。やはり他に類を見ない独特なお店だ。
■品書き十割そば(もり・かけ)¥800.-/特製十割そば(もり・かけ)¥1100.-/特製十割昔そば(もり・かけ)¥1300.-/特上十割水響そば¥1600.-/特上十割水響二たてそば2500.-/特上十割水響三たてそば 3000円(要予約)/おろしそば・薬味(きざみのり・生卵)各100.-/挽きぐるみそばがき¥700.-/特製そばがき¥900.-/特上そばがき1200.-/挽きぐるみそばすいとん¥1000.-/特製そばすいとん¥1200.-/特上そばすいとん¥1000.-卵焼¥700.-/野菜揚・タコクン・スモークチキン 各¥600.-/身欠にしん・焼き味噌 各¥500.-/きのこおろし¥450.-/こしあぶら漬け物¥400.-/そば味噌・ふき味噌・ふきのとう味噌漬・山菜刻み・山菜おろし・しらすおろし・野菜揚・きゃらぶき佃煮・うどんきんぴら 各¥300.- 他ビール¥600.-/日本酒 朝日山・菊水純米・さるとび¥600.-/初孫¥900.-/韃靼そば茶¥300.-
また、蕎麦打ち体験は、一人5000円。富士山の伏流水“VanaH”500ml¥340.-/2000ml¥570.-の代理店販売をしている。
■住所板橋区稲荷台2-2■電話03-3961-5197■営業時間11:30〜14:30、17:30〜21:00■定休日火曜■アクセスJR赤羽線・埼京線十条駅下車 徒歩10分/都営三田線板橋本町下車 徒歩11分
稲荷台「純粋蕎 野島」2007年9月17日の記事を読む
今まで二度店の前まで行って、二度とも休みでした。
笑門来福さんの記事を読んだら
臨時休業が度々あるみたいですけど
僕の行った日もそうだったのかなぁと。
三度目の正直で、その内また行ってみます。
そうなんです。また行ってしまいました。
「野島」の近くに度々行くので、つい。
店主さんの研究発表が続き、
それで野島ワールドに引きずり込まれ
それを聞いているうちに、この続きはまた次回ということになり…。
★ばっちぐ〜さま
めざして行ってお休みだと、ガクっときますね。
それが2度とは、本当にお気の毒です。
その分?3度目の正直で、素敵な体験ができますように。
行ってきた感想も、コメント欄などに書き込んでくだされば幸いです。
ところで、私は路地に入る手前から覗いて
「野島」に暖簾が掛かっていない場合
既にお腹が蕎麦モードになっている時は、
最寄の(上十条4丁目)バス停前の「彩め」に入ります。
「野島」のような独特なお店ではありませんが
基本が二八の細打ちで、若女将がちゃきちゃきしていて
結構おすすめです。
先日も、牡蠣そばを食べてきました。