2007年12月05日

猿楽町「松翁」

松翁入り口.jpg蕎麦好きならば「松翁」については、行った事がなくとも、予備知識のない人の方が少ないのではないだろうか。店主の小野寺松夫さんは、数あるグルメ雑誌の蕎麦特集で常連であるし、東京12チャンネルTVチャンピオン」の蕎麦職人大会?で、2回の優勝を勝ち取ったりもした。

化学機器メーカー勤務の経歴から生まれた徹底的な実験とデータの積み重ねで編み出した出汁のひき方、一切の化学調味料を使わない汁(辛汁も、2種類用意されている)や、天ぷらの海老は必ず生きたものをしめて揚げる事、その天ぷらは一点ずつ揚がった瞬間にすぐに箸でつまんで客席まで運んでいることなど有名だ。

しかしである。「松翁」は、失礼ながら店主の厳しい顔が怖い。緊張を強いる店ではないが、私の場合憩いを求めるときには、ちょと躊躇する。それでも、この店の蕎麦はいい。近くの歯医者に通っている私は、ある水準以上の蕎麦が食べたいと思い、治療の結果も良く、更にブラッシングを褒められたときなどは、「松翁」に足を運ぶ勇気がでる。 

そんな折、厨房で粉を振るい、もくもくと計量作業を行っていた若い店員に、初めて話を聞いてみれば、気さくで親切。とても感じが良かった。彼曰く、店主は怖い顔だが心持は優しい人で、蕎麦談義が大好きだそうだ。大丈夫だからと質問を店主にしてゆくよう勧めてくれた。でも、小心者の私は店主のまっすぐ強い目を見ただけで、臆して小さくなってしまう。丁寧にご辞退申し上げ失礼した。人間見かけによらないとは良く言うが、勝手な思い込みはむしろ相手に失礼な話かなと少し反省もした。(でもなぁ〜?やっぱり怖いなぁ。)
 


■蕎麦
さてこの日、店の数歩前まで、二色蕎麦を食べようと勇んで急な坂道を下ってきた。しかし、外に掲げられた張り紙一枚で、一瞬にして洗脳される。湯気の上がる温かな甘汁の中に浮かぶ牡蠣が既に頭の中に焼きついて離れず、入るなり「一人。牡蠣蕎麦お願いします」と声が出ていた。「松翁」では今シーズン初の「牡蠣そば」。期待に胸ふくらみ、席から腰を浮かすようにして厨房を伺う。垣間見えたのは、大きな牡蠣の殻をこじ開けボールの中で丁寧に洗う姿。その背後では同時進行の釜前の仕事。うぅ〜〜ん、いい。唾液分泌で頬がキュっと痛む。 

一応、気になる今日の「変わり蕎麦」の品書きを見回すと、隣席の方が、紫蘇切り蕎麦と生粉打ちの二色を手繰っていた。変わり蕎麦は、日替わり。今日は紫蘇切りだ。瑞々しい紫蘇の緑色が散った細切りが目に鮮やかに飛び込む。あぁ〜こちらも美味しそう。いっそ、もう一品頼むかと迷っていると、若い店員が大事そうに牡蠣蕎麦を運んできてくれた。
 


松翁牡蠣そば.jpg大粒でぷっくりとした牡蠣が3個、海苔・三つ葉・ほうれん草・干し椎茸・さやえんどう・昆布巻きかまぼこ?・白髪ねぎ・ゆず、トッピングのどれも吟味した物であることが感じられる。熱い器を外気で悴んでいた手で包み込むと、寒さでカチコチになっていた肩がフゥ〜ッと柔らんで楽ちんに。甘汁を一口、五臓六腑に染み渡る。程よいバランスと牡蠣の香り。大急ぎで蕎麦を手繰ると生粉打ちらしい食感を堪能できた。熱いお汁の中で半生状態になっている牡蠣の旨みもたまらなく魅力的で、お汁も飲み干して完食。思いのほか満腹になっていたので、二色はまた次の機会にと席を立った。
これが\100-ならもっと嬉しいのだけれど、実は\1900-で、ちとお高い。
 


「松翁」では、ご存知の通り「変わり蕎麦」が二八、他は全て生粉打ちである。開店から約20年、試行錯誤の結果、今のソバは茨城の常陸秋ソバを契約農家から直接買い付けし、自家製粉。全て60メッシュで篩っている。辛汁2種類は同じ本枯れ節を使っているそうだ。
 


 
■品書きざるそば¥900.‐、二色もり¥1000-、そばがき¥1200-、牡蠣そば¥1900-.、なめこそば¥1350-、天ざる¥2200-、白子ざる¥2300-、そばみそ¥400-、恵比寿ビール中瓶¥630-、十四代.黒龍など地酒各種あり¥800-位から


■住所
千代田区猿楽町2--■電話03-3291-3529■営業時間月〜金11:3015:30 17:0020:00/土11:3016:00■定休日日・祝・年末年始・お盆■アクセス東京メトロ半蔵門線・神保町駅 歩5分、JR総武線・中央本線・御茶ノ水駅 徒7
posted by 笑門来福 at 02:27| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | 千代田・中央・港区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
松翁時々行きます。
ほんと、ちょっと高いっすね。

あの界隈では、
松翁よりちょっとだけ安い
「手打ち蕎麦たかせ」の
変わり蕎麦すきなんですけど、
あと、「出雲蕎麦」とか
ソバリエ的にはどうですか?
Posted by ばっちぐ〜 at 2007年12月07日 11:45
コメント、トラックバックありがとう
ございました。

松翁はこの半年に行き始めた蕎麦屋で
以来結構足を運んでいます。
ご主人の丁寧な仕事や職人さん達の
プロ意識がとても好きです。

それと気取ってないところも
入りやすいきがします。
Posted by 夢八 at 2007年12月07日 13:26
★ばっちぐ〜さま

コメント有難うございます。
あの辺りを随分と食べ歩いていらっしゃるのですね。
残念ながら私はまだ「たかせ」には、行ったことがありません。
ばっちぐ〜さまが教えてくださったので、
そのうちに是非行ってみます。
「出雲蕎麦」は結構好きです。
一番最初に薬味の紅葉おろしを見たときは「へぇ〜?」と思いましたが、
あののど越しの良い御蕎麦と、多種類の薬味はそれこそ
ばっちり合っているなぁ〜と感じます。
今後とも美味しいお店など情報をよろしくお願いします。



★夢八さま

コメントを有難うございます。
夢八さまに、ご訪問いただき光栄です。
松翁は、プロも認めるプロ意識なんですね。
なんだか分かるような気がします。
牡蠣そばのトッピングのそれぞれの火のとおり具合にも配慮を感じましたし、
天ぷらの揚がり具合も半端なところがありません。
お店で出すものに責任と自信を持っている感じがしています。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by 笑門来福 at 2007年12月07日 23:05
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