2007年11月19日

銀座「そば所よし田」

銀座「よし田」正面.jpg創業明治18年、木鉢会会員の店。1階はテーブル60席+小上がり12席、2.・3階は座敷で各70席。にぎり寿司を詰まらせたことが死因などといわれ美食家としても有名な文人久保田万太郎も足繁く通ったとか、贔屓の客の顔ぶれは近代日本史を彩るあの人この人なのだが、そんな銀座最古参の蕎麦屋「よし田」での昼酒は、下町庶民の私にとってもまったくもって居心地が良い。あぁ〜愛すべき蕎麦屋酒。

 
■蕎麦前風情のある壁にびっしりと掛かった短冊に、肴の品書きがいろいろとあるのだが、肝心(?)の値段が書いていない。しかしまぁ〜、せいろが¥480.-のお店ゆえ、銀座だからと、そんなに心配はない。この日は、一階の厨房(食品運搬用のエレベーター前)というか花番詰め所の周りに、大旦那と大女将が揃っておいでになり、しゃきしゃきキリリと采配をふるっていたので、一声掛けて今日のお薦めを伺ったところ、「牡蛎!」と間髪をいれずに返事が返ってきた。この店の冬は鴨鍋も良いのだが、お言葉に素直に従い、肴に岩手産牡蛎酢、玉子焼、穴子天ぷら(大振り穴子一本・しし唐・茄子・キス・さつま芋)、胡麻豆腐、小柱(青柳)をお願いした。
よし田牡蠣.jpgよし田玉子焼.jpgよし田徳利.jpg

気象予報官に言わせるとこの日は10月上旬の気温とのことで、ブリジストン美術館から店めがけて一気にガンガンと歩いてきた私には、ぷっくりと大振りの牡蛎の旨味が口の中に冷た〜〜く広がって、それはそれは美味であった。玉子焼は、江戸前の老舗ながら甘くないタイプ。ジューシーな焼き具合はいつ来ても素晴らしい。添えの大根おろしに予め生醤油がかかっておりさっぱりと頂く。日本酒は、老舗蕎麦屋定番の菊正宗。すっぱりきっぱりこれ一種。徳利に菊正宗の染め抜きが目にも眩しく、くぅ〜と唸りつつ杯が進む。いいのだろうか、まぁいいか、が昼酒の醍醐味だ。
 
よし田小柱.jpgよし田穴子天.jpg

よし田コロッケそば.jpg■蕎麦と蕎麦汁
まず有名なのがコロッケそば。初代女将の考案によるもので、鶏肉・山芋・玉子を練ってつくねにし、ごま油で揚げたものが、温かい蕎麦の上に葱と一緒に乗っている。このなんとも言えない和洋折衷具合が邪道であると、当時も評価が二分したらしい。今コロッケそばと聞いてこの形状を想像できる人がどの位いるのか。試しに息子に聞いてみたら、やはりお惣菜のコロッケ(ジャガイモがメインで、衣を付けてあげてあるもの)を蕎麦の上に乗せたものを連想すると言っていた。数年前、有楽町更科のご隠居で蕎麦界のご意見番である藤村和夫さんが、「よし田のコロッケそばを食べたことのある人」と、居合わせたソバリエに挙手を求めたところ、若いソバリエの幾人かはキョトンとしていたのだから、更に若い息子がそれを知らないのも無理はない。なんでも噂によると、温かい蕎麦の甘汁は、「関西風」が裏メニューとして選べるようになっているらしいが、私はチャレンジしたことがない。

 よし田せいろ.jpg
せいろの値段¥480.-は、銀座でなくとも安い。下手をすれば立ち食い蕎麦屋並の値段である。というわけで蕎麦も、庶民的。系列蕎麦店が他に4店舗(仙台・埼玉川口・名古屋・静岡島田)あり、銀座「よし田」を含めたこの5店舗が、静岡島田に「よし田そば製粉所」を持っている。製粉所では、他に乾麺の販売や、そば粉の通信販売もしてくれる。辛汁は、昔懐かしい甘辛の味。砂糖の甘さと醤油の辛さが、なんの衒いもなくストレートに攻めてくるので、最近の複雑で洗練された辛汁に慣れていると、面を喰らう。蕎麦前の肴の味付けからは、極力甘味を排しているので、メリハリがあると言ってもいい。この手のお汁を舐めると、子供の頃祖父が、相撲中継を見ながらのんびりストーブで焼いてくれた甘辛の焼餅を思い出す。  

■品書き
せいろ¥480.-、ざる¥580.-、コロッケそば¥950.-、天せいろ¥1030.-、あられそば¥1300.-、玉子焼¥800.-、鴨鍋¥3800.-、板わさ¥900.-、若鳥竜田揚げ¥800.-、菊正宗¥600.-、
この日は、菊正宗4合、肴と〆の蕎麦を二人で頂いて、¥10950.-。ご参考まで。


 
■住所中央区銀座7-7-8■電話03-3571-0526■営業時間平日11:30〜22:00/土祝11:30〜21:00■定休日■アクセス東京メトロ銀座駅 徒6分、JR新橋駅 徒5分
posted by 笑門来福 at 00:31| 東京 ☀| Comment(5) | TrackBack(1) | 千代田・中央・港区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 埼玉川口の「よし田」は,駅前「そごう」の確か10階の飲食店街にあります。
 確かに,玉子焼きは甘くはなかったです。コロッケはまだ食べたことがありませんので,いずれ確認したいと思います。
Posted by たけじん at 2007年11月23日 18:39
これみんな1人で食べたのですか?そんなわけないか・・・?笑門来福さんはお酒が強いからいいなぁ〜。私は飲めないから羨ましい〜。蕎麦屋で一杯なんて憧れます〜!系列店が名古屋にもあるとのことですね、捜します。
Posted by tannte at 2007年11月24日 22:02
たけじんさま
川口のよし田も、蕎麦前の嬉しい店でしょうか?

tannteさま
大丈夫?!一人でなく、二人で飲食しました。私食いしん坊ですが、お酒は強くありませんよぉ。tannteさまの名古屋美味しい蕎麦屋の情報を楽しみにしています。蕎麦打ちの成果も是非教えてください。
Posted by 笑門来福 at 2007年11月25日 00:42
初めて妻と一杯やりながらの夕食。お勘定にびっくり!レギュラーの蕎麦類はまあまあ銀座じゃ、お安い。が、値書きのない単品は?あまりに高いので、寿司屋かと。明細も見せず、同区民としてはお勧めは、・・?。

Posted by 蟹蔵 at 2010年12月05日 02:32
蟹蔵さま

コメント有難うございます。

奥さまと一杯の夕食。素敵ですね。
私も値段の表示のないものには、どぎまぎします。
ああいうのは「時価」?なんでしょうか?
確かに、ちゃんと明示して明細を出して欲しいですね。

蟹蔵さまは、中央区にお住まいですか。
ご近所の区内にでも、また他所のところでも、
おすすめのお店などありましたら、
コメント欄ででもお知らせ頂ければ幸いです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
有難うございました。
Posted by 笑門来福 at 2010年12月05日 08:07
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Weblog: 蕎麦遺産
Tracked: 2009-05-03 22:56