新蕎麦食べました。

酷暑の頃は過ぎたとはいえ、厳しい残暑の残る東京で過ごす身体が、新蕎麦はもう少し先と告げていたから、嬉しい想定外。蕎麦喰いには、新蕎麦の季節が正月のようなものだから、今年の初物を、旨いといえる店で味わえる、この巡り合わせに感謝。
店内は、小上がりに最大10人は座れるだろう2卓と、2人がけテーブル×2。ガラス張りの蕎麦打ち台が、テーブル席に面してあり、運がよければ店主の蕎麦打ち作業を見られる作り。


店主発師浩一さんは、キリスト教系の大学を卒業、アパレル関係にお勤めであったが、脱サラして「一茶庵」伊東教室・あの片倉英晴さん(片倉康雄さんの次男)から蕎麦打ちを習得。平成8年「和邑」を創業された。ニコニコと穏やかに柔らかくお客に接する姿は、和やかな人の集まるところという意味の店名「和邑」に相応しい。が、同時に緊張感を持ってしつらえてある掛け軸や大振りの花瓶の花、塗りの楊子入れ、友蕎子の額などが、この経歴を反映するかのように、シックでいてコ・ト・ゴ・ト・クお洒落、小粋である。毎日水に濡れる蒸篭などは普通のものを使うが、卓上の塗りの器などは、ちょっと良いものを使っているんですよとは、店主の弁。



せいろの薬味 鴨南ばん 鴨つくねせいろ
■蕎麦前残念ながら、魅惑の昼酒をいただくことは、できなかった。が、ちらりと厨房入り口のガラス張り冷蔵庫の中を覗きみれば、新潟の淡麗でキレの良い辛口銘柄の酒が並んでいるのが確認できた。
■蕎麦と汁ソバ粉は、馴染みの業者より国内産石臼挽きソバ粉を仕入れる。中途半端を嫌い、敢えて自家製粉をしない。この日いただいたのは、北海道は、空知と沼田産のソバ粉だそうで、薄緑色で初々しい香りの新蕎麦を生粉打ち(十割)し、美しい細切りに仕立ててあった。コシがありたおやかで、水切り加減も良い。小気味良い蕎麦だ。汁は、バランスの良い半生返し。少し薄めで強いお汁でないのに、しっかりとた印象。重過ぎない柔らかな(業者がヒゲタ醤油のダンボールを納入しているところを目撃)醤油と品の良い味醂、丁寧な出汁ひきに理由がありそうだ。今やバイブルのようになっている「至福の蕎麦屋」によれば、蕎麦屋では例外的な鰹の薄削りで出汁をひいているらしいから、出汁は料亭タイプの方法かもしれない。次回訪問時に是非お聞きしたい。

■蕎麦湯丸型の赤い塗りの湯桶に熱々を入れてくださった。休憩時間だったこともあるのか、濃度はまだサラサラ。別製ということではなさそうである。
■甘味店主は、甘いもの好きである。楽しそうに甘味のお話をされる。汁粉やだんご等がお抹茶付で品書きにあり、かなりの自信をもって提供しているようである。次回以降楽しみだ。
■品書きせいろ¥1000.-、しらゆき¥1200.-、田舎\1200.-、季節変わり蕎麦¥1500.-、三色(お好みで)¥1500.-、手打ちうどん¥1000.-、鴨つくねせいろ¥1500.-、鴨南ばん¥1800.-、天ぷらせいろ¥2500.-、そばとうふ¥300.-、やきみそ¥300.-、玉子焼き(甘・辛・中)¥500.-、そばがき¥1000.-、合鴨焼(塩・たれ)¥1500.-、鬼殻焼(一本)¥500.-、天ぷら盛合せ¥2500.-、
伊吹だんご・みたらし・そば汁粉(お抹茶付)各¥800.-、そばアイスクリーム¥300.-、そば寿司(要予約)¥1000.-〜、
ウーロン茶¥300.-、エビス生ビール¥500.-、エビスビンビール¥600.-、焼酎(米)グラス¥500.-/ボトル¥3000.-、日本酒一合¥1000.-〜、
この日は、森永乳業の宅配のお客様と牛乳販売店と森永をつなぐサークル誌「マミークラン2007 12」の特別企画“おそばぶれいく”の為の座談会が、ここ「和邑」で行われた。メンバーは、三遊亭圓窓、ダニエル・カール、發師浩一(雑司が谷「和邑」店主)、ほしひかる(エッセイスト・江戸ソバリエ認定委員)、笑門来福(江戸ソバリエ・石臼の会会員)。大いに盛り上がり、年越し企画の大放談会となった。
