2007年08月15日

須田町「眠庵」

■住所千代田区神田須田町1-16-4電話03-3251-5300■営業時間12:00-14:00(火・木・土のみ)/夜17:30-21:00■定休日日・祝/月・水・金の昼(※不定期な休みも有り)■アクセス東京メトロ銀座線・神田駅6番出口1分/東京メトロ丸の内線・淡路町駅A1出口3分/JR神田駅北口4分・JR秋葉原駅電気街口5分

2004年12月24日開店の「眠庵」は、
カウンター4席、4人がけのテーブル×2、2人がけのテーブル×1つの小さなお店である。訪問するにあたり1つ目の難題は、お店の場所が分かりにくいこと。2つ目は、極少スペースにもかかわらず、長っちりのお客が多い故、ふらりと訪れても席が空いていることが少ないことだ。この日は、1週間前から予約をして、酷暑の夕暮れに伺った。

失礼ながらお店を一言で表現すると、「悠々蕎麦オタクの店」。
化粧品のファンデーション等パウダーの“粒子”を顕微鏡で覗く研究員だったという店主の経歴を知って合点がいった。好奇心旺盛な理系の若い店主は、蕎麦粉の粒子まで嬉々として研究しているに違いない。蕎麦職人というよりは、まったり系悠々蕎麦研究員といった方がピッタリとくる。

想像するに店名の由来は、頻出する雑誌などの紹介記事とは相反するように、実は来0人を目指している風も感じられる店主が、店でボーっと白昼夢よろしく蕎麦の夢に浸れる時間を楽しむ店・・・眠るように暇な店「眠庵」ということではないかと思ってしまう。いつか真相を聞いてみよう。この店主の構えと、自ら半年間改装工事にかけた大正築・再建築不可という66uの古民家が、客人をも時の谷間にすっぽりと落とし込んだようにゆったりとさせる。暖簾をくぐった蕎麦前好きの客は、自ずと心が和んでゆるゆると席を暖めることになる。須田町というよりも連雀町の蕎麦屋と言いたい風情だ。 

■蕎麦
嬉しいではないか。
品書きには、きっちりと「蕎麦前」とあるのだ。日本酒の、しかも、無濾過の生原酒狂の私には、猫にマタタビ状態のラインナップ。日本酒を愛する店主の店は、無条件に大好きだ。アルコール度数16度〜18度の体力勝負の酒が並ぶ。その中から、この日お薦めの酒をお願いした。供されたのは、開運あさば一万石 純米吟醸生¥680.-、 杉錦生もと純米中取り原酒¥680.-、 白隠正宗 山廃純米生原酒¥740.-、 高砂 山廃仕込み純米生原酒無濾過あらばしり¥740.- 少しずつ重くなっていく順番にも配慮を感じる。4種類とも静岡県の蔵が軟水でゆっくりと醸した酒で、味に深みがあるのに、さらりとして飲み飽きしない素直な後味は、温厚でいてマニアックな店主のイメージにピッタリ。
眠庵牛大根バーボン煮.jpg眠庵そばがき.jpg眠庵さより.jpg
突き出しには、おからの小鉢。美味しいお酒ににんまりしつつ、肴に蛍烏賊の沖漬け¥320.-、うるか¥320.-、蟹漬け¥260.-、さより干し¥320.-、蕎麦掻き¥840.-、牛肉と大根のバーボン煮¥580.-、豆腐(自家製)¥320.-、煮豆腐¥420.-、などをいただいた。どれも少量ながら良心的な価格設定で、強い生原酒にも良く合い、またまたいつものことながら盃がすすむ。

眠庵とうふおから塩.jpg眠庵うるか蟹みそ.jpg
 左:豆腐(自家製) 右上:おから        左:うるか 右:蟹漬け

■蕎麦
二種もり(産地の違うもり二種)¥1160.-をお願いした。眠庵もり.jpgこの日の一枚目は、茨城県常陸秋ソバをやや細打ちで。2枚目が富山の在来種を細打ちで、池之端「藪蕎麦」方式と呼んでみようか、笊を裏返したように凸面を上に蕎麦が盛られる。(
風味さえ引き出せれば、形など、どうでもよいという店主のつぶやき⇒細打ちがイヤな理由は3つある。1)蕎麦の捌きが悪い。2)水切れが悪い。3)茹で時間をコンマ秒単位で調整しなければならない。あれ?書いてみると大した問題ではないかも。逆に良い点は、1)茹で時間が短い。2)香りを立たせ易い。3)細打ち特有の食感。といったところ。ウーム。まあ、同条件なら細打ちの方が絶対的に繊細なので、それが心理的な壁になっているのかな。)という割には、繊細な表情の細打ちだった。どちらも見た目以上に薫り高く野趣豊かに仕上がっていて、味わい深い生粉打ち。独学で蕎麦打ちを始めたらしいが、素晴らしい蕎麦だ。何の科学的な根拠もない至極勝手で個人的な感覚と断りつつ、女性や洗練された華奢な人、或は腰痛持ちだったり?で、力で打たない蕎麦が私には妙にぴたりとくる。ここの蕎麦もそれ。力でねじ伏せる風がない。眠庵店主の腰痛持ちを確信する。
眠庵常陸秋蕎麦.jpg眠庵富山在来種.jpg
   茨城産常陸秋ソバ        富山産在来種        

帰り際にちらりと
聞けば、自分で目立てもするという電動石臼で丸抜きから自家製粉、12メッシュ(12?!えっ、ほんと?酔って聞き間違ったかもしれない)で篩うという。「ソバの生産者のところへは必ず行っていて、2枚目の蕎麦粉である富山へは、これから行くのですが、在来種ですよ。」と快く説明してくださった。汁については、今も鮮明に覚えてはいるのだが、私の中で、感じたことの考えがまとまらない。後日再訪してから機会があれば触れたい。 

■薬味
小皿に小さく丸まった本山葵・辛み大根がちょこんと乗っている。雑誌を見た若者のお洒落心を充分に刺激する景色。そして、この店の薬味にねぎはない。店主は、故杉浦日向子さん
の講演で、蕎麦の風味に葱の香りは強すぎると聞き、以前から同じことを感じていたので心強く思い、薬味に葱を出していないそうだ。この度、私もなんだか納得したことでもある。ここのお蕎麦に、ねぎはいらない。 

■蕎麦湯
基本的に釜の湯ということだが、釜の湯を換えたときなどは、別製で濃度をつけているようだ。この日は、別製でトロリと滋味豊かな仕上がり。湯桶は、ぽってりと白い釉薬のついた気取りのない陶製のもの。

さて、次にこの店のお蕎麦にありつくのは、いつになるのか・・・・・・。なんといっても、いつ行っても混んでるんですよね。



posted by 笑門来福 at 17:30| 東京 ☀| Comment(10) | TrackBack(2) | 千代田・中央・港区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いい蕎麦屋の素晴らしいレポート! 優秀江戸ソバリエの面目躍如です。
いかの丸干し焼き、これもいいですよ。
まさか1人で飲んでたんじゃないですよね?
Posted by highland at 2007年08月22日 08:06
眠庵行かれましたか、わたくしも 最近友人とたまに利用してます、しかし すばらしいコメントですね・・・。 少し前そばがき・バーボン煮・とうふなどをいただいてきましたが いや〜すばらしく美味しくてまいったまいった。 
Posted by 興味津々 at 2007年08月23日 22:02
highlandさま
まさか・・・一人で原酒4合は・・・。
実は、この日は私の誕生祝ということで、
息子達がご馳走してくれました。
家族揃って、食いしん坊&呑兵衛で・・・
エンゲル係数高いです。
次回は、是非いかの丸干し焼きを頼んでみます。

興味津々さま
生粉打ちで鳴らした興味津々さまに、
「美味しくてまいった」と言わせるのだから、「眠庵」はたいしたものですね。
もっと空いていると、気軽に行けるのですが・・・。
Posted by 笑門来福(#^.^#) at 2007年08月24日 22:27
誕生祝で蕎麦屋にご招待! 素晴らしいご家族です。
私の場合は放っておいてもらう、ありがたいことです。
Posted by highland at 2007年08月27日 08:28
 コメント&TBを有り難うございました。
 ブログを拝見し、詳細なコメントや精緻な分析に感服いたしました。蕎麦を愛する心が伝わってまいります。
 今後益々のご活躍を祈念申し上げます。
 また、参考にTBを打たせていただきました。
Posted by 千代田グルメ遺産 at 2007年09月11日 21:37
千代田グルメ遺産さま

稚拙な記事への過分なコメント&TBを有難うございます。
千代田グルメ遺産さまの美しい写真や、土地を熟知していないと、なかなか知りえない貴重なお店の記事をいつも楽しみにしております。
江戸ソバリエは、千代田区とは少なからぬ縁を持っておりますし、今後ともどうぞお付き合いの程をお願いいたします。
Posted by 笑門来福 at 2007年09月12日 07:43
こんばんわ。
拙ブログへのトラックバック、
コメントを頂き、ありがとうございました。

眠庵にも最近また行ったのですが、
こちらの記事を拝見させて頂くと、
やはり観察眼のレベルの高さに
敬服させられます。

昼だったので、
今回はあまりお酒は飲めなかったのですが、
岩手の地ビール「ベアレンビール」は
重厚でコクがあって印象に残ったので、
そちらをブログのネタにしました。

最近は、酒の記事ばかりで、
蕎麦屋のネタはあんまり書いていないのですが、
気が向いたらまた覗いて見て下さい。
よろしくお願いします。
Posted by 酒蕎麦B at 2007年09月16日 01:50
酒蕎麦Bさま

コメント有難うございます。
酒蕎麦Bさまの幅広い記事はとても勉強になり、また楽しみでもあります。
きっと、いつでも全方位にアンテナを張り巡らせていらっしゃるのだと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by 笑門来福 at 2007年09月16日 09:23
お久しぶりです。
眠庵に行って来ました。店主は、自転車事故で休養中。お弟子さんの日比谷さんがとても素晴らしい蕎麦を打ってくださいました。
笑門来福さまの素敵な文章を勝手に紹介させていただきました。
Posted by 華麗麺麭(カレーパン) at 2011年04月26日 02:37
華麗麺麭(カレーパン) さま

いつもコメント有難うございます。
稚拙な私の記事もご紹介いただき、恐縮です。
重ねて御礼申し上げます。

華麗麺麭(カレーパン) さまのブログ記事で
吟八亭やざ和風と眠庵風の差のところが
とても面白く、興味深く読ませていただきました。
柳沢さんも早く完治されて、また以前のように
或いはそれよりも、もっと美味しい蕎麦が打てるようになるといいですね。
Posted by 笑門来福 at 2011年04月27日 08:07
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