2015年10月19日

松江「神代そば」


「出雲そば」とは、

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出雲蕎麦旅の下調べをしている中で、「あぁ〜美味しそうぅ〜〜っ、食べたいっ!」と、即予約(訪問1ヶ月前)してしまったお店。


前日、行きたかった蕎麦屋さんに回りきれなかった私は、観光なんかしてる場合じゃないなっ!!!と反省した。でも三歩歩くと忘れ、この日は予約してある安心感もあって、ワクワクドキドキしながら時間まで近くの明々庵武家屋敷小泉八雲記念館八雲旧居を回る。松江はしっとりしていて風情のあるとても素敵な街。小泉八雲記念館玄関開けたら徒歩1分で「神代そば」だし、余裕。



松江 神代そば (2).JPG



創業以来の石臼挽き自家製粉

昭和27年加茂町にて創業。始めから石臼挽き自家製粉したものを、生粉打ちで提供していたという。東京生まれの私の認識では、思い通りのソバ粉で自分仕様の手打ちをしたいとうい機運の高まりが東京であったのは、昭和50年頃からだったと感じていたから、玄ソバの産地である奥出雲の農家などから直接入手できるという強みがあったとしても、昭和27年当時からというと先代は極めて先駆的な人であったのかと想像していた。


ところが、現店主である佐藤博志さんの作るHPによると

戦前に書かれた『出雲新風土記』太田直行著の蕎麦の項には昔は蕎麦屋が荒蕎麦を買って毎日の使ひ料を手挽きしたものだが、現在は製粉屋に機械挽きにさせてゐる」とも書かれ、伝統的な製粉方法が変わりつつある様子も分かります。これらのことを読んでいる内に、黒くて堅い蕎麦、つなぎを使わない製法、地伝酒を使ったそばつゆ、石臼挽き自家製粉など、今神代そばが行っていることは昭和初期には当たり前の事だったのだと分かります。そして、江戸時代から続く松江の老舗の蕎麦屋が時代とともに製法を変化させていったのにもかかわらず、戦後田舎で創業した弊店が、実は松江の伝統的な蕎麦を守っているのには驚かされます。

今まで、多くの書物やお客様からの話を元に、神代そばのルーツは田舎の振る舞い蕎麦であったことが分かりましたが、実はこれ、伝統的な松江の蕎麦の作り方でもあったのです。江戸時代から続く、伝統的な蕎麦の味をお楽しみ頂ければと思います。

と。


結局、今になってある種の蕎麦屋では、ソバ本来の味を求めて自家製粉に戻ってきたということなんですかね。先代が先駆的だったのか、回帰したのか、伝統を守り続けたのか、美味しい蕎麦を食べられるのなら、どちらでもOKということで。


自家製粉と一口に言っても、東京では主にそのスペースや「石抜き」「玄ソバのガク落とし」「磨き」「選別」「脱皮」などの工程をこなす機械の音事情も有って、丸抜きからの自家製粉が多い。

けれど、個人店としては大掛かりな製粉設備を店舗とは別の松江市鹿島町佐陀宮内に持つ「神代そば」では、毎日営業後に翌日分を玄ソバから石臼3台稼働で製粉する。店内で扱うすべての品書き用に同じ挽き方で、16回転/-玄ソバから3回挽き。(十年も前の数字で恐縮だが、平成18年には)松江市産玄丹そばの生産量46トン中、3トンを「神代そば」で消費したという程、地元産のソバを中心に据えて使っている。





割子蕎麦+釜揚げ蕎麦

堪えきれずにオプションを
予約時間は11時半…15分前に店の外から見える打ち場を覗く。おぉ〜っ職人さんが長〜い1本棒で大きく大きく丸延ししているではないか。いいタイミングで来たなぁ、畳み方まで観ることができた。嬉しい。


入り口には、「季節のおすすめ なめこ割子」「本日の蕎麦 松江市産在来集 広島県神石高原産」と有る。つまりは松江市産在来種と広島県神石高原産のブレンドを(この神石高原のソバは、種用に取ってあったもので、玄蕎麦は普通のものより質が良いそうだ。)なめこの割子で食べなさぁ〜い、ということだ。


さてガラリと引き戸を開け、にこやかな花番さんに予約の旨伝えると、入り口脇に並んでいた他のお客さんの間を縫うようにして、テキパキと席に案内してくださった。





まず蕎麦前に、ここでも「豊の秋」¥410.-を燗で。



松江 神代そば (11).JPG 



今回の出雲蕎麦旅では、どの店でも必ずシンプルな「割子蕎麦」とシンプルな「釜揚げ蕎麦」を食べて資料(ザ・割子そばの風情・薬味を記録したい)として写真に収めようと計画していたのだけれど、この日は第二の胃袋(私が食べきれない場合にもペロッと平らげてくれる息子たち)と別行動となり、食べられる量にも限界がありそう。


迷いに迷って甘い欲望に負け、資料としてのシンプル「割子そば」¥930.-は諦めて、食べたいオススメの季節限定「なめこ割子」¥1270.-にし、更にトッピングのオプションで「とろろ(中国山地・赤来億元の大和芋と地元産玉子)」¥340.-をお願いした。


トッピングを「豊の秋」のあてにしても良さそうだと目論み、燗の「豊の秋」×2の追加も。



松江 神代そば (16).JPG



何も付けずに、蕎麦を手繰る。わぁ〜ぉ想像通りの素晴らしい蕎麦。野趣あふれるしっかりとした香り、穀物としての味わいも深い。わざわざ、のど越しよりも噛んで食べる蕎麦だと品書きに説明が書かれているけれど、いやいやどうしてやや細く打たれた蕎麦はスルッと喉に滑り落ち、尚まだ余韻が香るではないか。気が付けば、何もつけないまま1段目を手繰り終えてしまった。いいなぁ、美味しい。


よぉ〜く吟味されていると分かる「なめこ」も「とろろ」も、それぞれ蕎麦の上にドン。これもまた違った風味と蕎麦が相まって堪らなく美味しい。トッピングと汁(出雲蕎麦では、汁を「だし」と呼ぶ)を掛ける割子の食べ方っ!これもいいなぁ。

神代そばの汁(出雲蕎麦では、汁を「だし」と呼ぶ)は、松江地方の他のお店よりも少し辛目で、東京に近いと感じた。





次に「釜揚げそば」¥720.-

「神代そば」では、釜揚げの器に先にお汁も入っていて、更にお好みで追加の汁(出雲蕎麦では、汁を「だし」と呼ぶ)を足す方式だ。釜の茹で湯だけのお店と少し風情が違うなぁ。



松江 神代そば (13).JPG



こちらもやっぱり蕎麦だけを先に手繰ってみる。割子の蕎麦よりも更にソバ本来の風味が強く感じられる。味わい濃く少し柔らかな蕎麦と、茹でてソバが溶け込みトロリと粘度が増したお汁は、ほわぁ〜と五臓六腑に染み渡る癖になる美味しさ。あぁ〜釜揚げ蕎麦、好きだぁ。



期待通りに素晴らしい蕎麦に出会え、この幸せについニマニマしてしまう。家の近所にあればいいのに〜〜っ。




■住所島根県松江市奥谷町324-5■電話0852-21-4866■定休日■営業時間11時〜17時  ※営業時間について、以下の断り書きが有り 11時から15時まで蕎麦を打ちますが、それ以降なくなり次第閉店とさせて頂きます。誠に勝手ながら、15時以降ご来店のお客様は、御連絡頂きますようお願い致します。」


    お店のHP



posted by 笑門来福 at 18:56| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ⇒島根・鳥取 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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