木曽藪原宿「おぎのや」は、平成18年オープン、あの達磨の高橋邦弘名人の弟子 神村治男さんのお店。築140年の素晴らしいこの古民家は、2代前まで雑貨商を営んでおられたご主人のご生家だ。高い天井に回らされた大きな梁や、ゆったりとした間取り、隣接する蔵(おそらくこの土蔵に、秋に実った国産玄ソバを1年分貯蔵しているのだろう。)や調度品の数々が、柔らかな笑顔を湛えたご主人の佇まいとしっくり馴染んで、心から寛げる空間を作り上げている。囲炉裏に手をかざし、のんびり燗酒でも頂きたい誘惑に駆られる。
しかし、そうは言ってもまだ旅程は始まったばかり。次に訪問する木曽須原宿「定勝寺」では、ご住職がお話をくださるというので、蕎麦前をグッと我慢し、一番人気の鴨せいろ¥1300.-をお願いした。
この日の蕎麦は、木曽 + 八ヶ岳 + 北海道 + 茨城 産4種の玄ソバをブレンドし、朝自家製粉した細打ち。麺の香味は、達磨グループのそれらしく淑やかでバランスが絶妙、安定感がある。麺の太さは師匠よりも随分と細くて、1.0〜1.2o位だ。この細打ちの蕎麦を扱う釜前の仕事は繊細で、同行22名の蕎麦フリークの麺を茹でるのは、さぞ神経を遣い骨の折れる作業だろう。客としては、この辺り察してササッと手繰りたい。
鴨の油の旨みたっぷり熱々お汁は、少し甘目で醤油は軽め、江戸前と信州のちょうど中間の感じ。麺も汁も鴨も「どぉ〜だ、凄いだろう」感がなく、ふくよかで品が良い。コクがあるのに柔らかで癖のないこの鴨は、とうもろこしや大麦・海草など自然飼料で育った「岩手がも」だそう。興味を持つ私に、ご主人は吟味する鴨の仕入先なども、親切に教えてくださった。
最後に、ほんのり甘酸っぱい梅のシャーベットが供されて、大満足。
ごちそうさまでした。
■住所長野県木曽郡木祖村薮原1123-1■電話0264-36-2012■営業時間11:00〜15:00 ※伺った土曜日も行列ができていた。売り切れ仕舞いでもあるし、早めの訪問が吉。■定休日水(※水が休日・祝日の場合はその翌日が休み)■駐車場5台 ※毎年4月に達磨の高橋邦弘名人の蕎麦会が、こちらのお店で開催されていた。詳細はお店に。