■■須賀川とは
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奥州街道をラーメンで有名な白河を過ぎ、更に北へ進むと須賀川市に至ります。
ここは、元禄2年、松尾芭蕉が「奥の細道」の道中で蕎麦を食べたという記録が残っている場所。
その時代からの名残か、市内には手打ち蕎麦を供するお店が何軒もあるのですが、なぜか「大根」を用いた変わった蕎麦が2つあるとの情報を得、探訪に出掛けました。
■■「藤田」辛味大根蕎麦
■■アザキ大根ヒゲ根天ぷら付き
漫画「そばもん」単行本の巻末に、著者の山本おさむ氏が取材裏話などをまとめた「今日もそば日和」という「おまけ」漫画が連載されています。
これに、須賀川市の「藤田」さんというお蕎麦屋さんで辛味大根蕎麦を注文すると「アザキ大根ヒゲ根の天ぷら」が一緒に供されるとの記述があり、興味本意に訪問しました。
「アザキ大根」とは、奥会津金山町特産の、水分は無くヒゲ根がたくさん生えるのが特徴の辛味大根。お店で大根の実物を見たいとお願いをしたところ、「秋に収穫したものは、すぐに下ろしてしまい、冷凍保存しているので実物は無い。こうすることで、収穫してから時間が経っても辛味が生きた状態で提供出来る。ヒゲ根はそのまま保存して、辛味大根蕎麦を注文した客に、天ぷらにして提供している」とのことでした。
アザキ大根天ぷら
まず、蕎麦汁と下ろした辛味大根、ヒゲ根天ぷらが登場。天ぷらは、写真の通り細いものですが、山ごぼうのようなしっかりとした歯ごたえ、味はやや苦いものでしたが、辛味大根そばとは全く異なる食味ら得られました。辛味大根は、ピンポン球をひとまわり小さくした大きさで、結構な量がありました。
アザキ大根おろし
この日の蕎麦は、会津坂下町産「あいづの香り」を自家製粉して打ったもの。あっさりした蕎麦は、辛味大根の味をしっかりと感じされるにふさわしく、初めは強烈かなと思った辛味(苦み)も、慣れるにつれ、甘みも感じるようになり、きれいにいただくことが出来ました。
藤田蕎麦
後日、アカザ大根の産地である金山町を訪れ、大根の辛味蕎麦(こちらではアザキ大根高遠そばという品名でした)を食べる機会があり、ヒゲ根を天ぷらにする習慣があるのか伺ったところ「会津ではないと思う。ただし、会津地方では高麗人参を天ぷらにして食べる習慣があり、これを参考にしたのではなかろうか」との返事を頂戴しました。
「藤田」さんにはときどき山本おさむ先生が訪問されるそう。お蕎麦も召し上がるのですが、特に蕎麦前に重きをおかれている様子とのことでした。
須賀川「藤田」
■住所福島県須賀川日向町82-1■電話0248-73-0333■営業時間11:30〜15:00 ※蕎麦が無くなり次第終了■定休日月■アクセスJR東北本線須賀川駅より車で約7分。須賀川I.C手前、ローソンの信号を右折。3本目の交差点を左折してすぐ左側。
■■「菊屋らん丸」大根そば
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日を変えて、今度は須賀川駅近くにある「菊屋らん丸」さんを「大根そば」目当てに訪問しました。
らん丸外観
こちらは須賀川市の食事處の案内に、おすすめメニューとして「大根そば」を掲載しており、「藤田」さんの縁で、大根のなせる仕業かと思って訪れた次第です。
カウンター越しに、どんなものが供されるかと様子を見ていると、大根を千切りにして蕎麦と一緒に数秒(7秒くらいか)茹で、盛りつけられて「大根そば」が登場しました。
大根そば
大根を増量材として用いるもの(関東一円にある)なのか、それとも「長浦」の妙興寺そばに縁のあるものかご主人に伺うと、ご主人は、足利一茶庵で修行を積んでおり、その折りに佐野の「大根そば」に接し、気にいったのでメニューに取り入れたとのこと。
とはいえ、この店の「大根そば」に使われている蕎麦は、足利一茶庵由来の、極細、透明感のある十割蕎麦。佐野の「大根そば」は蕎麦と大根それぞれの個性が感じられるのですが、らん丸さんのものは、腰の強い蕎麦の食感と千切り大根のしゃきしゃき感とが程よく主張しながら一体化し、他には無い、すばらしい食感を伴った一品となっていました。
食後には、この店手作りのそば饅頭天ぷらをめんつゆに浸して食べ、大満足して表に出ると雪が舞い、改めてみちのく路にいることを思い出しました。
手作り饅頭
須賀川「菊屋らん丸」
■住所福島県須賀川市上人坦42-1■電話0248-72-2299■営業時間11:00〜15:00(L.O.14:30)/17:00〜22:00(L.O.21:30)■定休日火
■■最後に
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須賀川市内には、このほかにも何軒かの手打ち蕎麦屋さん、会津十割そば十割そば会(押し出し式)の大きな駐車場を持った店、地域興しに開発したキュウリの汁を練り込んだ「かっぱ麵」という乾麺を酢味噌味の汁で食べさせる店などがあり、様々な形で麺を楽しめる場所だと思えました。また、機会を作って、訪れてみたいものです。
十割そば会
かっぱ麺
なお、余談ですが、北長野にも同じ名前のつく「須賀川」という地区があり、こちらでは、そばがきに大根の千切りを入れる「早そば」というものがあります。どういう因縁なのでしょうか。
− m −
輝いて生き生きしていて、食感を一生懸命想像してしまいました。
それから
水分の少ない辛み大根は冷凍できることも知り
とても勉強になりました。
北長野「須賀川」とのご縁?も、もし何か分かったら、
また是非お話を聞かせてください。
写真では、雪が舞っていたり凄く寒そうですけれど
大満足の素敵な蕎麦紀行の様子を読めて
楽しい思いを御裾分けいただき、嬉しかったです。
有難うございます。