これまで毎年、7月第4週目の土曜日が、千葉県そば大学講座。(主催:千葉手打ち蕎麦の会、 協賛:千葉県そば推進協議会、 後援:全麺協、千葉県、千葉県教育庁、習志野市、習志野市教育委員会、日本大学生産工学部)今年は260余名の蕎麦好きが、日本大学生産工学部・津田沼キャンパスに集結した。
カリキュラムは、以下の通り。
■■だしとそばつゆ
■■(株)にんべん研究開発部前部長
荻野目望氏
江戸ソバリエ仲間の勉強会やら何やらで、荻野目先生の講座を受けるのは、私個人的に3…回目。毎回、新年度の資料が加わるし、自分の理解できる興味の範囲も揺らぐ?為か、今回が90分と時間がたっぷりあって内容も濃くなっている為か、先生の話術が優れている為か、既に聞いた話に何度か出くわしても飽きることもなく楽しく受講できた。今回「オレンジミート」という言葉を初めて知ったし。
オレンジミートとは、(にんべんのHPより抜粋)
漁獲されたカツオの筋肉中のグリコーゲン(エネルギーの蓄積物質)は、細胞中の酵素により分解されます。グリコーゲンから乳酸まで順調に分解されていけば良いのですが、分解の途中で作用する多くの成分のうち、ATP(アデノシン三リン酸)や補酵素のNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が少ない場合、それ以上糖の分解が進まず、筋肉中にF6P(フラクトース―6―リン酸)やG6P(グルコース―6―リン酸)という糖類が蓄積してしまいます。この糖類とカツオに多いアミノ酸(ヒスチジン)やクレアチンなどが、鰹節製造工程の煮熟や焙乾時の加熱により反応(メイラード反応)し、オレンジ色に着色した肉質となったものをオレンジミートといいます。これは、加熱処理される缶詰でも発生します。オレンジミートはその色調以外に、独特の焦げ臭があります。
■■蕎麦の生産と品質管理
■■JAきたそらち幌加内 田丸利博氏
趣味で蕎麦を打っている私には、ソバに係わる人たちの中でも生産者さんの話を聞ける機会は少ない。ましてや生産者さんを束ねる?地域全体のソバの価値を上げようと努力しているJAの職員さんであるからして、貴重な話を聞けた。予算の中から苦労をして作り上げている品質管理システムや、収穫量と玄そばの価格推移などの話は切実で、ソバを愛する消費者として、何とか応援したくなるような内容だった。ソバに付く菌の数を減らし、付加価値を付けてゆくことも、今後当面の課題だそうだ。
■■蕎麦道具を知る
■■蕎遊庵 根本忠明氏
根本先生のお人柄の現れだろう、初めて見る美しく遊び心のある工芸品のような蕎麦道具。でも実は美しさだけでなく、その形や素材には、考え抜かれ試行錯誤を重ねて辿り着いた、それぞれに合理的な理由があった。
包丁の形や重さは、これこれ。こま板の土手は、これこれ。麺棒の働きを考えれば、自ずとこれこれ。鉢の形は、これこれ。お聞きした説明に、いちいち「うぅ〜ん、なるほど」と頷き、丸々全て納得してしまった。
そんなキチンとした考えも無しに、なんとなく経験的に、私は軽い包丁と軽く柔らかな麺棒が好きなのだけれど、こうして説明して貰えると「何だか我が意を得たり」と、自分で考えて選んでいたようにも錯覚できて、妙に嬉しくなっった。まっ、無味乾燥で安価な私の道具と、根本先生の物は月とすっぽんであるし、そもそも、私はまだ道具をアレコレ言える腕があるわけでもないが…それでも、何だか嬉しくなった。あぁ〜それから、あのすり鉢形をした縁に返しのある深い鉢もいいなぁ〜〜。
受講して良かったぁ!!!
唯、美味しい蕎麦を打つために究極のフォルムを追及し続け、そこへちょっと遊びを乗せてみたら、私(=根本忠明先生)の場合はこんな形ですよ…と。螺鈿細工の施された蕎麦道具。
無粋な私は値段がとても気にはなったのだが、小心者ゆえ怖くて聞けず。
■■プロの蕎麦打ちに学ぶ
■■蕎遊庵 根本忠明氏
(特許出願中)新麺棒によるそば打ち さらしなの生一本とニ八そば。
今まで、麺棒は“つるつるに管理する必要がある”と思い込んでいた私は、この麺棒の噂を聞いて興味津々だった。講義前の昼休みに、会場に展示してあったエンボス麺棒を、許可を得て触らせて頂くと…ホントに!ざらざら凸凹。そして軽い。さぁ〜いよいよ、噂のエンボス麺棒でさらしな生一本の実演。
瞬きをせず(うそ)目を見開き、観た。そしてパラパラ漫画が作れそうな位、写真を撮った。どの動きを見ても、軽い。軽い。軽い。力みがない。力なんて入れてないような…軽やかで自然な動き。
一昔前、更科の某大家に、更科の蕎麦打ちを見学させて頂いたことがある。当時は、あの鉄砲?突き?相撲取りの柱突き?みたいな力技をマスターしないと、「更科は打てないぞぉ」「そんなお嬢さん仕事では、全然ダメだぁ」と、厳しいお言葉を頂き、「無理かも…」と、がっくりした覚えがある。
でも、ここ数年、更科の新しい打ち方を教えて頂くようになり、「私でもなんとかなるんだ」と光明が見えていた。それは、突きをしない今回の根本先生と同じ手法。でも、根本先生の動きは、もっと更に軽い軽い。サラリと優雅で手早かったのに、しっかりと美しく麺になっていた。これはエンボス麺棒の所為??? いや、やっぱり技だな。と思っていたら…。
根本先生は解説で、今までの麺棒は、「面」で押すのでブルドーザーのように、時に押し延ばす、或いは引き延ばすような力が加わっていた。エンボス麺棒を使うと、真下に垂直に力が「点」で加わるので、麺体にヒビができない、と。そしてなんと、延している麺体にナイフで5cm程も有りそうな切れ目を入れて、そこにエンボス麺棒をコロコロと当てると、あぁ〜ら不思議、切れていたハズの部分が、ピタッとくっついているという実演をしてくださった。あぁ〜まるで手品。
更科生一本〜エンボス麺棒を縦にも横にもコロコロっと
このエンボス麺棒、根本先生の蕎遊舎で使い方の講習を受け、体験して納得し、許された者だけに販売するそうで、価格は¥●●●●●.-位を想定しているとのこと。
確かに、点で垂直に押すのが良さそうに思った。私の持っている製菓用クッキー・パイ用麺棒は、プラスチック製凹凸のある20p程の棒だ。ひょっとすると、これでも良いのかしらん??? うぅ〜ん、どうなんだろう。でも、やっぱり技の部分も、とても重要だろうなぁ。いや、絶対そう、あの麺棒を使える技も重要だと思う。
■■
■今年の「千葉県そば大学講座」も、とても勉強になり面白かった。この時期の土曜は、各種行事・企画も多く、どうしてもいろいろな予定が重なる。こうして講座に参加したことを書くと(かといって、書かない訳にもいかず…言い訳が長い<m(__)m>)申し開きもできず…不義理をしてしまった方々への申し訳なさもあり…近くそちらへも伺わねば…と考える。
それなのに、あぁ〜それなのに、閉校の挨拶を聞いていたら、来年は信州そば塾主宰・神洲八味屋ヤマキチ岩波実業・江戸ソバリエ仲間でもある岩波金太郎さんが、実技講師だと…。会場で突然ご指名を受けた岩波さんご本人が「じゃぁ〜来年は…誰でも打てる超粗挽き蕎麦、やります」と。あぁ〜私、どうしたらいいの?来年の「千葉県そば大学講座」も、楽しみにしてしまっている…。パーマンのコピーロボットが欲しい。どらえもぉ〜ん。
今回の千葉県そば大学講座 内容が豊かであった様子がうかがえました。
演題の中で特に興味が有ったのは「蕎麦道具を知る」と「プロの蕎麦打ちに学ぶ」です。
笑門来福さんが目を見開き、熱心に見た、聞いた様子が良く分かります。自分が受講できなかった事が残念です。機会が有りましたら
そな時の様子を聞かせて下さい。
聴講料は如何しましょうかね・・・ 龍成
いつもコメントを有難うございます。
楽しい講義を聞いて、一日がアッと言うまでした。
龍成さまに次にお会いできる機会にでも
珍しいエンボス加工麺棒のお話をさせてください。
エンボス加工の麺棒! ですか? 面から線 線から点ですか・・・学生時代を 思い出します。
いつもコメントを有難うございます。
そそそ、そうなんです。
根本先生の作られる道具は、凄くて更にゴージャスです。
圧倒されました。