昨年の暮れ以来山形に不沙汰。山形DC(デスティネーションキャンペーン)「山形日和」の一環で面白そうな蕎麦関連のイベントがあることを知り、出かけてきたのでその顛末を報告。
6/12格安の夜行バスで翌朝山形市駅前着。牛丼屋で「山形のだし」を使ったメニューの朝食。(山形駅前で朝食を座って食べられる場所はホテルを除くとここかドトールかミスドだけ)
知人の元祖ソバリエS氏と合流し天童高原へ。天童高原は最高品質の「でわかおり」が収穫される場所。どこかに蕎麦畑らしいものは無いか、蕎麦が食べられないかと目をこらしたが、時間も早いせいか見つけられず。634の松(スカイツリーと同じ標高634mに生えている松)を車窓から見ただけで、一転、月山の麓にある西川町を目指す。
西川町は、春は山菜と月山筍、秋はきのこが豊富に採れることで有名。この山菜の知名度を生かして誕生したのが「月山山菜そば」。昭和50年には様々な業態の店が月山山菜そば組合を設立(現在13軒)。
組合では店による差が出ないよう、すべての加入店で同じ鉄鍋、地元の製麺所が作る同じ蕎麦を使っており、お店毎に違うのは山菜の種類と小鉢程度とのこと。最近では夏場に「冷たい月山山菜そば」を提供している店もある。
私たちは、組合員の一軒「やまろく食堂」に入店。平日なので客は私たちだけ。
やまろく食堂
注文したのは「月山山菜そば」と「山菜の天ぷら」と山形ではポピュラーな「いかげそ天」。「月山山菜そば」が登場。月山筍と山菜と鶏肉がたっぷりと入った鍋は、冷めないよう下から温めてられている。冷たいそばは皿盛りに、脇にはわらびの一本漬け、蕗の煮物とやまぶどうのジュース。小さな丼に蕎麦を少し移し鍋から取り分けた汁と具を掛けて食べるのが作法とのこと。鍋は保温されているので、常に熱々(あつあつ)を食べることが出来る。
まず、蕎麦だけ手繰ってみる。香りはさほど感じなかったが、味わいと甘みの強い太打ちの蕎麦である。今度は作法通り、丼に蕎麦を入れ、山菜と汁を掛ける。山菜と鶏の味が溶け出した醤油仕立ての汁に太めの蕎麦の取り合わせ。蕎麦はすするのではなく、嚙むのだが、しっかりとした存在感が感じられる。
月山山菜蕎麦(鍋)
沢山の汁を食べ尽くすだけでも時間がかかると思っているところへ、山盛りの天ぷらが登場する。
月山筍や旬の山菜。その横にはいかげそ天。一年分の山菜を食べてしまった気分となって店を出る。
■住所山形県西村山郡西川町大字間沢309-4■電話0237-74-2169■営業時間11:00〜21:00■定休日毎週月曜日
続いて、山形の蕎麦街道の名を全国に知らしめた「あらきそば」を訪問する。訪問した訳は「あらきそば」の所属する三難所そば街道で発足20周年記念スタンプラリーを開催。スタンプ台紙は「板蕎麦」の器を模したもの。これを入手するのが目的であったが、入手した台紙は葉書を縦長にしたような大きさ。丁寧に作られており、力の入れようが伝わって来る。同行のS氏は「あらきそば」とは数十年の付き合い。玄関の囲炉裏脇に上がり込み「みずとわらびの浅漬け」をお茶請けにしながら先代夫婦と昔ばなしを始める。そろそろ夏蕎麦が咲く時期。どこかで花見が出来ないかと尋ねたところ、お店のすぐ近くの畑で見頃だとのことで三代目の奥さんに案内して貰う。この畑の蕎麦は、若芽を使っておひたしとして供されるそう。他にもお店で出される季節の惣菜に使う野菜はここで穫れるものを使うこともあるそうである。
↑あらきそば
←手形
あらきそば(畑)
■住所山形県村山市大久保甲65■電話0237-54-2248■営業時間11:00〜17:00■定休日水曜日
自宅に戻るというS氏に山形市内にある「惣右エ門」というお店まで送って貰う。この店の店主は「幻の山形天保そば保存会」の会長。「天保そば」の提供時期なので店頭には幟が翻っている。開店には間があったが、店主が見つけてくれて店内へ。「蕎麦味噌」「だし」「浅漬け」を肴にそば屋の隠し酒「五薫」という蕎麦前を楽しみながら店主と蕎麦談義。最後は「天保そば」。素朴な味わい、乾きかかった頃の甘みを堪能する。この後はホテルに戻り明日に備える。(今年は日本橋三越で「天保そば」は提供されなかった)
惣右エ門(店頭)
惣右エ門(酒肴)、惣右エ門(だし)
惣右エ門(天保全体)
惣右エ門(天保アップ)
■住所山形県山形市早乙女1■電話023-633-0055■営業時間平日 11:00-16:00 ・17:00-20:00 /土日祝祭日 11:00-20:00■定休日火曜日 祝日の火曜は営業
6/14
さて2日目。市内で無料レンタサイクルを借用。駅周辺で土産を買い込んだあと、10:30山形駅。本日からの山形DCの準備が始まっており、新幹線ホームには駅員、蔵王温泉の女将連、ミスつや姫、山形舞妓などによる歓迎体制が取られている。DC主役のゆるキャラ「キテケレ君」ももちろんいる。
山形舞妓 キテケロ
イベント指定列車11:48発つばさ161号に乗車。村山へ向かう。途中の天童やさくらんぼ東根駅で到着客出迎えの様子を眺めながら目的地村山駅に到着。ホームでは高校生が演じる徳内ばやしが出迎えてくれる。改札を出たコンコースにはミニ長板そばの準備が整えられている。
私を含めた10名程の下車客が長板の前に揃うと、伝承の館のメンバーが準備した太めのそばが60名分並べられる。流れるそうめんを食べるために人が並ぶ様はよく見るが、並べられた蕎麦を食べるために人がずらっと並ぶところを見るのは初めて。
長板蕎麦準備
司会者の掛け声に「戴きます」の声で呼応し、食事タイムとなる。蕎麦はやや太めで固く、しっかり嚙んで食べるタイプのもの。箸休めの漬け物をいただきながら満腹になるまで頂戴する。無料だからということもあり、しっかりと食べてしまう。その様子は、地元テレビで実況中継放送されており、数日して山形の知人より映っていたよとの連絡を貰った。
長板蕎麦
せっかくなので舞台裏も見学。この日は4台のコンロで対応したとのことだが、本来の長板そば食のイベントでは一度に600食を提供するはず。この10倍の規模を支度する様子は想像を絶してしまう。
取材にきていた山形新聞村山支局の記者と話ができ、村山版の蕎麦関連の記事の多さに感心していると話したところ、彼は殆どの記事を書いているとのこと。県南の置賜地方から村山地方に移動し、蕎麦の魅力にはまってしまったことが影響しているのではないかとのことであった。
東根さくらんぼ
満腹を解消しようと5km先の「さくらんぼ東根」駅まで歩くこととする。暫くして、聞き覚えのある清酒「六歌仙」の酒蔵に出くわす。売店に案内され、どれだけ試飲しても良いといわれたものの、この先歩くことを思い出し、気になった数種の清酒を利かせて貰う。「六歌仙」という名前は戦時中地元6社の蔵元が、行政の指導により合併することとなり、この名前を決めたそうであるが、「十四代」の高木酒造が抜けてしまい5社でスタート、今日に至っているそう。
六歌仙試飲用
蔵を辞し再度「さくらんぼ東根」駅を目指す。気温は30℃くらい。試飲の影響か、やや足は重たかったが、「さくらんぼ東根」に到着し、レンタサイクルを調達。ひとまず、温泉の公衆浴場オオタ湯に入浴。
入浴料350円+ロッカー代10円。男女共用の休憩室には出荷されないさくらんぼが置かれており、利用者は誰でも食べてよいとのこと。湯上がりにこれ幸いと沢山食べてしまう。
このあと、サクランボ畑をサイクリングして、神町駅にほど近い明烏(あけがらす)というお蕎麦屋さんにて夕食。清酒霞城寿350円と肉蕎麦700円。肉蕎麦の鶏肉を摘まみに清酒を楽しんだ後、肉蕎麦に挑んだが、板蕎麦がまだ消化しきれておらず、美味しいのだが、苦しい思いをしながらなんとか完食した。
■住所山形県東根市若木5850-13■電話0237-47-0378■営業時間11:00〜14:30/17:00〜20:00■定休日第2金曜
帰路は山形駅から新幹線。到着した新幹線「つばさ」号は今年から登場する山形出身のデザイナーが制作した新塗装の電車。この旅を最後まで盛り上げてくれたことに感謝しつつ帰路につく。
(_m_)
写真でも一目でわかる位、1皿1皿の盛りが大きく、たっぷりとした量があると感じました。
これらをペロリと食べ歩いたmさまの胃袋にも、
凄いなぁ〜と感心してしまいました。
壮観な長板蕎麦を、是非 大勢でワイワイと手繰ってみたいとも思いました。
20年程前、よく食べました。記憶では蕎麦とニシンしかありませんでした。田舎の会議所にあるようなテーブルに出された板蕎麦は、いかにも無造作でした。出羽では噛む蕎麦が多いですね。
「ではかおり」が気に入りで、白鷹産の「ではかおり」を幌加内産の「きたわせ」と交互に使用しています。
昨宵は六歌仙をやりました。偶然です。
名前の由来は知らず、今回知識が増えました。
ありがとうございます。
盛りだくさんの山形の旅、うらやましいです。
さくらんぼ、山形舞妓さんとの出会いがあってよかったですね、見聞は広い方が良いを地で往っているようで羨ましい限りです。
それにしても写真で撮られています様に蕎麦も
肴も山盛り、それを何軒もこなすたくましさ、恐れ入りました、脱帽です。