新蕎麦には少々早い。と思いながら出かけた。暦は九月初旬。思い立ったら吉日、長旅を物ともせずまっしぐらに旅の人。この旅の自由の喜悦、そしてこの旅の自由の寂寥。
人生において不自由は、時にその寂寥感を希釈させる。自由と不自由の間に幸福感があるように思えた。寂寥感こそが人生を彩るに相応しい絵の具であるように。幸せの絵の具は自由と寂寥、不自由と共存、其れから?
白河の関、陸奥の玄関口に近い北茨城から、楽市楽座の岐阜への道中、余りの長さに脳に魔物が現れる。妄想や夢想、来し方行く末・・・
金華山を右手に仰ぎ、長良川を忠節橋で渡る。間もなくと思う。岐阜の中心市街地から少し離れた場所に来た。住宅街である。看板一つ無し。通行人に二度も尋ねたが、判然とせず、右往左往。迷いながら、漸く見つけた其れらしきモノ。
その名も「胡蝶庵 仙波」
門をくぐり玄関を入ると、思わず身震いするように自分が変わる。打ち水をした庭の踏み石と上がり框におもてなしの心配りがある。心を静め落ち着かせるには十分の雰囲気がある。
聖域に足を踏み入れた感覚が満ちてくる。
禅寺のように簡素で無駄の無い部屋。装飾を排除し、座卓と座布団と明かりのみのシンプルさ。店主の蕎麦に対する思いが伝わってくる。
姿の見えぬ蕎麦店主と言葉の無い対話が生まれる。問わず語りに。蕎麦の産地や品種、製粉方法や打ち方などの言葉は無用に感じた。
さらに、注文を聞きに来る女性は、皆が髪を短くキリリ。衣服は白シャツと黒いパンツ。無駄の無い動きと会話と表情は寺の修業僧の如く。益々、蕎麦への期待が高まる。
注文し、最初に出された蕎麦寿司。海苔との相性がよく、色合いの美しさはこの上なし。北海道の匠庵が記憶に蘇った。
ざる蕎麦は一枚が945円。量が少なめの盛りである。二枚で1690円。田舎蕎麦との二種組み合わせでも可。蕎麦切りは誠に風味絶佳。細打ちは見目麗しく咽喉に余韻、田舎は骨太の味わい。秀逸。
おもてなしは、主人の裏(本音)を見せることか。客を迎える心や良し。満ち足りて、今宵の幽玄の世界、鵜飼の長良河畔へ向かった。
〜 宵待庵 〜
■住所岐阜県岐阜市日光町3丁目26番地■電話058-232-6776■営業時間11:00〜15:00(売り切れ御免)■定休日月■アクセス東海道本線岐阜駅よりバス20分/名鉄岐阜駅から2,840m■十歳以下入店不可/店内禁煙
久しぶりの宵待庵節に、酔いしれました。
やっぱり素敵ですねぇ〜〜っ。
それにしても、
田舎蕎麦の粗挽き具合が美味しそうで、美味しそうで
写真をみて食べたくなってしまいました。
すばらしいです、きれいな繊細な細打ち 太い田舎の粗挽き あ〜 食べてみたい・・・
甘皮も見える超粗挽き・・・
ん〜 食べてみたい、打ってみたい・・・
興味津々 様
コメント有難うございます。
細打ちも田舎も、その味を堪能しました。
あちら方面があれば、是非ともお寄り下さい。
食は味覚、嗅覚だけでないことが実感できます。
次は、信州の蕎麦か、出雲の蕎麦を楽しみたい。
ターゲットの蕎麦店は決めているのですが・・・。
気まぐれで、どうなるか・・・。
冬支度に追われている宵待庵。今宵はコレにて御免。