しばらくぶりに伺った。昨年の建て替え後、初めての訪問である。まったくの更地にしてからだったから、改築でなく新築なのだけれど、「前と同じ!」だった。
もぅ建て替えて1年にもなろうという今頃になって、比べるのもナンだが、2008年4月の写真があったので、同じようなアングルでこの度撮ったのものと、ちょっと比べてみた。
うぅ〜ん、やっぱり同じ。外壁は、真っ白になったなぁ〜
私の記憶では、店内の簾の位置まで、同じ。どうも何だかこちらのお店の事を、石臼の会ブログには、まだ書いていなかったようなので、あれこれちらチラッと。
創業は、大正2年。「藪」の創始者堀田七兵衛さんの三男堀田勝三さんが開いた店で、2代目堀田平七郎さん(「江戸そば一筋」柴田書店/「そばや今昔」中公新書、あぁ〜それから下に書く「美味しんぼ」大木屋主人のモデル)→現在の当主3代目堀田浩二さんと続く、よく皆が言うところの「藪御三家」の一つだ。
※「藪」グループに興味のある方は、江戸ソバリエを統括するほしひかるさんの「ほしひかるの蕎麦談義」江戸蕎麦めぐりB「藪伝説」が詳しいので、是非そちらを読んでほしい。
■■蕎麦前
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実は…、そのぉ…本当のことを言うと…並木藪に到着時、大層な行列があったので、我慢しきれずに…えぇとぉ…
蕎麦前第一弾は、すぐ先の「駒形どぜう」で、少しばかり…「どぜう」と「クジラ」をやっつけてから、並木藪の蕎麦で〆ようということで…再び移動してきた訳でありましてぇ。
「どぜう鍋」
ねぎたっぷりのコレが、美味しいんだなぁ〜♪
あぁ〜そして、
天麩羅¥1300.-
粋だねぇ。芝海老を筏に、つまみ揚げですよ。こうこなくっちゃ。見えますかねぇ?右の海苔の下には、1本ずつ花を咲かせてあげる棒揚げもあるんですよぉ。豪勢じゃぁ〜ないですか、ねえっ。日本酒は定番の、菊正宗。
■■蕎麦
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かけそば¥700.-
ざるそば¥700.-
どちらの蕎麦も、いくつかの産地の国産ソバ粉をブレンドし、卵水を加えて丁寧な木鉢仕事をし、江戸前の細打ちに製麺機で仕立てている。つまり、手捏ねの機械打ち。
■■蕎麦汁
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私が東京の蕎麦屋全店の汁を比べてみたわけではないので、絶対本当かどうか責任はもてないのだけれど、東京一辛い汁(=醤油の濃い、強い汁)を出していると言われている。藪蕎麦の特徴の一つに、“蕎麦にちょっとだけつけて食べる為の辛い汁”があげられるけれど、その中でも一番辛いというわけだ。ただでも醤油の濃い東京の汁だから、その中で一番辛いということで、つまりだから、日本一辛い蕎麦汁という人が、よくいる。
この日本一…ということで、漫画「美味しんぼ」第2巻第3話「そばツユの深味」にも登場する。
〜 あらすじ
銀座で無許可営業をする屋台の蕎麦屋が、主人公山岡の「汁がダメ」の言葉で、「並木藪」がモデルとされる「大木屋」で、(漫画にでてくる店の外観は「並木藪」そのものだし、亭主も面長な2代目に似ていた)、汁の作り方を見せてもらい、汁つくりに邁進する。〜
という話。
よぉ〜く取材しているであろう、この漫画だから、「美味しんぼ」の「大木屋」の汁の作り方を(朝日新聞のマリオン「並木藪」記事に載っていた汁の作り方も)参考にすると、だいたいわかったような気になるところだが、実は、さに非ず。老舗の蕎麦汁の奥義は、「やっぱり、素人には再現できないだろうな!」ということが、はっきりするだけのようにも。
でも一応、「どんな?」かというと。
1. 土に半分埋めた甕に、醤油を入れる。
そこへ、湯の中に砂糖を入れてよく溶かしたものを合わせる。
これに蓋をして3週間寝かせる。→「かえし」の完成
2. 厚削りの本枯節を90分間ほど煮る。
めやすとして、7升の水が3升になるまで煮詰める。
良く煮詰まったら、出汁を濾す。
3. 2.の熱い出汁に、3週間寝かせた1.の「かえし」を加え、更に味醂を加え、それを煮立たせないようにじっくりと温める。
4. 3.でできあがったものを、土たんぽに移し24時間保温する。更に、土たんぽごと、45分ほど湯煎する。
5. 土たんぽを湯煎から取り出し、笊で蓋にして、再び24時間寝かせる。
と、まぁ〜こんな感じである。
簡単に言って、“「かえし」を作って「出汁」と合わせて、寝かせる”のは、皆知っていることだけれど、出汁取りも簡単ではないし、一言に煮るだの温めるだの保温だの言ったって、温度管理のコツもあろうし、「寝かせる」という中に、“天使の仕事”の部分も含めて、素人が手を出せな間合いというか、伝承してきた技の部分が多く隠れているのではないだろうか。だから、たとえ使っている醤油や味醂のメーカーや銘柄が分かったところで、本枯節を同じかつぶし屋さんで同じ調合で買ってきたところで、「並木藪」の汁を再現するのは、なかなか難しいということになろうかと。
まぁだからそんな、素人の為になのか?何かの参考になるように?かどうか?分からないけれど、藪睦会の汁のレシピは、ここにある。このレシピを並木藪が、監修している可能性も低いし、「藪蕎麦」といっても、お店によって汁の味もそれぞれなので、このレシピでの割合や方法で作っている藪系の店が何件あるかもわからない。というか、家で蕎麦を食べたい消費者の為のレシピである。
話のタネに載せたというところで、ご容赦願いただければ幸いである。
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