秋葉原で可及的速やかに、家電をゲットするべく見て回り、足が棒のようになった。喧騒の電気街から、直ぐそばのオアシス神田「まつや」へしばし退避。
■■蕎麦前
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席につくなり「とりあえず、ビールお願いします」と横で言う。家電の比較検討の為に頭をクールダウンさせようという時に、何故アルコールを摂取しようとするのか、「おい!おい!」と。と、強く言おう。と思ったのに、日差しの強さに喉もカラカラで、迂闊にもついサラッと聞き流してしまった。それに、荷物持ち要員としてフューチャーしている若者たちは、何故か皆「ジュース」をご所望! 必ずしもアルコールを欲していなかった私でも、「蕎麦前にジュース?!!なの?」「キモッ」と、チラッと思ったからぁ、致し方なく!どぉ〜しても仕方なく!不本意ならがも、よぉ〜く冷えたビールである。人数分の蕎麦味噌にも、にんまり。
まぁ〜それから、“ジュース”を所望の彼らに運ばれてきた“バヤリース”を見て、ほんわかと懐かしぃ〜〜っ気持ちになったりも。
玉子焼き650円は、 要予約!繁忙時間帯などは、予約を受けてもらえない時もあるので、状況を電話で相談してみる必要もある。何故かといえば、フライパンの友達のような、私たち素人にも馴染みの四角い玉子焼き器に、溶いた玉子液を流し込んで巻きながら焼く、所謂玉子焼きとは焼き方が少しばかり違っていて、こちらは「まつや」特注の蓋付き小判型の焼型で、1個ずつキッチリと上下から熱を加え焼き上げる、つまり慶安元年から続く王子「扇屋」の釜焼玉子焼きの原理か、ダッチオーブン料理の原理か、或いは個別に焼く鯛焼きか…のように360度加熱で焼き上げる、時間やコツ、手間のかかるものなのだ。
だからつまり店としては、この玉子焼きを客にどんどん注文されると、厨房がてんてこ舞い…ということで、品書きにも載せていないし、予約なしには食べられないことになっている。
ずっと以前大旦那が「ごく普通ですよ。そんなに期待するようなものでもないですからね。」「ね。そんな訳でねぇ。」(暗に、「分かったね。忙しいときは…ね。」と念を押されて、注文に予防線をはっているようなぁ、)ちょっと困ったように笑って言っていたことを思い出す。つまりそういう品書きなのだ。今回の場合、私が家電の型番や仕様を一生懸命チェックしている時、我が家の筆頭飲頭が柱の陰でこっそりと電話をしていたのは、この玉子焼き為だったのだ。

どうでしょ、見た目は、「クレ〜ム・ブリュレ」ざんしょ?うっすらと焼き色の入った外側端っこはカリッと固く、内側はふっくらで、甘みのある江戸前の玉子焼き。熱の入り具合が絶妙!これぞ職人技。好〜い景色ですよね。
また、写真右上の天種を注文すると、宇宙一素晴らしい花番さんが、「海老は、人数分にしましょうか」と、気を利かせてくれる。

焼き鳥¥750.-「塩」
焼き鳥各¥750.-「タレ」
■■蕎麦
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カレー南ばん ¥950.-
とろみのある蕎麦屋定番のカレーは、辛汁由来のコクのある旨みと、カレーのまろやかな辛さが相まっており、癖になる美味しさだ。とりわけ、「まつや」のカレー南ばんは、格別。たった今、火の上にあった鍋から器へ入りましたぁっ!!という感じの熱々を「フゥ〜ハァ〜 フゥ〜ハァ〜」言いながら食べるのが醍醐味。
若者たちが、大急ぎで蕎麦を手繰り、ふんわり柔らかに熱の入った鶏肉と長ねぎを半分ほど食べたら、残った汁の中に別に頼んでおいたライスを投入し、レンゲでガッツリと頬張る姿を見て、「あぁ〜そうそう♪それがまた美味しいんだよねぇ〜」と、なんだか懐かしく心和んだ。
遥か遥か前、今とちっとも変わらない当時のこの店で、同じようにして食べるお転婆娘の私に「行儀が悪い。これじゃ、嫁の貰い手はないなぁ…」と、呆れながらも笑っていた父の事を思い出す。

ごまそば¥750.-
「まつや」の少し辛めでしっかり出汁の効いた辛汁と、加えられている香ばしいゴマの濃度のバランスが素晴らしい、大好きな品書き。手繰った後のこれで蕎麦湯を味わうと、こっくりとしたゴマの風味が、辛汁だけの時とはまた違って楽しく、ちょっと得した気分になる。

もりそば¥600.-
あれこれ能書きを垂れるのは、あまり意味のないことだなぁ〜、と実感させられる東京下町の蕎麦。
■住所東京都千代田区神田須田町1-13■電話03-3251-1556■営業時間 月〜金 11:00〜20:00 (L.O. 19:45)/土・祝 11:00〜19:00 (L.O. 18:45)■アクセス?云わずと知れた? 都営新宿線小川町・東京メトロ丸の内線・淡路町下車徒歩2分/ JR・東京メトロ日比谷線秋葉原・東京メトロ銀座線神田 下車 神田須田町交差点方面へ 交差点から徒歩1分