新蕎麦の頃、予てより行きたいと思っていた「三合庵」へ、野暮用のついでに足を延ばした。生成りの暖簾、細く奥まった入り口に期待が高まる。椅子席が20程度であろうか、こざっぱりと小さな店は、平日の昼下がり満席であった。待つこと暫し、厨房の直ぐ脇の席に通される。連れ合いは、落ち着かない場所にやや不満顔であったが、何を隠そう初訪問でこの席は超ラッキー。若い釜前の仕事が良く見える。厨房3名と花番2名のやりとりもステレオ放送の如し。
■蕎麦前雑多な用事を済ませた気忙しい気持ちを切り替えようと、さてさて、まずは蕎麦前。(理由は、なんでも後から付けて・・・平日の昼間っから・・・あっ〜極楽極楽♪)品書きには飲み飽きしない新潟の純米酒が並んでいた。この日いただいたのは、「参乃越州」特別純米1合1000円、「米百表」純米1合900円、「雪譜」純米1合1000円。この順序が正しかったように思う。
「参乃越州」は、純米ではあるけれど、その軽やかな飲み口がさっぱりとTHIS IS NIIGATA!!いかにも「朝日山」や「久保田」を醸す朝日酒造という感じで、最初の酒にぴったり。「米百表」も端麗なキレを残しつつ米の旨味を感じさせる、これぞ長岡の旨酒だった。そして最後に一番重どっしり(軟水仕込みの新潟の酒だから、どっしりという表現は向かないかもしれないけれど、3種類のなかでは取り合えず一番重かった)「雪譜」。あの「鶴齢」の青木酒造が南魚沼産の五百万石100%を60%磨いて作った酷と深みのバランスのとれた酒のはずだが、ひょっとして店での保管が悪かったか・・・ちょっとヒネ香が・・・。3種類のお酒の為に、盃を換えてくれないのも、少し残念。
肴に頼んだのが「しんとう菜のお浸し」730円。よ〜く冷えた器とお出汁の効いたしんとうが、心地よかった。「にしん」730円は、期待が大きすぎたので・・・評価が辛くなって△かなぁ。一番嬉しかったのが「玉子焼」680円。予め1人前を2枚のお皿に分けて出してくれる心配り。江戸前とは、まったく違った甘味抑え目お出汁たっぷりの味付け、外側をやや焦がし気味にパリっと仕上げ、中はあくまでトロトロジューシーな半熟。思わず「旨っ!」と声を上げる。「わさび芋」680円も日本酒にぴたり。
■蕎麦辛汁が2種類(“辛い汁”と“普通の汁”)あると聞き、「せいろ」730円を2枚頼んだ。“辛い汁”は半生返しか、醤油の角を残した強い印象の辛汁だ。“普通の汁”も、甘さを抑えたさっぱり系で、本枯れ鰹節の香りがひっそりと香るくらいで、醤油の味が前面にでている。こちらは本返しだろう。
麺は、外一の中細打ち、やや粗引きで玄ソバの色が強めに残るワイルド系。ザルの形状を見込んでか、水切り加減は少し甘め。(※2006年8月に蕎麦侍さまが訪問した目黒「織田」のザルほどではないにしろ、ここ「三合庵」のザルも特製?中央の部分が盛り上がっている。麺の水切りの為か、盛り付けの見栄えの為か。池之端「藪」では、昔からザルをひっくりかえして使い、この効用をとっくに手に入れているが、特製ザルは最近の流行であろうか。)そして、茹で加減は少し固めに感じる。
2種類の辛汁を比べ、甘汁も味わいたくなった。調子に乗って、柚子 三つ葉 天かす そして白髪ねぎいっぱいの「きざみねぎ蕎麦」940円を追加注文。関西のうどんのお汁を思わせる淡い色の甘汁だ。麺も活きている。やれやれこの店は、何種類もの醤油を使っているぞぉ。柏「竹やぶ」で修行したと聞くマッチョな風貌の店主は、体つきからして力で蕎麦粉をねじ伏せるタイプの水回しを想像したが、同時に?!意外にも細やかな心配りで繊細な仕事をするようだ。或いはメニューに京野菜を多用しているところを見ると、配偶者がはんなりとした京都美人?で、彼女の気配りなのか?など勝手な想像が次々に沸く。
■薬味美しく刻まれた葱は、少しさらしてあり程よく冷えている。山葵。卓上の七色には青海苔も入っていた。
■蕎麦湯ちょうど釜を換えたばかりだったが、小さな雪平鍋で、別立てのトロリとした蕎麦湯を作っているところを目撃できた。追加投入している蕎麦粉の色様子まで観察。つくづく良い席を確保したものである。
■甘味「わらび餅」680円 「黒糖アイスのあずき添え」680円も食す。デザートは別腹とはいうものの、ここまで来るとメタボリックなんとやらが頭をかすめるが、口も手も止まらない。例によって、またまた「ダイエットは明日から」。
初訪問の「三合庵」。すっきりさっぱり後味爽やか。甘さや塩分が控えめで、出汁をしっかりひいていることに好感が持てたが、全体として味が若い。場所柄か値段の設定も、量や内容に比べやや高めにも感じる。本日のお勘定2人で約10000円。財布は軽くなったが、心も晴れやかな秋の昼下がりを満喫ぅ。
いつも有難うございます。
駄文に過分なお言葉<m(__)m>恐縮です。
機会が巡って、生粉打ちをご指導いただける日を楽しみにしています。
万人に喜ばれるのでしょうか?
わざわざ手を加えてくれる、心配りも嬉しいし。
あんまり薄いと、確かにガクっときますよね。
たけじんさまの「おお野」の記事を楽しみにしています。
いつもありがとうございます。
奥様の作る器で、自作の美味しいをお蕎麦召し上がっていることと思います。
年越し蕎麦も、どうぞよろしくご指導ください。