するとなんと、予想に大きく反して! まず店の駐車場に、小さな子供を乗せる椅子を装備した自転車が、何台も何代もズラリと停まっており、ママ友ランチを楽しむ若い笑い声が、漏れ聞こえてくるではないか。幼稚園児PTAの集まりだろうか、この団体の平均年齢の若さに、ここは流行りのケーキ屋か?と。
少し戸惑いつつも暖簾を押すと、ゆったりとしたスペースが大盛況。
声の主たちは、小上がりに陣取っていたし、広々と気持ちの良い庭に面したテーブル席では、いぶし銀の1人客がそれぞれに、本を読みながら蕎麦前をチビチビやっている。おぉ〜〜なんとも気持ちが良さそうだ。
そうか、皆さん思い思いにのんびりと過ごしているから、ランチピーク時間も長いのだな。
さて…と、品書きやらなにやらを見まわす。するといきなり、「普通のお蕎麦を是非、一度ご賞味ください。」と書いてある。お店からこの突然の「普通」宣言に、最初は「普通ってなんだろう?」となった。しかし、良く読むと「昔ながらの材料と気持ちで、……本当に良い材料を使い、最高で美味しい普通のお蕎麦を、是非一度ご賞味ください。」とあった。ほぉ〜そういうことか。奇を衒ったものではない、ということで「普通」と表現しているようだ。
若い店主さんは、主に立会川「吉田家」、そして銀座「明月庵 田中屋」でも、通算すれば20年程も修業をした後、こちら妙典「さくらそば」を開業したという。駐車場の看板にも、鰹節の事を書いている位だから、店主の言う「普通」がとても楽しみだ。
■■限定蕎麦御膳
■■蕎麦は「せいろ」と「かけ」を選べる。天ぷら、茶碗蒸し、かぼちゃと里芋の煮物、お新香、デザート、そして珈琲か紅茶が付いて、1500円。
蕎麦は、少しモチモチ感のある二八。釜前の仕事、水切り具合は、職人のソレで、昨日や今日蕎麦を打ち始めた者にはできない安定感。天ぷらは、所謂蕎麦屋さんの天ぷらの感じではない、立会川「吉田屋」の流れか。
デザートも嬉しいし、珈琲も美味しい
他の品書きは、二八せいろ700円、かけ700円、天せいろ1500円、お新香300円だから、この煮物や茶碗蒸し、更にはデザートの付く限定蕎麦御膳は、とんでもなくコストパフォーマンスが良いのでは?
蕎麦湯は、完全ナチュラル系。汁徳利がなく、蕎麦猪口に予め辛汁が注がれて供されるのだが、私の場合大量に辛汁が余ってしまった。だから、空の蕎麦猪口を新しく一つ運んでもらうか迷ったけれど、茶碗蒸しの空いた器で蕎麦湯を楽しんだ。供する辛汁の量は、お店のほうでも悩ましいところだろう。
■■文化交流の場に…
■■「普通」の蕎麦を標榜するこちらのお店は、普通に「蕎麦だけ」のお店じゃないことを目指している。いろいろな文化交流の場にしたいという意欲的な店主さんと話していると、その事がじんわりと感じ取れる。お店の名前は、あの「サクラ大戦」に因んだということで、インテリアのテーマは大正ロマン風である。この冒険活劇的空想空間の中で、歌謡、演劇、オカルト、ロボット、更にはゲーム性も加えた幅広い要素を、ぐわぁ〜んと融合した万華鏡的な面白さを、蕎麦屋という空間運営にも、なんとか持ち込もうとしているようだ。
面白そうっ!
個性豊な蕎麦屋さんの奮闘を、陰ながら応援したい。
窓辺に飾られた飛び出す絵本の数々
店主さんは「遠慮なくどうぞ、開いてみても良いですよ」と。背表紙から察すると、新旧あるもののやっぱりファンタジー物が多い…。蕎麦関連本は、右端に数冊…みえる。
■住所千葉県市川市塩焼1-4-27■電話047-397-7717■営業時間11:00〜14:30/17:00〜20:30■定休日水■アクセス東京メトロ東西線 妙典駅 南口徒歩6分 /駐車場3台有り