かくして集まった場所は、江戸ソバリエの秘密蕎麦打ち基地「愚直庵」である。
■■愚直庵とは?
■■愚直庵とは、江戸ソバリエ仲間のIさまが、とある場所に開設した蕎麦打ちサロンである。
そこは、「一見さんお断り」仲間うちを対象としたサロンであることから、江戸ソバリエの蕎麦打ち場・教室などを紹介しているこのブログの当該ページには、庵主の要望もあり載せていない。
某駅から365歩(※庵主の脚の長さで。私の場合なら三百八十・・・えぇ〜い、どうせ私は脚が短いわい。)の愚直庵では日頃、吟味されたソバ粉は勿論のこと、庵主自身で作り上げた組立可動式の蕎麦打ち台や、出来上がった麺を茹でるのに使いやすい大鍋、大きな熱量のコンロ 鉢 麺棒など蕎麦打ち道具一式が全て揃っており、エプロンなど身支度さえ整えば手ぶらで行って蕎麦打ちを楽しむことができる。試食スペースである奥の和室には、あれこれ蕎麦前の持ち込みもOKとのことで、庵主Iさまは勿論、素敵な奥さまのお人柄も相まって、ゆっくり寛げる蕎麦三昧の為の素敵なサロンだ。
門前に愚直庵の看板は掛かっていない。
■■基本の教科書に載らない蕎麦打ち
■■今日の蕎麦切りは、3種。どれも美しい細打ち。
1.本日のメインイベント。○○ソバ ワイルド挽き
○○ソバは、奇跡のような事がいくつか重なり、ある場所で限定的に作られた種だ。その筋の方々に逸話は知られているけれど、玄ソバは勿論、粉も関係外部になかなか出てこないらしく、身近に「食べた」という人を知らない。
この状況下、秘密のルートで?今回入手された○○ソバの粉は、おそらく外皮も全部一緒に挽きこんでから篩ったもので、外皮がかなり残って、相当にゴワゴワざらざらしていた。粗い部分と細かな部分のバランスが微妙な上に少し乾き気味。割り粉を多めに入れることを想定して製粉したものだろうか。これを、あのT名人に十割で打ってもらうのだ。贅沢ぅ〜〜〜っ。
T名人が初見の超稀少種ワイルド挽きのこの粉に、どうやってアプローチするのか、見逃してはならない。丁寧な粉の扱い、水回しのなめらかさ、力みのない捏ねに、何だか自由自在ですねぇ凄いですねぇ〜♪と、見入っていたら、写真を撮ることをすっかり忘れた。覚えの悪い頭の中に、なんとか整理して記憶しておかねば。
2.埼玉三芳産 常陸秋ソバ種 無篩超粗挽き
石臼の会きっての変り蕎麦の名手Hさまは、最近は無篩超粗挽き十割に嵌っているようだ。今回も「じゃぁ〜まず、前座が打ちますかぁ」なぁ〜んて笑って、最初に打ち始めたけれど、その方法は後に見たT名人の丁寧で美しい蕎麦打ちとも共通点があった。
考え方として、なかなか水の入っていかない超粗い部分にきちんと水をまわす工夫をする。その後、他の部分と水分を均一化させる為に粉をなだめ賺す・・・叱咤激励・・・液状化を喚起(そんな言葉あるか?)・・・凡そソバ打ちに似つかわしくない変な言葉なのだけれどぉ〜なんと言うのかぁ〜うまく言葉にできない。過日行った超粗挽き無篩10割&掻き揚体験会@小岩「蕪村居」での蕎麦打ち方法とも、似ている部分がアレコレある。
私たち素人向けの基本的な教科書には載っていないいろいろな方法や考え方がある蕎麦打ちって、やっぱり本当に面白い。
3.愚直庵御用達 常陸秋ソバ
私たちの到着前に、愚直庵御用達のソバ粉で庵主が打っておいてくださった。打つところは見られなかったが、舟に入った美しくたおやかな細切りの麺を見て、うっとり。手繰るのが楽しみ。
■■蕎麦前
■■特別に、秘密基地内 囲炉裏設えの部屋へお邪魔した。ここでの炭火焼き蕎麦前は、本当に美味しい〜〜っ。し・あ・わ・せぇ♪口福♪
卵がギッシリ子持ち鮎 & そら豆
その他にも、烏賊天ぷら 烏賊バター焼き 烏賊一夜干し、山葵の醤油漬け、かまぼこの温泉玉子掛け、産地の違う筍2種、豚さっぱり煮粒マスタード添え、大根煮物、蕗、などなどいろいろ。お酒もビールから始まって、いろいろぉ〜多種。
■■いよいよ蕎麦を手繰る
■■Hさまが取り分けておいた埼玉三芳産 常陸秋ソバ種超粗挽きで、庵主の奥さまが蕎麦掻を作ってくださった。軟らかく掻いたそれは、細やかで優しくふっくらとした出来上がり。いつもHさんが掻く埼玉三芳産 常陸秋ソバ種の蕎麦掻と、明らかに違うできあがり。同じ粉で、こんなに違いができるとは!面白い。蕎麦掻も奥が深いなぁ〜。
○○ソバ
香りがとても強く個性的。
打つのも見るからに難しそうだったけれど、ほんの僅かな茹で時間の違いで、優劣がグッとでたので、釜前泣かせでもある難しい粉のようだ。T名人の技で、細打ちにした外見は美しいけれど、外皮が舌触りに存在を強く訴えるし、主張の強い香りと相まってワイルドな強面の印象が残る。思わずBorn to be wild〜♪って、歌ったりなんかして。
埼玉三芳産 常陸秋ソバ種 無篩超粗挽き細打ち
打ち手のHさんが「まぁ〜なんとか繋がってるよぉ〜」と照れながら運ぶと、皆に「おぉ〜♪」と拍手を持って迎えられる。綺麗な細打ちの中に粒粒がギッシリ。風味が濃い。時々、石臼の会蕎麦打ち会でHさんが打つ埼玉三芳産と、ついつい比べる。粉のコンディションは直前に丸抜きを石臼で挽くほうが、やはり香り高くて良いかも・・・と密かに思ってもみたり。
愚直庵御用達 常陸秋ソバ
間違いなく、美しくのど越しの良い、私たちに馴染みの美味しい蕎麦。毎日でも手繰りたくなる優しさに気持ちがホッとするし、背筋をすっと伸ばした庵主さまや奥さまが、この上質感をまるで当たり前のように供し続けることにも、心よりの敬意を抱く。奥さまの作る辛汁も、優しく円やか。
これらを、蕎麦だけで手繰ったり、辛汁にちょんと付けたり。
また、嗜好を凝らした変り汁「雲丹と卵のソース」「クリーム花巻」「イタリアン・バジルオイル」などを付けたり、それはそれは贅沢な蕎麦探訪を繰り広げた。
■■蕎麦後
■■
これだけ食べて飲んで・・・それでも・・・甘いものは別腹。お腹がいっぱいのハズなれど、何故かパクパクっと、不思議。大満足。
愚直庵主さま 奥さま 始め、ご指導くださり、無理な事をなんとか楽しく実現しようとお骨折りくださった皆さま、有難うございました。