2011年11月30日

宵待庵 閑日記 2011.11.29

  来客があった。

24日、蕎麦打ちの最中、水回しを終えたところである。外へ出、挨拶もそこそこにし、また中に戻り蕎麦を捏ね始めた。客は入ってきて、「もうはじめているんですか?」と11時15分頃のことであった。


 

  お客は『興味津々』さん。ええ、やってます。と応えて汗を拭き拭きの捏ね、括り、延し、切りを終え、船に入れた。北海道幌加内産の十割り蕎麦。それぞれのポイントで、技量の足りない点や腑に落ちない点の教えを請うた。


  次に、興味津々さんの模範演技、実技指導を願った。栃木産の生粉打ち。その前に持ち込まれた自作の手作り木鉢を拝見する。二尺のどっしりとした存在感のある鉢。ノミで彫った後、彫刻刀で亀甲型の凹凸を丁寧にきめ細かく刻み、漆で仕上た逸品である。一年半の労作である。



  この逸品に栃木産の蕎麦粉、一kgを入れ、いよいよ蕎麦打ち開始。流れるような手の動き、一粒一粒に水を行き渡らせ、淀みなく舞うごとく粉が鉢の中を動き回る。



 

  次第に緑色が濃くなり、香りが立ち、粒が大きく成長していく。木鉢の亀甲紋が粒を転がし、くっつけ育てているようにも見える。景色の良いことこの上なし。印象派の絵を見る如し。深い木鉢の底から現れては消え、消えては光を浴び、姿を変えてその輪郭をはっきりと形成してゆく。やがて、眩しいばかりの玉が鉢の中央に輝きを放つ。



 

  延し棒は滑らかに滑り、力具合は変幻自在にピアニシモ、フォルテシモ。1,5ミリが精一杯で、1,2ミリは至難の業といえば、「太い、0,9ミリ」と非情の一喝。その0,9ミリが、手元の柄が無い蕎麦包丁、1キロの業物で刻まれる。体験的に20本ほど切らせてもらったが、「うーん」しかない。


  船に入れる際の蕎麦の扱いは、これまた丁寧で、蕎麦にストレスを与えない。繊細で優しく、大胆ですばやく、慣れた手つきですばやく片付けていく。釜前の作業も、余計なものはなく無駄を省き、必要十分条件である。茹で上げ、洗い、氷水でしめる。


 

  後はこちらの出番である。まず連れ合いが、そして私が蕎麦をすする。生のままで食う。切りそろえた細切り蕎麦の優しい口当たり、すべるように喉の奥へ。しかも、ネチットしたところが全くない、歯切れのよい、潔い歯ざわり。直線的。これが「コシ」というもの。十割りのモソモソがない。洗練された美しい蕎麦。



  興味津々さん持参の辛味大根で食べる味。『運命』の響きが脳髄を突き抜ける。御持参の汁は辛くもなく、甘くもなく。いや、僅かに辛いか。一枚のざるは、瞬く間に胃の腑に納まる。交響曲が終わった後の静けさと余韻。酔いしれた感性はアンコールを要求していた。


 

  仕上は、飛びっきりの蕎麦がき。どうぞこれは、他人に教えないでください。秘伝にしてください。秘密の味を皮切りに、窓辺で見る蛍の舞い、囀りで目を覚ます朝、山菜、茸など自然の恵、何よりも蕎麦に係る道具について問わず語りに時が過ぎ、17時を過ぎ、初冬の一日は暮れた。宵待庵の充実したひと時であった。感謝。



posted by 奥久慈山荘 宵待庵 〜



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posted by 石臼の会会員 at 18:51| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | ■「手学」蕎麦打ち&畑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ただいま、蕎麦屋の準備中。
それに加えて蕎麦も打っている毎日です。
興味津々さん、越後湯沢にも遊びに来てくれないかなあ。蕎麦を打つところ見て見たいですねえ。
Posted by iwana at 2011年12月02日 08:00
宵待庵さまの記事も、いつもとても楽しみです。
「待ってましたっ!」と、思わず声に出してしまう程です。


宵待庵さまの蕎麦も、興味津々さまの蕎麦も
それぞれ美味しかった♪のだろうなぁ〜と、情景を想像しながら読みました。。
産地の食べ比べ、打ち手がかわっての味比べ、本当に楽しそう。
これは、2人蕎麦打ち会ですね。

そして、
飛びきりの蕎麦がき。
ここだけの話でいいので、内緒で教えてほしいです。
あっ、ブログに載せたら、秘伝になりませんね。(^^ゞ



iwanaさま
今シーズンも、「道楽そば」蕎麦屋再開ですか?
積雪情報を↓ここで見て、そろそろかなぁ〜12/17オープン?と思っていました。
http://www.e-yuzawa.gr.jp/ski/snow.php
いろいろと準備に大忙しの事と思います。
お体を大切に頑張ってください。
Posted by 笑門来福 at 2011年12月02日 09:18
 当日の二人の話題にIWANA様も登場しました。
関心を抱き、興味を持ちました。
スキー場の蕎麦は、熱と冷のどちらでしょうか?

 興味津々様の蕎麦への執着、こよなく愛する心は見上げたもの。
笑門来福様も負けず劣らず。
いい勝負していますね。

  今宵はナイトスヤター。これにて御免。
Posted by 宵待庵 at 2011年12月02日 21:41
宵待庵さま
先日は 木鉢 そば打ち そば談義 楽しいひと時 ありがとうございました。
また 頂いた自家製そば粉 宵待庵さまの 種蒔き 刈り取り 脱穀などの農作業が 思い浮かびます。
そば打ちも ただのそば打ちと違い何か 力が入ります。
また たくさんの野菜ありがとうございました。
白菜 大根など たっぷり漬物で楽しんでおります。
また 来年 遊びに行っても よろしいでしょうか?。


iwanaさま
今年そば屋開店ですか?
これからの スキーシーズン中 開店ですね? 頑張ってください。
また いつか そば談義しましょう。長岡 十日町 新潟方面に行った時などは連絡します。


笑門来福さま
いつも お世話になります。
いつも 連絡ありがとうございます。ブログいつも楽しみにしてます。
ブログ見てくださった方 必ず感想など・・・なんでもコメントくださればいいのに と思います。
風邪など ひかないように お体に気を付けてください!
では また。

Posted by 興味津々 at 2011年12月04日 04:06
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