2011年11月05日

宿根ソバ@笑門来福亭ベランダ

知識としての「宿根ソバ」の事は、過日、石臼の会ブログにチラリと書いた。手短に言えば、一年草の「普通ソバ」や「韃靼ソバ」と同じタデ科の植物であるが、「宿根ソバ」は多年草であり、冬に地上部が枯れ、春になると根茎から新しい茎を叢生してひろがるということ。半野生種であるから、結実しても収量が極端に少なく、実用栽培することは殆どない。俗称で野菜ソバと言われるように、若葉を食用とすることはある。程度のこと。

まぁ〜なかなか実が食用にはならないとは言えど、ソバ三兄弟(普通ソバ・韃靼ソバ・宿根ソバ)の仲間同士なのだから、とても興味があった。その白い花も風情があってとても美しいし、是非とも身近に育ててみたいと思っていた。


 

押し木繁殖もできる


昨冬、11月も終わろうと言う頃、駒込「玉江」のご主人から、宿根ソバの枝先を20pばかり分けて頂いた。「土に挿しておけば、根が付くから」と。「大丈夫。元気に育ちますよ」と。



しかしまぁ〜正直言って、自信がなかった。それまでの私の知識では、地上部分は、冬になると枯れてしまう“地下部分に根を残しており、春になると再び芽を出す”というものであったから、ちょうどこれから冬に向かう時、私のような下手糞が植えたのでは、根が張る前に葉が落ちて、すっかり枯れてしまうだろう、と。



何を隠そう私は、小学校に通っていた頃の息子たちが、夏休みになると学校から持ちかえる教材の植物を、何度も枯らしてしまった実績の持ち主である。今回もそうなるであろうと容易く想像できた。生意気盛りの息子たちは、いや 夫までもが、「枯らしてしまうのは可愛そうだから、貰ってこなければ良かったのに」と。そんな風だから弱気になって、枯らしてしまった場合の言い訳ばかりを考えていた。



ところが、家人の大方の予想を裏切って、植えてから3週間もすると小さな若葉が生え始めた。寒さも厳しくなってきた12月にである。どうしても普通ソバの栽培方法をまず思い浮かべてしまう私は、ソバといえば「種を蒔く」事ばかりを考えてしまうのであるが、宿根ソバは、押し木でも増やし育てる事ができるのだ。



種からの繁殖では大きく育つのに長い時間を必要とするから、この冬のささやかな経験から、むしろ挿し木によって増やす事の方が、簡便であるように感じられた。




 

冬も葉は落ちなかった


日光が燦々と降り注ぐ南側ベランダでの鉢植えだ。水の遣り過ぎにも気を付けた。(私が植物を枯らす理由が、そこにあるようで、「根腐れしている」と指摘されたことがある。)冬の東京の気温は、下がっても氷点下に落ちる事が殆どない。それが良かったのか?冬の間も葉が落ちる事がなく、スクスクと…とは言えないけれど、ジワッとほんの僅かずつではあるが葉を増やしていった。



葉をつけたまま、無事に1月末の寒波をやり過ごすと、ひょっとしてもしかしたら栽培上手?と、すっかり気を良くして、コタツの中で宿根ソバの実を摘まむ日までを妄想した。



 

強靭な生命力 その1
地震に負けず


すぐそこに春を感じるようになると、葉や茎の勢いが増してきた。育っているぞ!という感じに。



そこへ、あの3・11東日本大震災。帰宅困難者となった私が、自宅に辿り着いたのは、震災翌日の夕方。翌々日になるまで、ベランダの宿根ソバの事は、すっかり頭から抜けていた。



地震から3日後、部屋の中に散乱した食器類や本・本・本をかき分けて、ベランダに出てみると、宿根ソバを植えていた鉢は、高さ50pほどの鉄製鉢台から投げ出され、3mも先に割れて転がっていた。土が散乱し、せっかく張ってきていた根が露わになりすっかり乾燥している。葉も、しんなりと萎れ無残な姿。



直ぐに散らばった土を掻き集め、間に合わせの鉢に植え直して、水をたっぷりとやってみる。その日のうちに、冬の間にジワリと増えた葉が落ちてしまう。



しかし、その後2週間程で、若葉が生えてきたではないか。凄い生命力。繁殖力。私が栽培下手で、冬に枝先を頂いても育てられるか心配する様子に、駒込「玉江」のご主人が言ってくださった「大丈夫。元気に育ちますよ」という言葉が蘇る。ご主人は、宿根ソバのこの強さを良〜〜くご存じだったから、分けてくださったのだ。



 

強靭な生命力 その2
潮にも負けず


大きな鉢に植え直した苗は、夏の間に葉も茎も益々に生い茂り、しっかりと大きな株に育った。しかしぃ…いつまでも居座った残暑もやっと一段落しそうという頃、大型台風が日本を縦断。我が家のベランダでは、室内に退避させられない宿根ソバの大鉢と、ゴーヤ緑のカーテンが、半日強い風雨に耐える事に。



台風が去ってみると、宿根ソバの葉2割ほどの枚数が、吹き飛ばされていた。少しの被害にホッとしたのもつかの間、次の日からドンドン葉が枯れ始め、なんと3日後には、葉が全部落ちた茎だけの丸坊主姿になってしまった。あと1カ月もすれば花か?と言う頃だというのに…。(ゴーヤは、台風直後に全ての葉がチリチリになってしまったので、やむなく撤収。既にたっぷりと収穫を済ませていたので、まぁ〜諦めもつきましたけれど。)



この台風の影響で、家の周辺を囲む公園の木々も同じように葉が茶色くチリチリに縮れ落ちた。桜並木などは、まだ紅葉前で青々としていた葉が、一気に落葉後の冬のありさまだ。ありゃりゃぁ…。



庭の手入れに来ている植木屋さんによれば、これは風の被害でなく塩害だという。台風の強い風が運んだ潮の仕業だと。でもまぁ〜、3日半もカラカラに乾いた後にも復活できた生命力の強い宿根ソバであるからして、今回もきっと…大丈夫であろうと。水やりの時に「大丈夫だよぉ〜頑張ろうね」と声を掛ける事にした。



はたして!1週間ほどで、次々と新しい葉が現れる。夏の間に生い茂った葉よりも、2まわり程度小ぶりではあるが、数はアッと言う間に生えそろった。それどころか、勢い込んで?枝先に花の気配まで次々と。この生命力、本当に凄い。私も大いに勇気づけられる。





満開の花。実は結ばず?



逞しい宿根ソバの花も、可憐で清楚な白い花だ。美しい。どの種のソバの花も、その小さく愛らしい風情には、心奪われる。


宿根ソバ花.jpg


こんなに幸せな満開の時を迎えて1カ月間ほど、目を凝らして実を探すのだが、目指すソバの実が発見できない。時間の経った花は、瑞々しい白さを失ってくると、鉢の周りにパラパラと落ちており、結実に至っていないようである。栄養が足りないのだろうか。病気だろうか。またまた例によって、水が多いのだろうか。 駒込「玉江」のご主人の所から我が家に来てくれて、まだやっと一年。災害の試練の年でもあったし、結実までは気が向かないのかもしれない。まっ、いいさ。根付いてくれたことがとても嬉しいし、そのうえ来年の楽しみもくれるのだから有難い。もぅ暫くの間、可憐な花を楽しませて貰うことにしよう。来年は、結実しますように。





たけじんさんは、実を確認できている
小石川植物園宿根ソバ記事



200611月には、「石臼の会」たけじんさんが、このブログに小石川植物園で見た宿根ソバの記事を投稿している。(是非、当該記事を読んでみてください。こちらをクリック。)

その中では確かに、結実したソバの実の事に触れている。ちゃんと健康に育っているものには、きっちりと実がつく?んだ。



小石川植物園の開花予想カレンダーには、タデ科シュクコンソバの欄に9月中頃〜11月中頃まで、花の時期だとある。まさに今が花の見ごろである。



〜参考 小石川植物園 〜


住所   東京都文京区白山3-7-1

料金   大人330円,小人110

休園   月曜日

連絡先  03-3814-0138

アクセス 都営地下鉄三田線「白山駅」から徒歩10

地下鉄丸の内線「茗荷谷駅」から徒歩15





ラベル:宿根ソバ
posted by 笑門来福 at 15:49| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | ■「手学」蕎麦打ち&畑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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