− 宮城・山形の蕎麦紀行 −
8月7日,仙台に帰省した。ついでに宮城県仙台市と川崎町,隣の山形県山形市,新庄市,天童市の計5店舗の蕎麦屋に行ってきた。
出入り口 一枚目 六枚完食
店員に質問したところ「山形産と北海道の粉をブレンドしています。つなぎの割合はわかりません」とのことであった。おそらく七三程度ではないかと感じたが,いずれにしても食事の蕎麦で,蕎麦だけで満腹になることは間違いない。これまでに,20枚平らげた人がいたらしい。最後に,パンフレットはないかと尋ねたところ「マッチならありますよ」と差し出してくれた。今どき,マッチを差し出す蕎麦屋があることに驚き,さすが仙台の老舗だなあと感じた。
住 所 仙台市青葉区本町2−14−6 家福ビル2階
電 話 022−222−0565
2 8月8日(火) 宮城県柴田郡川崎町 「そば山彼方」
仙台市内から国道286号線で山形方面へ向かう途中,釜房湖・国立みちのく湖畔公園の手前の道端に「そば山彼方」(やまかた)がある。民家風の店,窓からは緑あふれる山々が見える。ここの蕎麦は,山形県産の「でわかおり」だけを使用し,石臼で挽いた細打ち,二八蕎麦の「山彼方」と国内産の蕎麦粉を殻のまま杵つき製粉した太打ち,十割の「田舎蕎麦」の二種類で,もりはすべて板そばであった。
私は,夏新そばの「山彼方」(1,050円)を頼んだ。腰もあり,のど越も良い蕎麦である。思っていたほど香りはなかったものの,蕎麦の色は鮮烈であった。汁も甘くなく,私にとってはちょうど良い味であった。
ここは,緑滴る山々の景色を見ながら,蕎麦を食することができる,都会では味わえない蕎麦屋である。
住 所 宮城県柴田郡川崎町大字支倉字滝ノ原45−1
電 話 0224−82−8550
3 8月9日(水)山形県山形市 「萬盛庵」
山形県新庄市 そば処「いせき」
山形県天童 市 手打ち「水車生そば」
山形新幹線が乗り降り自由の周遊切符を購入していたので,山形から新幹線の終点の新庄までの間を乗り降りして,蕎麦屋めぐりをすることにした。
(1) 山形市 「萬盛庵」
9時30分仙台駅発の仙山線普通列車で約1時間,山形駅へ着いた。ここの蕎麦屋は,山形で唯一の山形名産の紅花を使った「べにきり」を作ってくれる店である。「べにきり」は予約が必要であったので,電車に乗る前に,一枚分予約をしておいた。「べにきり」(900円)は,ほんのりピンク色をしており,上品で繊細な感じがする蕎麦であった。細切り,いわゆるさらしなの江戸変わり蕎麦である。
店は,和服姿の女将さんが賄いをし,こじんまりではあったが和風の中庭もあり,落ち着いた雰囲気であった。まずは,山形に来たという印象であった。(これから,過酷な旅が待っているとは思いもよらずに・・・)
住 所 山形市旅篭町1−3−21
電 話 023−622−2167
(2) 新庄市 そば処「いせき」
12時42分山形駅発新庄行きの山形新幹線に乗車した。山形板そばの代表格に上げられると言われる地元産のそば粉を使った「むかし毛利」,「うす毛利」の太打ち蕎麦を提供してくれる「あらきそば」に行こうと思い,まずは村山駅で下車したのだが,駅に降り立ってみると,一本道の向こうに山々があるという景色であり,また,バスもあと2時間半後にならないと来ないとのことであったので,ここの蕎麦屋はあきらめ,再び,13時08分新庄行き新幹線に飛び乗った。
新庄駅に降り立ったが,非常に暑い。さすが,東北の盆地である。その炎天下にもめげず,駅のレンタサイクルを借り,目的の蕎麦屋へ直行した。
新庄は,新庄藩戸沢家の城下町で,こじんまりとしているが優雅な地方都市である。新庄城は今は最上公園となっており,その公園内のふるさと歴史センターの向かいに,そば処「いせき」がある。駅から自転車で10分程度の距離である。
ここの蕎麦は,尾花沢,新庄,大蔵村,平田町などの地元の粉を自家製粉で粗挽きにしたもので,十一蕎麦である。
板そば(700円)を注文した。めんが透き通っている。噛むと甘味が増してくる。田舎蕎麦のように太くはなく,色もそれほど濃くない。汁も甘くも辛くもなくちょうど良い塩梅である。
井関恭雄店主から話を聞いた。「粉を粗挽きにし,ある程度のメッシュで振るうと甘皮はそれほど入らないので,色も濃くなく,透明感がある甘味のある蕎麦ができる。しかし,粗挽きにすると繋がりが悪くなるが,後は,水回しであろう」とのことであった。
住 所 新庄市大手町2−28
電 話 0233−22−2681
(3) 天童市 手打ち「水車生そば」
15時24分新庄発山形行きの新幹線に乗車,天童駅で下車,天童市は将棋の駒の生産地と温泉地で有名であるが,蕎麦も,江戸時代には将軍家に献上された「寒中挽抜そば」があり,「献上蕎麦の里」としても知られている。
めざす蕎麦屋は,駅からまっすぐ歩いて12分程度,温泉ホテルが立ち並ぶ手前に位置している。店頭に水車が回っているので分りやすい。
食後,帳場にいた矢崎長兵衛五代目店主(社長)から話を聞こうとしたところ,店主は店の玄関口にある大きな石臼のところまで案内し,要旨以下のように語った。
「この店は,もともと粉屋で,その時から水車で粉を挽いている。今も,大きな石臼で,地元産と北海道の契約農家の蕎麦を殻ごと挽いている。つなぎなしの十割蕎麦で,昔は太さは箸の太さほどあったが,今は少し細くしている。細くしようと思えば,いくらでも細くできるが,文久元年以来続いている江戸時代の庶民の味を守り続けている。」
また,水については「粉の状態によって,水かお湯か熱湯かをいろいろ変えているが,水だけということはない。いずれにしても,粉次第である。」
最後に,江戸ソバリエのことを話したところ「蕎麦の案内人ソバリエは山形が最初で,現在33人のソバリエが認定され,活躍しているよ。」とのことであった。
矢崎店主は,その発言等から推察するに,天童市内あるいは山形県県内の蕎麦のカリスマ的存在ではないかと思われた。(いろいろとお話を聞かせていただきありがとうございました)
以上で,8月9日の山形蕎麦紀行は終了した。
山形県には,そは街道か14街道もあるとのこと,みなさんも,ぜひ山形そば街道をめぐり歩いてみてはいかがでしょうか。
ところで「わんこそば」は,岩手県の名物です。都会にいると,山形も岩手もあまり変わらないでしょうが,地元にとってはえらい違いです。 まぁ,どちらにしても,蕎麦の産地には変わりありませんが・・・。
「わんこそば」は,岩手の郷土で育まれた蕎麦の食べ方であり,それなりの理由があってのことだろうと思います。
ぜひ一度,岩手に行かれて,本場の「わんこそば」を食べてきてはいかがでしょうか。