奇数月第2木曜日恒例の「越後屋寄席」に行ってきた。
今回で135回目だ。
ーこの日の変わり蕎麦ー
「胡麻切り蕎麦」 写真で分かっていただけるだろうか、繊細な細打ちながら、黒胡麻の黒が強く印象にのこる風貌。濃厚な胡麻の旨味がギュギュ〜〜っと、更科粉に煉り込められている。これは主張する変わり蕎麦だ。江戸前の強い蕎麦汁ともよく合う。
この会では、いかにも落語会主催者らしい洒脱な店主の蕎麦解説がある。胡麻をすり鉢であたって煉り込む際、胡麻粒子が大きければ大きいほど蕎麦が繋がりにくい。特に最近だんだん蕎麦打ちが下手糞になって、今日のはちょっと・・・繋がっていないと笑う。前回も似たような話だったがなどと思いながらも、つられて笑う。しかし、いやいやどうして、若輩者が言うのは生意気だが、店主はどんどん益々老練な旨い蕎麦を打つようになっていると感じる。
ーこの日の落語ー
生ねん 「狸の鯉」
困っていた狸を助けてやった男のもとへ、狸が恩返しにやってくる。お役に立ちたいから家に置いてくれという。そこで男は、狸を鯉に化けさせ“お祝い”の品として親方の家へ持っていった。親方のところの池なんぞで飼ってくれるのならよかったのだが、お乳の出が悪い女房の為に“鯉こく”に料理されそうになり、慌ててまな板の上から逃走。窓から積んだ薪を伝わって逃げたので「あれが鯉の薪(=滝)のぼりです」となる。
生ねんは、ここのところNHK BSに出演していたそうだ。毎回の越後屋寄席でも成長を感じるし、彼の良く通る声は噺家としても美点に思える。
柳家甚語楼 「試し酒」
主人と客が“酒のみ談義”をして、客人の供の者の飲みっぷりで賭けをすることに。もし5升の酒をみごと飲み乾すことができたら、主人が客人の供の者に小遣いをやるという。供の者が酒をご馳走になった上小遣いまで、それではというので、飲めなかった場合は、客人が主人を宴席に招待することとなった。それを聞いた供の者は、「ちょっくら待ってもらいてえ。おら、少しべえ考えるだよ」と、表へ出ていったまま帰らない。自信がなく逃げたかと思われたが、戻った供の者は「ちょうだいすますべえ」と言って、5升をペロリと平らげた。すっかり感服した主人は、約束通り小遣いをやったが、大酒を飲む秘策があったのではないかと問うた。考えてくると言って出て行った時に何かやったんだろうと。すると供の者が、「おらぁ5升なんて酒ぇのんだことがねえだから、旦那様の面目を潰しちゃぁ〜なんねぇって、心配でなんねえで、表の酒屋へ行って、試しに5升のんできただ」
呑兵衛噺を得意にしていた小さんの十八番だった噺だ。古今東西類似の話があるが、どうも元ネタは中国らしい。雲南省出身と思われるソバと良く似た経歴と思い込むのは私だけか。柳家甚語楼の呑みっぷりが、それはそれは旨そうなので、噺を聞いているこちらの盃も進んでしまった。
柳家さん生 「青菜」
植木屋が仕事中一休みしていると、ご隠居から酒は好きかと聞かれ振舞われる。肴に鯉のあらいまでご相伴に預かり大喜び。「時におまえさん、菜をおあがりかい?」「へい、大好物で」と続く。ところが、次の間から奥さまが「だんなさま、鞍馬山から牛若丸が出まして、名を九郎判官(くろうほうがん)」と妙な返事。ご隠居は「義経にしておきな」。これは、客に失礼がないようにする為の隠し言葉で「青菜は食べてしまってない」「それなら止しとけ」ということだと教えられ、すっかり感心し、家に帰って女房と同じ遣り取りを試みる。そこへ悪友の建具屋がやってくる。こいつはいいタイミングとばかりに、次の間にみたてて押入れに女房を押し込み、ご隠居とのやりとりを建具屋と再現しようとするが、菜のもの嫌いで上手くいかない。なんとか女房の登場まで話は進めたものの、待ってましたとばかり手をたたくと、蒸し風呂のような押入れから転げだした女房が、「だんなさま、鞍馬山から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官義経」と、言ってしまった。植木屋は困って、「うーん、弁慶にしておけ」
こっけい噺が得意なのだろう柳家さん生の噺で、会場が狭く感じるほどの大盛り上り。演題を何時決めているのか?甚語楼から呑兵衛つながりで、「青菜」だろうか。鯉のあらいも、つい先の生ねん「狸の鯉」でもでてきたなぁ〜。その日に即興で演題を組み合わせるのだろうか、洒落たものだ。次の寄席も楽しみだぁ。
日 時:7月13日(木) 18時45分〜20時00分
場 所:東京都北区王子本町1−21−4
無識庵「越後屋」別館2F
JR京浜東北線・東京メトロ南北線 王子駅下車徒歩5分
木戸銭:2500円
王子「越後屋」 2006年11月9日の記事を読む
王子「越後屋」 2006年5月15日の記事を読む
王子「越後屋」 2006年5月2日の記事を読む
有難うがざいました。