そうだ。そうそう。次はのんびり蕎麦前を……と思いながら、なかなか再訪のチャンスがなかった根津「よし房 凛」へ行こう。

頑張ってもせいぜい15・6人でいっぱいいっぱいの店内、ひょっとすると少々並んで入店か?と、恐る恐る店を覗く。しめしめ空席がある。美術館の閉館時間が早すぎると、日頃常々強くつよく思っているのだが、これが功を奏する事もあるのだ。
■■蕎麦前
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花冷えの夕暮れに、うろうろふらふらとしていたので、
冷えた体は直ぐにでも熱燗をと所望していたのだが、相方は取り合えずビールだという。仕方がない、恵比寿ならグビっと一口付き合おうか。
〜突出し〜
しらすを纏った豆腐を揚げてあり、大葉の香りが爽やか。
一口食べた瞬間、やはり日本酒が欲しくなる。
熱燗 「一の蔵」本醸造無鑑査 650円をお願いした。萩焼?の徳利と猪口で、おっとっと。あぁ〜〜五臓六腑に染みわたる。
〜鴨はつ焼(6切)
500円〜
上から時計回りに 鴨はつ ねぎ 舞茸 しし唐 プチトマトがそれぞれ焼いてあり、味噌(梅肉・エシャロット・西京味噌など)、柚子胡椒がつく。
焼いて甘みを増したねぎやトマト、酸味のある味噌や香り高い柚子胡椒、一皿でいろいろな味を楽しめて良い感じ。
相方が、もぅ暖まったからと冷酒「清泉」特別純米 750円を欲しがる。もぅ…仕方がない、じゃぁ…付き合おうか。
〜出汁巻き玉子
650円〜
甘みのないすっきりとした旨み。
相方が、「豊盃」純米しぼりたて 750円を欲しがる。
ったく…仕方がないなぁ、付き合おうかぁ。
〜天ぷら盛り合わせ
1,300円〜
左手の一群は、海老 モロッコインゲン 京人参 タラの芽
真ん中奥が、白海老とゴーヤ
右手は、椎茸 きす 南瓜
手前の雪だるま様なのものが大根おろし
天汁と塩の両方を用意して下さる。
カラッと揚がった白海老を見た相方が、「清泉」特別純米 750円に戻りたいという。本当にまったく仕方がない、ふ・ふ・不本意ながら付き合う。
それにしても、細長い天ぷら全部が、すっくと起立してません?技だろうか。ここは、重力が弱いのだろうか。
相方が、「清泉」特別純米 750円を、また欲しがる。一人で飲ませるものかっ!じゃなかった、仕方がない…、仕方がないので、付き合おうじゃないですか。仕方がない…あぁ甘露。
■■〆蕎麦
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〜 せいろ
750円〜
本日は、茨城県筑西産 常陸秋そば。
二八 おおよそ?20メッシュだそうで…?
やや細打ちで、少し堅めの茹であがり。
薬味は、ねぎ 山葵 大根おろし。
辛汁は、甘さ控え目ですっきりとしている。
鰹節や醤油をそれぞれに感じる。
〜 地蔵 950円〜
熱々の餡かけ蕎麦である。
大きな油揚げの上に白髪葱とおろし生姜が乗っている。
更に別添の薬味として、ねぎ。
品書きの名前の由来をお聞きすると「油揚げを、お地蔵さんの涎かけに見立てている…○※×!▽※A◇……な質感の感じが…※×!▽※Z◇…らしいのですが…」だそうだ。
え?え?もぅちょっと…もう一歩…ズバリと、はっきりと教えてほしいな…ぁ。「油揚げが、涎かけに見える」だけじゃぁ…。しかし誠実な若い女将にはこれ以上分からないという。話を作ってまで説明しようとしない、良識の持ち主だ。これは正しい姿である。
が、執拗な酔っ払いは満足できない。サービス精神旺盛でちゃめっけたっぷりに知らない場所の道案内だってするイタリア人の絵画や彫刻を、この夜は見たばかりである。即影響されてしまう私が、勝手な新説を展開せずに誰がする?
さぁ〜て、甘汁のかけそばに油揚げを乗せたものを「きつね蕎麦」という。この名称は、特に関東では一般的了解事項だ。江戸時代の文献の中では「信田」とも言い、信太(しのだ)山の女狐が安倍保名と結ばれて陰明師・安倍晴明を産んだというのが「きつね」と「信田」の繋がりだ。ここから酔いに任せて妄想を書き連ねれば、更に化かして片栗粉や葛粉で煙に巻くようにトロミをつけた「きつね」のあんかけ版を、「狐」が化けて「地蔵」となったと洒落たのではないか?「お狐さまとかけて地蔵さまと解く。その心は、どちらも赤い涎かけを掛けています。」なんちゃって?ダメ?だめかしらん。
私の作り話を「どうもなぁ…」という方は、以下の1〜5を何かの足しにどうぞ。こちらは、ちゃんと伝わった噺などです。えぇ…お地蔵さまがお坊さまに化けて、毎日蕎麦屋で蕎麦を食べる。ひょっとすると狐が化けているのではないかと疑い、そっと後を追う。すると…。ともあれ、蕎麦と地蔵さまや狐は、随分と前から切っても切れない関係にある。ようだ。
1.蕎麦喰地蔵 (九品院)
2.そばの散歩道 蕎麦喰地蔵(九品院)
3.そばの散歩道 柴又蕎麦地蔵(薬王山医王寺)
4.落語王子の狐
※蕎麦はでてきません。
扇屋は、玉子焼きを名物とする料理屋。
それでも、
辺りの蕎麦屋を探すと(?何故?)
私の大好きな王子「越後屋」は、
王子稲荷と扇屋のご近所。
隔月で、落語会会場となっている。
5.ブログ内「蕎麦喰地蔵記事」




話が脱線したが、厨房の中3人の平均年齢も若く、キビキビとしている。花番を務める女将?も若い。最近の若い者は……静かで丁寧な対応をしてくれるなぁ。この不況の中、若い人が頑張っている姿がとても頼もしく、嬉しい。我々の両隣りのテーブルでは、それぞれ若い女性の一人客が、自家製がんもどきやら、温蕎麦やらで、一杯やりつつ楽しんでいた。居心地よく安心な店の証だろう。下町らしく気取らないところが好きだ。
■住所文京区根津2-36-1 ■電話03-3823-8454■定休日火■営業時間月〜土11:00〜15:00/17:30〜21:00 日11:00〜15:00■アクセス東京メトロ千代田線 根津駅 徒歩4分