09年6月02日 発行
小学館 ¥1470(税込)
編集者: 山下洋輔
著 者: 相倉久人 浅井慎平 菊地成孔 北島敬三 神津善行 小林千寿 佐賀英生 椎名誠 杉山洋一 妹尾河童 高平哲郎 竹村文近 玉木正之 タモリ 筒井康隆 徳丸吉彦 中澤まゆみ 挾間美帆 林英哲 林家正蔵 平岡正明 丸谷才一 南伸坊 村松友視 茂木大輔 マイク・モラスキー やくみつる 山下啓義 与那原恵 寮美千子
先日、浅草「大黒屋」で一人せいろを手繰っていると、小上がり隣テーブルの女性グループから、一冊の本が回ってきた。それが、これ「蕎麦処 山下庵」。〜幻の河童庵顛末記〜妹尾河童さんの頁のところに附箋が打ってある。客全員に「回覧せよ」と、グループのリーダーと思しき方が、手をひらひらグルグルさせてジャスチャーで示した。
はいはい。とばかりに、附箋あたりを中心に拾い読みすると、過日大黒屋主人との少しばかりの雑談の時に知った 妹尾河童さんとのあれこれの逸話が、河童さんの手による文章になっていた。他の頁にもチラリと目をやったのだが、私がニヤニヤと読んでいるのを面白がった更に隣のテーブル客が、まだかまだかと首を伸ばすので、仕方なしに切り上げて本を渡した。
大黒屋の店主と女将は注文に大わらわで、本を巡るこちらの出来事には無関心のようであったが、その場に居合わせた客が皆で、人には漏らしてはならない秘密ごとのように声なく目配せや身振りだけで、全員に回覧するという不思議な共同作業が静々と執り行われたのである。
蕎麦には人を繋ぐ力がある。
ということで、帰り道に即、購入。一気読みした。とても面白かったが、困ったのは読み進めると、またまた蕎麦屋に駆け込みたくなってしまったことだ。各界の蕎麦好き執筆者の“蕎麦通”というよりも、“蕎麦愛”に溢れた文章を読むと、時と場所を無視して、蕎麦が食べたくなるのだ。これでは用事もできない、家にも辿りつけない、蕎麦屋わらし(いやオバサン)になってしまうではないか。
といいつつ、本から解放されると、蕎麦屋わらしにもならなかったが、気がつけば唯のオバサンだったし、紹介記事をアップすることをすっかり忘れていた。
ところが、今日たまたま飛び込んだ蕎麦屋の辛汁が!冷蔵庫臭がたっぷりと付き、更には揺らすと汁が凍るのではないかと思われるほどギンギンに冷えていたことに愕然として、
蕎麦・蕎麦汁にも適温があるんだぁ!こりゃ、酷いにも程がある!と思い
季刊「新そば」32頁「温度を味わう」加藤哲哉(江戸ソバリエ講師・元ヒゲタ醤油OB)のエッセイを思い出し
この「蕎麦処 山下庵」の山下啓義(山下洋輔さんのお兄さん・元ヒゲタ醤油代表取締役専務)の「荻窪と六本木」の195頁終わりから6行、〜そばはせいろに盛られた色、艶、太さを見て、一、二本食します。つゆは色の濃さ、透明感を見て、香りと温度を確かめ一口すすります。〜を更に思い出し
あっ、遅ればせながら紹介記事をブログアップしよう!となったのでありました。…です。
いつもコメント有難うございます。
この本、多分、いやきっと、ジャズもお好きなソバスキーさまのお好みに合うと思われます。著者面々もその筋の方々も多くゴージャスですし、この年代?の方々に共通の時代の空気も香ってきます。若輩者の私でも、結構楽しく読めました。