2008年12月29日

松江「ふる川」

ご近所に住む江戸ソバリエ仲間に、「なかなか良い店ですよ。」とお教えいただいたのがきっかけで場所を調べるうちに、あちこちに掲載されている蕎麦の写真を見て「美味しそうだなぁ〜」と伺う機会を狙っていた。上手な写真に写った蕎麦ならば、喉ごしや粉の様子が、ある程度は想像できる。

 
そして「ふる川」のブログ蕎麦屋の戯言を見つけ時々読むようになると、ご主人のホンワリと温かなお人柄が滲み出る文章が魅力的で、これは是が非とも今年中に伺わねばと。



しかし…松江ってどこ?島根県の県庁所在地?じゃないもんねぇ。という具合で、自他共に認める方向音痴の私、縦に細長い東京都江戸川区の真ん中あたりの土地勘はゼロ。調べたどこの駅からもバスに乗らなくては行けないようだった。我が家から、この松江「ふる川」へのアクセスは、ちょっと便利とは…。


 


蕎麦前

■   経路検索し、5時半到着予定で家を出発。予想通り迷ったもののなんとか6時過ぎに辿り着く。この日の寒さは想定外で、道中頭の中で「まずぅ キュゥ〜〜ッと熱燗っ!」と願望が固まっていた。が、しかし、実は、内緒だけれど、こんな私でも一人で伺う初めてのお店では、いきなり日本酒をお願いすることに、すこぉ〜〜しばかり躊躇があって、様子を伺い間を置いて許されそうか?判断した後、お願いすることにしているのだ。最近は少なくなったものの、女性一人の客がカクテルやワインならばまだしも、「熱燗っ!」とオーダーする雰囲気にない店が、少なからずあるのだ。その後の気まずく居た堪れない雰囲気を思うと、涙をのんで日本酒を諦めるか、まずビールで様子をみるか(こんなに寒い日は、ビールという選択肢はないですな)…小心者としては、いろいろと大変。


 


ここ「ふる川」では、ブログの文章通り、気さくでほんわかとした空気が流れている。「いらっしゃいませ」の直ぐ後に「外は寒かったでしょう」と続き、包み込むように席に案内してくださった花番さん(奥様?)の笑顔が温かで、まったく何の躊躇もなく「熱燗っ!お願いします。」と言えたぁ。ということで、即お願いした蕎麦前は、雪国舞茸の天麩羅¥500.-と、大七¥600.- を熱燗で。抹茶塩でいただく舞茸の天麩羅は、舞茸の旨味と独特の歯ごたえがしっかりあり、美味しいっ!そして量もたっぷり。日本酒のラインナップは、新潟の誰もが知っている有名どころ\500.-600.-と、山口の獺祭¥700.-、福島の大七\600.-。どれも良心的な値段設定だ。本当は、獺祭を追加し、もっとあれこれ頂きたいところだったが(鴨とか・・・湯葉の天ぷらとか・・・いいだこの旨煮も美味しそうだったなぁ)、帰り道を思って少し及び腰に。


 


 

蕎麦薬味

■    蕎麦前でホッと一息つくうちに、ご主人がでてきてくださった。想像通り温和なお話しぶりで、なんだか恵比寿様のような面立ち。お勧めのお蕎麦を伺い、このお店のオリジナルの豚せいろ¥1100.-を頂くことに。


ふる川豚せいろ.jpg

 

冷たい二八のせいろに、熱々の豚肉の入った辛汁が付いている。ほんのり胡麻油の風味を感じるお汁の中には、なす たっぷりの青ねぎが入り、ちょっと中華風?気分もありボリューム満点。

今回は特別に、豚せいろばかり病みつきになって食べている常連さんに乞われて出している味噌を、小皿に付けてくださった。その青唐辛子が刻まれた味噌のピリリとした辛味が加わると、お汁のアクセントになって、また違った魅力に変わる。面白い。ちょうど一年くらい前に旅したシンガポールで覚え、それ以来我が家の保存調味料になっている青唐辛子を酢付けにしたものにも通じて、爽やかな香りのある一瞬の辛味で、あとの辛味がすっきりと消える。熱々の白いご飯にも合いそうな味噌だ。


 

今年の蕎麦の作柄、粉の事、ブログの話など、色々いろいろお教えいただいた。

お話を伺っていると、なんとっ!「蕎上人」で修業なさったとのこと。二八は「蕎上人」の二八の粉とほぼ同じような…粉なんですよと。しかし「蕎上人」の二八よりもほんの少しもっちり感が強く、粗めの粉が混じっているような…と思って伺うと、会津産の石臼挽きのソバ粉8割の部分のその内の1割位に少し粗挽きな他の産地のソバ粉を入れて、もっちり感を出しているとのこと。なるほどぉ。お忙しい中の蕎麦談義に、感謝。麺は、蕎上人の蕎麦よりも、ほんの少し太め。



 

蕎麦湯

■    とろ〜〜りと濃厚なポタージュ状だった。美味しいソバ粉を使う蕎麦屋の蕎麦湯は、黙っていても美味しいものである。しかし作為のない自然な蕎麦湯が美味しくなるには、何人前かの蕎麦を茹でた後だ。昼休憩後、午後一番の客にも関わらず、この味ということは、作ったにしろソバ粉を即席に釜の湯に溶いただけではないだろう。ソバのタンパク質やでんぷん質がしっかりと円やかになっていて、粉っけを残さず角のない自然な状態になるまで、ちゃんと手を掛けてあるのか、うぅ〜ん侮れないぞぉ。もっとおかわりをお願いしたい蕎麦湯であったが、なにせその前の舞茸の天麩羅&豚せいろでお腹がいっぱいになっていて…三段別腹をもってしても…もぅ入らなかったぁ、残念。



 

初めて伺ってみて、きちんと美味しいお蕎麦が、このコストパフォーマンスをもって展開されているのだから、少々遠いくらい何の問題でもないのでは?と思えた。都営一日乗車券を購入し伺う方法を思いついたことだし、また是非伺いたい。

チャーミングなご主人のブログには、石臼の会から「気になるお蕎麦屋さんのブログ」としてリンクをはらせて頂いた。




 

■住所江戸川区松江2--■電話03-3655-7239 ■営業時間11:30 14:00 ( 売り切れ次第 ) 17:30 20:00 ( 売り切れ次第 ) ■定 休 日 火 ・ 水■アクセスJR総武線新小岩駅南口下車 タクシー又は都営バス葛西駅行き 松江バス停下車徒歩2分。西葛西行きは東小松川一丁目バス停下車徒歩5分。都営新宿線船堀駅下車 新小岩駅行き又は錦糸町駅行き都営バスで東小松川一丁目バス停下車徒歩5分。都営新宿線一之江駅下車 新小岩行きか亀戸行きで松江バス停下車徒歩2分


09年9月12日訪問 松江「ふる川」の記事を読む

ラベル:蕎麦
posted by 笑門来福 at 23:04| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 江戸川・葛飾・江東区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
〜 笑門来福さま 〜
はじめまして。
ブログ “ 蕎麦麩羅探訪 ” の蕎麦麩羅座[ そばぷらざ ]と申します。

私はこちら “ ふる川 ” さんの蕎麦が好きで、よく伺っております。
日頃 一所懸命頑張っているご主人を少しでも応援したいと思い、
2007年1月よりブログを始めました。
で、その一軒目は勿論こちら、 “ ふる川 ” さんでした・・・。
以降、良い物を出していこうと頑張っていらっしゃるお店を探訪。
(時々サボっちゃってますが・・・笑)
おかげさまでブログも来年で三年目に入ります。
そんな中、このように私の好きなお店を取り上げて頂き、
大変うれしく思っております。
我が家の今年の年越し蕎麦はこちら “ ふる川 ” さんのお蕎麦で、
あと何時間後かにお蕎麦を取りに伺うのですが、
その時お忙しいとは思いますが、笑門来福さまのこの記事の話を
させて頂きたいと思います。

この押し迫った大晦日にコメントを入れ、大変申し訳ございません。
また勉強の為にこちらを拝見させて頂きたいと思っております。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
それでは、良いお年を・・・。
Posted by 蕎麦麩羅座 at 2008年12月31日 03:23
蕎麦麩羅座さま

コメント有難うございます。
蕎麦麩羅座さまは、「ふる川」さんの美味しい年越し蕎麦で、良いお正月をお迎えのことと存じます。
お正月ボケ?で、コメントのお礼が遅くなり申し訳ございません。

仰る通り、本当に良いお蕎麦屋さんですね。蕎麦が美味しいことももちろんですが、ご主人のお人柄も素敵だし、蕎麦麩羅座さまが応援される気持ちがよく分かります。
また是非伺って、蕎麦麩羅座さまに倣って今度は天麩羅とせいろをいただきたいと思います。
ブログ “ 蕎麦麩羅探訪 ”も、拝見しています。

今後とも、どうか蕎麦のように細く長くの末長くお付き合いのほど、お願いいたします。
Posted by 笑門来福 at 2009年01月02日 13:36
これは『良い蕎麦屋だ』と思わず引き込まれる記述。
笑門来福さんの人の心の機微に訴える感性豊かな表と、
正確であり、ユーモアを交えた文章は、楽しく読ませていただきました。
松江「ふる川」さんへ訪問したような気分です。
三段別腹はさておき、美味いもののために
別腹はいつも御携帯いただくようお願いします。
より多くの貴重な情報を御提供いただくことができ、
お陰で、我われ読者は、いっそう幸福になれます。
Posted by 宵待庵 at 2009年01月18日 22:05
宵待庵さま

稚拙な文章への過分なお褒めの言葉、
深い御配慮のあるコメントを、有難うございます。
心より感謝いたします。<m(__)m>

私は、宵待庵さんの書く大きな青い空を心地よい風が吹き抜けていくような
大らかでロマンティックな文章に憧れます。
が、憧れていても雰囲気すらも真似できず、
元々持っているキャラクターもあり、
お笑い路線で、のらりくらりと進んでおります。
こんなですから、読んで頂くことが、
恥ずかしいような嬉しいような…です。

「ふる川」さんは、本当に居心地のよい素敵なお蕎麦屋さんです。
太鼓判(三段腹太鼓?ポンと叩き)を捺します。

宵待庵さまも、是非お勧めのお蕎麦屋さんのことや
蕎麦打ちをしていて気がついたことなど、
ご紹介いただければと、願っております。

有難うございました。
まずは、お礼まで。
Posted by 笑門来福 at 2009年01月19日 11:08
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