2008年11月03日
江戸前のソバ畑 脱穀
以前は茨城に畑を借りてソバを栽培したこともあり、蕎麦打ちもするという蕎麦好きの夢の島熱帯植物館館長玉木恭介さん。4年前、更地になった熱帯植物館隣接地に、ソバを植えることを思いついた。ソバ畑の場所は、かの有名な生ゴミ処分場だったので、念のため都の検査機関で調べたところ「問題なし」というお墨付きをもらったそうだ。以来毎年継続し、今年は8月22日(金)に2000uの土地に、常陸秋ソバの種を蒔いた。
ここでは、ソバ栽培のいくつかの工程で、ボランティアを募って作業をさせてくれる。残念ながら私は、種まきにこそ参加できなかったが、その直後から、度々生育の様子を見に畑に足を運んだ。満開を迎えた頃は、可憐な白い花に時の経つのも忘れ、さわさわと草花を揺らす風で、どこか遠くへ旅をした気分になったり…夏の大切な場所になった。
そしていよいよ実りの秋。
10月25・26日に手刈りし、ずぅっと腰を屈めた作業に難儀しながらも、ぷっくりと膨らんだソバの実に頬を緩ませ、天日干しにした。幸いにも雨のなかった一週間が過ぎ、11月1日(土)10:00〜15:00、11月2日(日)10:00〜15:00、熱帯植物園の方々の過密なスケジュールの中で、予定に組み込まれた脱穀の日を迎える。
私が作業参加したのは、東京で木枯らし一号が吹き荒れた1日(土)である。朝、受付を済ませて集合場所に集まると、脱穀作業の簡単な説明があった。なかでも他のソバ脱穀と違う一番のポイントは、ユーカリについてである。
畑の入口や、並木のようにソバ畑の一辺に並ぶ背の高い高いユーカリの木 から落ちた実や、つぼみのがくや花弁が合着した蓋のような部分が、干されたソバの束にも紛れ込んでいる。収穫したソバの実の中に、それらを混入したままにしておくと、打った蕎麦がユーカリ風味となってしまうことは、昨年までの体験で十分認識されている。
始末の悪いことに、ユーカリのその部分の大きさは、ソバの実の大きさとほぼ同じときている。この混入を極力防ぐように、目を凝らして作業をすることが肝要だ。ただ育ってそこに根を張るユーカリに罪はないものの、手渡された見本のユーカリの枝を、憎々しげに見つめる参加者の目と目。夏のソバ畑を見つめる私に、心地よい木陰を作ってくれていたユーカリが、少し可哀そうにもなった。皆に愛されるようなユーカリの有効利用はないものか。
さて、いよいよ作業開始。金網が張ってある台のようなものに、ソバの束をぶつけて実を叩き落とす。熱帯植物園職員の方が、「今日は、日頃の憂さをぶつけてください。」などと、ソバの実とともに冗談を飛ばして、デモンストレーションを行い、皆それに従う。憂さが晴れたからかどうか、参加者も笑顔にお喋りの花を咲かせながら作業が始まった。が、やがて、笑って口を開けていると漏れなく枯れた葉っぱや潜んでいた虫、土埃にソバの実が口の中に入ってしまうことが分かり、手ぬぐいで覆面をし、口を噤んで黙々と作業をすることに。良く乾いたソバの束からは、面白いように実がボロボロと落ちる。
落ちた細かな葉や茎、土やソバの実を、プラスティック製の箕(み・農作業で使う手作業用道具)に掻き集め、それを揺すって中身を選別する。これがなかなか難しい。館長玉木さんの手解きでトライするも、なかなか思うように作業が進まない。
自分の方に比重の重いソバの実を集め、軽い土や葉っぱなどを寄り分け前から落とす。卵焼きを、或いは炒めるチャーハンを、フライパンを煽ってフワッとひっくり返すことをイメージし、箕を篩うのだが簡単にいかない。それでも時間を掛けて選別していると、なんとなく黒く輝くソバの実だけが目立つようになって、収穫を実感する。
テクニックだけでなく、繰り返し行うことで筋力も使う箕の作業で、腕がパンパンになった。正直な話、日頃の運動不足が如実にあらわれ、帰り道には早くも筋肉痛。箕を握って手の握力を使い果たしたのか?夕食の支度時には、包丁を持つ手がヨレヨレして力が入らないという体たらく。しかし、1泊おいて…或いは2泊おいて、筋肉痛が現れると思っていた私は、当日から既にその症状になっていることを「まだ若いからだなぁ〜♪」と勝手に決め付け、心地よい疲労感に浸った。
一粒たりとも採ったソバの実を無駄にしないように…そう思っていたのだが、今日の作業全般に渡って、下手糞な私だけでなくとも、相当なロスが発生していることは疑いようがない。台風の上陸しなかった今年は、順調な発育でまずまずの実り。館長玉木さんによれば、今年も大凡200kgの玄ソバ収穫量であろうとのことで、この日を終えて集めたソバの実は、大きなポリバケツ2杯半強。明日の作業でも、これくらい有るとしても、結実量に対し、粉になるまでの歩留りの悪いソバを体感し、植物として雑穀扱いのソバが、貴重で高値になることに納得させられる次第。
というわけで、作業ボランティア対象の12月7日(日)、蕎麦振る舞いの日が待ち遠しい。今年は夢の島で自然薯も収穫されており、蕎麦振る舞いには、つけとろろ蕎麦が食べられるらしい。とろろも大好きなんだなぁ〜♪。
一緒に刈り取りや脱穀体験をさせていただいた蕎麦っ喰いな方々と、この度も交流が持て、蕎麦振る舞いの日にお会いすることを約束した。蕎麦は人を繋ぐ。熱帯植物園の職員の皆さま、ボランティア参加者の皆さま、有難うございました。
■住所江東区夢の島3-2■電話熱帯植物館03-3522-0281■アクセス東京メトロ有楽町線・JR京葉線・りんかい線 新木場下車、夢の島公園内を熱帯植物園まで徒歩15分
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