2008年07月09日

駒形「蕎上人」

蕎上人盛り塩.jpgこの日もここへ。「せいろ」を頂いた。いつもの通り安定した蕎麦を頂き、職人仕事の凄さを思う。いつ来ても同じ水準のものを提供することの大変さ。一期一会という言葉があるが、お客にとっても店にとっても、一枚の「せいろ」を介した出会いは、その日その時一度きり。その一度の積み重ねが、店の信用につながる。手打ちブームと言われて久しいこの頃だが、淘汰されて生き残った店の地道な努力、後姿をみると、瞬間芸で許される素人との圧倒的な力の差を見せつけられるような気がする。 

厨房入口を覗かせていただく
と、店主平沼さんは、ちょうど教室のお弟子さん達?を前に、打った麺を手に取り、釜前で穏やかに「22秒」と言って、茹で時間の解説をしていらした。平沼さんの打った幅19mmの二八蕎麦、一人前の茹で時間だろう。「蕎上人そば教室」は500人を超える卒業生をだしており、私たち「石臼の会」の仲間のなかにも、こちらのそば教室のお世話になった者もいる。最近は蕎麦打ち修業を、このような教室形式の場所でする人も多い。 
画像-0029.jpg

そんな日に居合わせて、たまたまの特別メニューであろうか。ほんの一口、蕎麦掻き団子と苧環(おだまきと読む・小田巻きとも書く)のご相伴に預かった。団子は、蕎麦掻きを小さく一口大に丸め、串にさして土佐醤油をつけ、少し炙ってある。醤油が香ばしく、蕎麦の旨味も味わえるうえ、見栄えも楽しい一品。なんといっても大した道具を出さずに作れる。これは是非とも自宅で真似ようと写真を撮った。
 

苧環は、どちらかと言えば、関西のうどん屋でのほうが馴染み深い品書きだろう。茶碗蒸しの中にうどんが入っている。蓋を開けた時の柚子の香りと、つるんとした卵と腰のあるうどんの歯ごたえのコントラストがいい。「守貞謾稿」には、上方のうどん屋の品書きにある小田巻きの値段が三十六文、うどん十六文、蕎麦十六文とある。卵が高価であった時代には、特に贅沢なものであった。こうして江戸時代の品書きにもでてくるくらい、その起源は古いものだが、今でも東京の蕎麦屋ではそんなにポピュラーなものでもないようだ。
 
画像-0028.jpg若旦那が、「器の底にうどんが渦を巻いて、麻糸を玉のように巻いた苧環(おだまき)に似ているので“おだまき蒸し”の名がついたと言われています」と解説していた。

他にもいろいろと、蕎麦屋の種物などの名前の由来は、粋で洒落の効いたものが多く、知っていると楽しさが倍増する。江戸っ子の遊び心が感じられる話も、折にふれこのブログでも遣り取りできれば嬉しい。
 

■品書き
せいろ\1000.-、田舎そば¥1000.-、けし切り¥1300.-、ゆず切り¥1300.-、茶切り¥1300.-、すずしろ¥1300.-、そばとろ¥1500.-、鴨せいろ¥1900.-、冷やし鴨南そば¥1900.-、五色そば¥1800.-、冬の鍋\3800.-、甘味(そばがき、しる粉、甘味そば、ぜんざい)各\900.- 


■住所台東区駒形2-7-3■電話03-3841-7856■営業時間11:3014:00 17:0020:30(売り切れ次第閉店)■定休日月・第2・第4■アクセス都営浅草線浅草駅A2出口より徒歩5 

      次項有別の日の「蕎上人」
   訪問日別、各記事左上の店名のところを、
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posted by 笑門来福 at 08:05| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 文京・墨田・台東区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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