秋の日は釣瓶落とし。高島屋で買い物をして表に出たら、4時半前だというのにもぅ日が暮れている。ついこの前までは、暑い暑いと言っていたのに。
「ほんのちょこっと、一杯だけ!飲んで帰ろうよ。」と、我が家の筆頭呑兵衛組頭。この時間から一杯?!つまりは…蕎麦屋酒となれば、私が首を縦に振ると思っている。まぁその通りだけれど。
日本で一番蕎麦屋がひしめき合う通り?激戦地(NHKの番組で以前、そう言っていた)、辺りをぶらぶら・・と入るが、あれれ?なんだか記憶と店の正面の方角が違う。と思ったのは、日本橋「利休庵」だ。さて前回伺ったのは…はっきりと記憶に無いくらい前のことのようだ。あれぇ〜?記憶の焼き直しの為に暖簾を潜る。なぁ〜んて言い訳したりして。
■■蕎麦前
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可愛い花番さんに、1階のど真ん中に案内される。うぅ〜ん記憶が歪んだ?すっかり分からなくなったので、まっいいかっ!と、座るなりビールプレミアとだし巻き玉子(九条焼)をお願いした。
すると、我々の顔に「飲むぞぉ」と書いてあるのか、「はいっ」と気持ちのよい返事に続けて「どうしましょうかぁ お通しを、アテ3点盛になったものにもできますけど」と。そりゃぁ、ね、じゃぁ、そうしましょう、ですよ。古く長く続くお店は、こういう間合いの良い花番さんが必ず居て、店を盛り立て守っているんだよなぁ。チャキチャキした遣り取りが好きだぁ。
ビールプレミアは、¥750.-
奥:だし巻き玉子(九条焼 ¥900.-
手前:3点盛にしてもらったお通し¥700.-
九条焼ということはぁ、九条葱がたっぷり入っていて…京都と江戸のコラボなんだなぁ。3点盛も日本酒が欲しくなるような心得た品ぞろえだし…蕎麦屋としての品書きだけではなく、地下の酒肴風品書きから2階の定食屋さんや3階の料理屋さんとしての和食全般を網羅しているから、料理の幅が広い。
筆頭呑兵衛組頭が「段々調子が出てきた」と、出さなくても良い調子を全開にし日本酒(大関)熱燗700円×2をオーダー。更に調子に乗って「関あじ刺身 あっ、それから 蛸と蓮根の天ぷらも」と。「ほんのちょっと1杯だけ」と言ったのはどの口だ。まったくもぅ。
関あじ刺身¥2000.-
蛸と蓮根の天ぷら¥1700.-
私は蓮根の天ぷらが大好き。蛸を柔らかく揚げるのは、難しいんだろうなぁ。添えの大根おろしや天つゆを、サッと2人前用意してくれるのも嬉しい。
それにしても…記憶が歪んだのか…もしかしたら先代の弟さんの店だった銀座「利休庵」(既に閉店)とごっちゃになっているのか…とパクパクグビグビやりながら話していたら、先程の花番さんが「えぇ〜と…・・・3〜40年前…建て替える前は、向こうが正面でした。」と厨房の角に向かって指を指す。
ギョッ?! さ・さ・3〜40年前位?! なんとなんと。ということは、前回はその頃? まさかぁ〜だって40年前じゃぁ生まれてないしぃ(ウソ)。
記憶の謎は解けず。ただボケただけかも。
■■蕎麦
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もりそば ¥650.-
「蕎麦は丹精に足踏みし、御前粉と呼ばれるそばの実の真ん中の部分のみを使用した贅沢な更科そばと、三年ねかせた鰹節を使い「手間はかけただけ、そばは旨くなる」と4〜5日間ねかせた汁でつけて食べる心憎い逸品。変わらぬ伝統の味、利久庵のお蕎麦を是非お試しください」とある。
えっ?足踏みですかぁ!「うどん みたい」と一瞬思ったけれど、直ぐに有楽町更科の故藤村先生を思い出した。藤村先生の更科をしっかり繋ぐための練り方は、鉢を手前斜めに固定して、45度に前倒した体で渾身鉄砲突きのようにして練っていた。傍らで観ていても迫力満点。でもこの力の掛け具合は、女性には簡単に真似出来ないと強く感じた。
けれど、もしかしたら同じような作用を、足踏みでできるのかもしれない。現在の私は、更科を有難いことに力でない別な方法で打つけれど、それでもやっぱり見てみたいっ!!!見せて貰いたいっ!!誰か、拝み倒して見学ツアーを企画してくれないかしらん…。
昭和27年 三重県出身の初代が日本橋に「利休庵」を創業し「納豆そば」を考案したのだという。ということは…こちらの店が初めて私の大好きな「納豆そば」を出した店??そうなの?そうだったの?
初めての品書き、品書き発祥の店の特定は、とてもとても難しい。大好きな納豆そばを出すお店々を、頭の中で彼方此方思い浮かべる。
納豆そば ¥950.-
ふんわり乗せられた幅広で香り高い鰹節は、表通りにある大和屋さんのもの。しっかり厚めの山本海苔店の海苔にも負けない存在感だ。地元愛かなぁ日本橋のお店オンパレードだ。添えられた千住ねぎと辛子を好みで加え、玉子を溶いて、叩いてある納豆と混ぜ混ぜし、底にあるちょっと辛口の本鰹と宋太鰹、利尻昆布を使った汁とグルッと混ぜて手繰る〜カイワレもピリッとアクセントになって、うぅん美味しい。
ここで、「ご馳走様〜」となるはずが、なぁ〜んだか突然
「おかめ」のご尊顔を拝する機会は…やっぱり今でしょう。ということで「おかめ蕎麦お願いします」
おかめそば¥1,000.-
江戸前の甘汁。キリリと鼻筋の通った粋な御姿。うぅ〜んでも正直言って、今ちょうど季節だし、キリリと通った松茸の鼻が良かった…あはっ1000円じゃ無理ですな。
おかめは、お店ごとに具材、並べ方が異なっているそうだが、どこが目で何処が頬なのか、先程から頃合い良く話に混ざってくれる花番さんに聞いても、まぁはっきり分からなかった。「おかめの顔です」「鼻は玉子焼きですよね」「はい」「目はどこでしょう?」「……」「こっち向きでいいですよね?」「はい」「頬はどれ?」「…・・・」
と言う具合に、ここでも謎が続くのであった。
おかめの参考:石臼の会ブログ内
漫画「そばもん」の本物のおかめそばを味わう
■住所中央区日本橋室町1-12-16■電話03-3241-4006■営業時間月曜日〜金曜日11:00〜20:30 (L.O.)土曜日11:00〜16:00 (L.O.)■定休日日曜日・祝日■アクセス半蔵門線三越前駅A1またはA4出口 徒歩2分/銀座線神田駅 徒歩10分/•JR神田駅 徒歩10分
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