2012年11月25日

奥久慈紀行・企画実施報告


 石臼の会では毎年秋に信州戸隠・菅平方面に美味いそばを求めて旅する「そば紀行」を実施して参りました。しかし今年からは、これまでお世話を頂いてきた中川さんのご事情もあり宿泊施設を変更せざるを得なくなりました。


 

そこで新たな「そば紀行」先として、次の訪問をメインテーマとして北茨城・奥久慈を企画いたしました。


@   まず、是非にと決めたのが奥久慈にある粗挽きの「色蕎茶遊荘・慈久庵」

A   予てから憧れの金砂郷そばと、「常陸秋そばフェスティバル」

B   町田から奥久慈に移住された石臼の会仲間「奥久慈山荘・宵待庵」を訪ねること。


      


 

昨年秋のこと、かねてから家内の希望だった奥久慈「袋田の瀧」を訪ねた折、途上にある「慈久庵」に立ち寄って食した、焼畑、石臼、粗挽きの美味いそばに出会って感動したものです。奇しくもそのそばは東京・荻窪「本むら庵」のものと透明感、口当たり、その香りといい、そっくりに思えました。後で知った事ですが、それもその筈、庵主の小川さまは「本むら庵」で修行されて世に出られたとの事、今もそのまま石臼、粗挽きそばを踏襲されていることを知った時、ご指導頂いたこともある往時の「本むら庵」小張庵主を彷彿し、懐かしさと嬉しさが込み上げてきたものです。


慈久庵2.JPG

地ネギ天せいろ8.jpg

小川店主と4.jpg


その時の宿は小川庵主にご紹介いただき、「竜神吊大橋」の傍の「竜っちゃんの湯」でゆっくり温泉に浸かったものです。この記事を後に石臼の会・ブログに掲載したところ是非との訪問希望もあり、いつかご案内したいと思っていた所でした。今回実現した「そば紀行」の第一の目玉とし企画しました。






 

次はかの有名な金砂郷から地名が変わった常陸太田市の「常陸秋そばフェスティバル」を訪問することです。昨年は3万人の人出もあって大賑わい、当日には日ごろ交流のある鵜の会も出店し寺西名人も打たれていました。かの達磨の高橋氏の出店ではせいろを戴きました。茨城県北振興室、宮崎氏に挨拶。



寺西名人.jpg

鵜の会 寺西名人





達磨高橋名人.jpg

達磨 高橋名人



達磨の蕎麦.JPG

達磨 せいろ




「奥久慈山荘・宵待庵」を訪ねました。素晴らしい自然環境の中に自分で基本設計したという立派なお屋敷で庵主と再会し、行程上タイトな時間、篤い接待を戴きました。感謝・・・・。



宵待庵玄関前.jpg



 

その他、奥久慈往復の途中、酒蔵を見学し歴史的建築に触れ訊ね、知識を深め、試飲して楽しみました。

根本酒造.jpg

根本酒造20蔵主 根本朗裕氏





木内酒造.jpg

木内酒造・会長 木内造酒夫


代暦にも名前にも感激です!



ただ、残念だったのは「慈久庵」で思いがけず3時間半も時間を要し「袋田の瀧」にご案内出来なかったこと。でもあの「慈久庵」に浸かったのだからいいか!とも!


 

今回、有志10人で車3台(興味津々さま、Kさま、Micさま車提供)に分乗し実施いたしました。お三方、運転もありがとうございました。




 

(シリウス記)





  次項有2011年11月 常陸太田市「記事



次項有2012奥久慈紀行訪問た「慈久庵記事









posted by 石臼の会会員 at 07:07| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | ⇒栃木・茨城・群馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

常陸太田市「慈久庵」

昨年のちょうどこの頃、石臼の会siriusuさまが訪れたこちらのお店。訪問記事を読み、土産話を聞くにつれ、行ってみたいと願うようになっていた。更に今年3月、東十条「一東庵」で(一東庵は、常陸太田「慈久庵」の焼畑作業を手伝う事も有るという何軒かの蕎麦屋さんの中の一つ「小松庵」系)手繰った「慈久庵焼畑水府在来 十割蕎麦」の力強くしっかりとした風味が、素晴らしいなぁ〜と思ったこともあり…、益々もって思いを募らせた。故郷に戻った「慈久庵」の蕎麦は、どんなだろう?という興味を強く抱くようにも。

そんなところへ好機が巡り、siriusuさまが「奥久慈蕎麦紀行」として、こちらのお店もご案内くださることに。ということで、石臼の会一行10名の団体での訪問である。


 

時が
ここだけゆっくり流れている?

遠路遥々車を駆って泊がけいい気分(温泉)で来たのだから、売り切れ御免で蕎麦を食べ逃すことは、絶対に避けたいと、朝一番のりして軒先で開店時間を待つ。深く色づいた木々を濡らすしっとり細かな雨の所為なのか、人の気配をあまり感じさせないどっしりとした建物の所為なのか、時々通る車の他は音が無く、とても静かで時がゆっくりゆっくりと流れているよう。

慈久庵興味津々さんカメラ.jpg

やがて定刻になり、入り口が開く。一番奥の席に招き入れられた後、折角だからアレもコレも食べたいと、物凄〜〜く真剣に品書きと睨めっこ。蕎麦仲間と、書いてあることを長く長くかかって想像したり吟味するのも、また楽し。とは言うものの、相当に時間が経った後も一向に注文を取りに来ない。

それもそのはず、こちらのお店は、ご主人一人で厨房の中も外も、どこもかしこも全て一人で運営しているのだ。並んだ順に、客を奥の席へと誘導し、並んでいた順に端から端に席が埋まったところで、今度は順に注文を取りに来る。というか、小さなメモ用紙に食べたい物を各自が書いてご主人に渡し、注文を通す方式だ。広く大きな建物の中を、ご主人が小走りにくるくると動き回る姿に、我々はメモ方式を個人別にせず、siriusuさまが段取り良くまとめて、一括して注文することにした。

そう…我々の居た時間、なんと3時間半以上! 並ぶ列は絶えなかったし、テーブルもずっと塞がっていた。だから、注文までの間、それぞれの料理が運ばれるまでの間。どちらにも、たっぷりと時間がかかるので、気の短い人には向かない店かもしれない。竜宮城にいた浦島太郎さんのように、アッという間に感じた楽しい時間のあと、歳をとってしまうことは無かったけれど、慈久庵で流れていた時間と、他の場所の時間の流れが違ってしまっていたようで、その日の後の予定がドンドン押してしまったのは、本当のこと。

ともあれ
我々はその間それぞれ思い思いに、店を隅々まで堪能しようと、展示?してある雑誌類や、丁度品の数々、茶製造に使う機材類、テラスから眼下に広がる景色までも見て回った。ヨーロッパの田舎家風?建物の外見も素敵だったけれど、建物内部も壁といい柱といい床といい、使われている扉やドアノブに至るまで、どっしりとした本物の質感を持っており、ゆったりと贅沢。この存在感は、実際に見てみないことには、分からなかった。蕎麦や料理を食べる前から、いいなぁ〜るんるんと感動してしまう。連れて来てもらって、よかったっ!

それにしても、あぁ〜ほんとに静か。



蕎麦前


さて、その順番が回ってきたら、料理もトントンと運ばれて来た。



慈久庵岩魚うるか.jpg 

超珍味・岩魚のうるか¥700.-


もぅ〜〜っ物凄く美味しいっ!濃厚で複雑な発酵食品の旨みと、酒のあてにちょうど良い塩加減。これはで、当然日本酒が飲みたくなってしまぅ…と申し訳ないことに、我々は、日本酒南部美人本醸造¥650.-を。ドライバー三銃士には、ノンアルコールビール¥400.-を。 ごめんなさい。






慈久庵蕎麦粉のポタージュトリュフ添え.jpg 

そば粉とトリュフのポタージュ¥1300.-


トリュフは全部で3片ありましたぁ…ドライバー三銃士に食べて貰うべきだったなぁ…すみません、私1/2片ほど食べちゃいました。まっ当然そこはトリュフの味、なんだかお洒落な品書きでしたぁ。




 

慈久庵おひしょ岩魚卵添え.jpg

超珍味・おひしょ岩魚の卵添¥600.-


おひしょとは、大豆と小麦、それに食塩水を混ぜて麹で発酵させたものだ。原料も共通する味噌に風味が似ている…恐らく、「
醬(ひしお)から来ている名前だろうから、“醤油のもろみ”のようなというのが表現として適切か。そこへイクラより2回りほど小粒な岩魚の卵を添えて。ほろほろと崩れる食感が楽しく、プチっと噛めば魚卵の旨みが広がる。我が家で真似るなら、せいぜいイクラの醤油漬けで…誤魔化しておくところでしょう。ともあれ、これも日本酒のあてに素晴らしい。あと2合は欲しくなった…。



慈久庵こんにゃく.jpg

自家製刺身こんにゃく¥450.-


仲間内とはいえ隣のテーブルのオーダー品ゆえ、写真だけ撮らせてもらった。プリップリッの食感だったとか。この地域の名産品ゆえ、道の駅などでも、こんにゃく関連のお土産をたくさん見た。ちなみに、
凍みこんにゃくは、全国で唯一、常陸太田旧水府の特産品らしい。







慈久庵岩魚一夜干し.jpg

岩魚の一夜干し¥800.-


これも隣のテーブルのオーダー品ゆえ、同じく写真だけ撮らせてもらった。美味しそう。日本酒に合いそう〜ぅ。






 

慈久庵そばがき.jpg

そばがき¥1500.-


掻きっぱなしのスタイルは、美味しいソバ粉の味が、そのまま味わえる食べ方だ。やや緩めに掻いた粗挽きの粉のざらつき感と香ばしい穀物の味わい。魅力的なソバ粉だと、よく分かった。薬味には、ねぎと味噌。




蕎麦





慈久庵葱天せいろ.JPG 

葱天ぜいろ¥1700.-


長ネギの白いところも緑のところも、5センチほどの長さにザクザクと切り、それを更に薄く切って、サッと揚げてある。甘みの増した葱天に、塩も添えられている。葱だけの天ぷらとは、注文時は少し寂しいのかしらとも思ったけれど、食べてみればいやいや全然!十分に満足できるし、とても美味しい。蕎麦の薬味に、ねぎと山葵。






慈久庵山芋ぶっかけ.jpg 

山芋ぶっかけ¥1500.-


仲間内今回の一番人気。おろした粘りの強い自然薯に、葱、鰹節、海苔、生玉子の黄身が入って、ぶっかけ風に冷たい蕎麦汁をかけて頂く。とてもとても美味しい。今回の旅の「常陸秋そば蕎麦祭り」で自然薯をゲットした私は、家に帰ってからもこの組み合わせを真似ようと、ニンマリ。






 

慈久庵鴨せいろ.jpg

鴨せいろ(温かい鴨汁のせいろ)¥1800.-


鴨と葱は、言わずと知れたベストコンビだ。熱々の鴨の油が蕎麦汁に溶け込んで、奥行のあるしっかりとした旨みが味わえる。あぁ〜美味しい。






慈久庵せいろそば.jpg 

せいろそば¥1100.-


手繰った全ての蕎麦に共通しているのは、粗挽きに製粉してあるスペシャル特級ランク常陸秋ソバのソバ粉の力強さ。味わい深く、穀物の香りが濃い。そして透明感のある細打ちに仕立ててあるので、のど越しも申し分ない。バランスの良い汁との相性も良く、一つの完成形。


「慈久庵」店主小川宣夫さんは、石臼の会にも縁のある荻窪「本むら庵」で8年間修行した後、90年から南阿佐ヶ谷で「慈久庵」を営んでいた。「本むら庵」譲りの石臼挽き自家製粉・粗挽きの粉でみごとに透明感のある細打ちの蕎麦を打つ。その後02年になって生まれ育った常陸太田市・旧水府地域に戻る。荒れてゆく故郷の里山を再生したいという思いから、ソバで繋がる仲間たちと旧水府地域の農家が皆で協力しあって、焼畑でソバを育てる。1年目20アール、2年目40アール、3年目は60アールという具合に、毎年耕地を広げてきたらしい。だから「慈久庵」が東京阿佐ヶ谷に居たときは、水府在来というかぁ、常陸秋ソバの特級品とも言うべきこの特別な在来農法の焼畑で作った玄ソバは、使っていなかったことになる。

東京に居た時の蕎麦と、両方を食べてみたかったなぁ。(実際、今回「奥久慈蕎麦紀行」同行の諸先輩の中には、めでたく両方を食べ比べた方々が何人もおり「当時も蕎麦は旨かった」と、感想を漏らしていらした。)何故私は、「慈久庵」が阿佐ヶ谷にある時に行かなかったのだろう。残念。





今は、石臼の会ともご縁のある荻窪「本むら庵」や、日頃私たちも時々お邪魔する都内のいくつかのお店でも、この焼畑で作った旧水府地域の常陸秋ソバを手繰ることができる。だからそんな事も楽しみに今後もまた、蕎麦屋を回ることになるだろう。



 

蕎麦後




 

慈久庵柿のうんてろ.jpg

本日のデザート「柿のうんてろ」¥550.-


皿が運ばれてくるまで、「柿」の何なのか???さっぱり分からなかった。一口食べてみたら、シャーベット状に半分凍ったように、よぉ〜〜く冷えた柿であった。うぅ〜〜ん…「うんてろ」って何だろう?凍みこんにゃくを作る地域であるし…「凍み」凍らせるということか?


帰り際、ご主人に伺ってみると、とても親切に「この地方では、よく熟れて、てろてろにトロケルようになったものの事を、う・ん・て・ろ、と言います」と教えてくれた。なるほど。柿に限らず、熟れて柔らかくなったものに使う言葉なんだ。へぇ〜。へぇ〜。へぇ〜。の3へぇ〜。

品書きに使う言葉にも、ご主人の郷土愛を感じる。



どうして、この力強い旨みのあるソバができあがるのか。焼畑の灰がもたらす栄養分(窒素など含有量が増えるらしい。それに、殺菌効果も)が最大の理由なのか。宮崎椎葉村(やっぱり焼畑でソバを育てている)や、他の地域のそれとは、どんな違いがあるのか。水はけの良い小石交じりの赤い土に、昼夜の気温の差に、或いは、過去は続けていたタバコの後作に…秘密があるという人もあるけれど…どうなんだろう…。ご主人が、店の前に並び続ける多くの客に一人で対応し続ける限り、蕎麦談義に時間を割いてくださるような機会は、巡ってこないだろう。漏れ聞こえていた寡黙で…とうい評判よりも、ずっと優しげなご主人と、お話できる日はあるか。いくつもの謎は解けず仕舞いだけれど、袋田の滝の訪問とともに、また次に訪れる為の口実に残しておこう。

ご案内くださったsiriusuさま、長時間の運転をご快諾くださったドライバー三銃士の 興味津々さま Kさま Micさま、会計を取り仕切ってくださったhighlandさま ご参加の皆さま 有難うございました。




 

慈久庵:

■住所茨城県常陸太田市天下野町2162 ■電話0294-70-6290 FAX0294-70-6291■定休日水・木曜日(祝日の場合営業・翌日休み)■営業時間11301430■アクセス車・常磐自動車道日立南太田I.Cより30分竜神大吊橋を目指し、その1Km手前/電車・JR水郡線 常陸太田駅より バス40分 もしくはタクシー20



  次項有お店のHP


 

  次項有2011年11月 常陸太田市「慈久庵」記事へ

  次項有2012年11月 「奥久慈紀行・企画実施報告」記事へ







るんるん
posted by 笑門来福 at 07:00| 東京 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | ⇒栃木・茨城・群馬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月24日

第38回調布蕎麦打ち会開催

第38回調布蕎麦打ち会開催

11月10日()に、調布市文化会館 たづくり」にて、石臼の会第38回調布蕎麦打ち会を開催しました

奥久慈蕎麦紀行の前日という日程の中で、会員12名の参加で楽しい蕎麦打ち会でした。


                 調布38回蕎麦打ち.JPG

蕎麦粉:水車(池田製粉)

北海道音江産の玄蕎麦(新蕎麦)


今日の新兵器

Iさんの新兵器「携帯できる蕎麦鉢」、どちらのお宅でもあるお盆にちょっと壁をつけて練ります。

         調布38回今日の新兵器.JPG

親会

         調布38回懇親会.jpg
【酒】

来福 純米吟醸 (茨城県筑西市)

菊正宗 樽酒 (兵庫県神戸市)

惣花 純米吟醸 (兵庫県西宮市)

真秀 ひやおろし (三重県伊賀市)

越乃景虎生酒(新潟県長岡市)

渓流 蔵囲い (長野県須坂市)

獺祭 発泡にごり酒 (山口県岩国市)

MONTGRAS CHARDONNAY (チリ)

乾杯ビール  アサヒ ザ・マスター

【試食蕎麦】

いもきり(すり、ゆで)

粗挽き蕎麦

鴨せいろう
          調布38回Tさんの蕎麦-2.jpg

【肴・つまみ】

牛バラ肉ニンニクの芽炒め

チーズクラッカー

そばみそ

タモリのキャベツ・芋天

スィートポテト

おしんこ

かき揚げ天(ゴボウ、タマネギ、イカ)


今後の蕎麦打ち会などの予定

12月3日()石臼の会忘年会 ウスケボー

12月22日()八王子蕎麦打ち会

1月26日()調布蕎麦打ち会兼新年会



posted by Mic at 18:34| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) |  調布蕎麦打ち会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月22日

高田馬場「傘亭」

ソバスキーさまから、「この前、傘亭に行ったら、店を閉めるというような事が書いてあった。」と伺った。「えぇ〜っ、本当ですかっ?」また伺おうと思いつつ、ずぅ〜〜っと間があいてしまったし、これはぁ〜今一度伺わなくては、後悔する。

お店に入ると、日本酒の品書きの直ぐ下に、「そば店の経営を希望する方 安価にて当店を譲渡いたします。希望する方は1700以後電話連絡のうえ来店にて詳細をお話しします。」(=訪問した10月中旬の状況です。)とあった。ご主人と、あれやこれや話していると、「辞める日は、もぅ決めているんですよ。12月●●日くらいには……、……、……。」と。そうなんだぁ…。ご主人は、既に決まっている事として、きっぱりと話された。なんと寂しい。

そうであるなら尚更の事、傘亭さんをしっかりと楽しませて頂かなくては。つまり昼酒っ!なのだ。前回伺った時も、確か筆頭呑兵衛組頭と一緒だったものだから、美味しい肴と日本酒をゆっくりたっぷり飲んだ。今回もやっぱり筆頭呑兵衛組頭と一緒ということは…だ。これら全てを必ず覚えていなくては。




蕎麦前



まず、カウンター席を横に詰めてくださったご常連らしき方の料理の進み具合を鑑みて、注文の間合いを計らねばならない。本当は“ねばならない”ってことも無いのだけれど――この店では何故かそういう空気になり、ご主人の所作の“間合い”を楽しむことになる。その間、店内に張り巡らされている説明書き、品書きを読み返し、「何にしようかなぁ〜」と今日の展開を組み立ててみるのだ。

まず、品書きの「神亀」の文字が目に入った。以前、行田の神亀酒造にお邪魔した折、蔵元が「重い酒から、軽い酒に向かって飲んでいく」と、仰っていたことを急に思い出した。そうだ今日は、最初っから日本酒は、埼玉「神亀-純米」¥800.-を燗にしてもらおう。それに、合わせるのは、大好きな一品「もろみ豆腐」。この組み合わせは、軽いウォーミングアップなしに、ズンといきなり重たいところから、始める感じではないだろうかぁ。今日の前のめりな気持ちが表れている?ような気になり、大いに満足す。



傘亭もろみ豆腐.jpg

もろみ豆腐¥600.-
品書きには、「九州 珍味 美味です。熟成されています。」とあった。原発事故以来、品書きに全ての産地を事細かに書くことにしたとか。


しっかり熟成がすすんでおり、ねっとりとした食感に深い旨み。あぁ〜やっぱり、美味しい!これで、3合くらい飲めちゃいそう。つい先日、あの発酵学の小泉武夫さんは講演会で、平家の落人伝説とともに、九州は熊本の五木村あたりに伝わるこの発酵保存食のことを、熱く語っていた。そんなタイミングでもあるし、元々日本酒を筆頭に発酵物が大の好物だから、「熟成」の文字に激しく反応し、どうしても抗えないし。

神亀一口グビッ。やはり!ほらぁ。熟成した重みのある神亀とは、もぅ〜〜ぴったり。思わず舌鼓。頬っぺた落ちるぅ。



次の酒は、和歌山 黒牛-純米¥700.-
ここ十数年すっかり名前の大きくなった「黒牛」は勿論、私は同じ名手酒蔵「野路の菊」のどっしり感が大好き。「黒牛」を選んだのは、目の前に飾られた一輪挿しの菊からのこんな連想でもある。



どんどん酒器が変わって…って、酒がかわるからだけれど…次は、藤岡酒造「蒼空-純米¥800.-。こっくりと米の旨みを感じるけれど、酒名の蒼い空の通りに、後口はすっきり。伏見の酒と言えば、女酒の代名詞だけれど、このすぅ〜っとひいていく爽やかさは、まさしく優しく素敵な女性をイメージさせる。(まるで私のよう…、あれ?違う?、失礼まだ酔ってる。)


傘亭卵焼.jpg

卵焼¥800.-(混雑時は、頼めない)
このジューシーで、柔らかくって軽やかな卵焼に、たっぷりの大根おろし。出汁の染みたアスパラガス。あぁ〜ホッとする。


ふわっと軽いこの卵で、穏やかでふんわり優しい丸みのある宮城「綿屋-純米」¥800.-を、キュッと。合うぅ〜。お互いが優しく寄り添って、美味しさを増す。


 

鳥取「鷹勇-純米」¥700.-

調子の出てきた私は、この大谷酒造の七割磨きあたりの「強力」をガッツリと燗に…と、心の底から欲っしたけれど、今日のテーマ(?って程の事もないですな)“重い→軽い”の流れを大きく逆行してしまうので、ちょっと抑えて…やや戻り?っていうか…「強力」が品書きになかったし。つまりでも、テーマに沿うなら「神亀」の後に「鷹勇」だったような。うん?



いや。
神亀鷹勇東北泉菊姫黒牛出羽桜綿屋蒼空梅錦吟醸)だったな。いやいや、菊姫と東北泉が逆かぁ。ともあれ、本日はこれら純米酒を梅錦以外は全部、燗にしていただきましたぁ。あれ、何か1種類足りない。あっ、山形は酒田のだ。まぁ〜最初は4合くらいで終わるつもりだったし、途中から、行きつ戻りつしてしまったから…。



たまぁ〜にしか訪れない気まぐれな客を、傘亭ご主人は覚えていないだろうけれど、伺えば何時でも変わらずアレコレをとっぷりとお話くださる。本当に美味しいソバの味わい方。牡丹品種について。日本で一番美味しいカレーの話やら、宿泊した中で一番居心地のよいホテルの話やら、宗教論やら、凄い量の資料やスクラップを基にした原発のあれこれやら、そして今日もやっぱり自然食の深い話を経巡り、古今東西にどんどん移り変わって、間があいてしまった時間を遡り、○昔前の初めて伺った頃と同じ、ホンの少し若々しい気持ちになる。傘亭ご主人の安全で美味しい昼酒蕎麦屋への変わらぬ情熱。けれども、実際には皆がそれぞれに時間を重ね、歳を取った。それにしても、こんな風に蕎麦屋さんを楽しみ始めてから、成長したのだろうか?私は。どんより停滞しているではないか、だめだなぁ。




そ、でも、だから、取りあえず、
食べたものの写真を並べてゆこう。(随分と、撮り忘れがあるやも)



傘亭抜天.jpg

抜天ぷら(海老2、付野菜)¥1300.-

下に見える三角の小皿には、三種類の塩。


こちらの天ぷらの衣は、いわゆる昔からの蕎麦屋の天ぷら衣よりは薄く軽いけれど、天ぷら専門店よりは、ほんの少し厚い。以前ご主人も「ちょうど中間を狙っている。」と言っていた。それには理由があって、昔からの蕎麦屋で「抜き」を頼むということは、ジュワッと衣に蕎麦汁が染みて、天ぷらが美味しく食べられると同時に、蕎麦汁に天ぷらの油が入ってコクのある旨みが生まれるという筋書きがある。天ぷらと汁、両方が両方とも美味しい酒のあてに、と。けれども、こちらでは吟味した天ぷらの素材を、風味の違う塩で楽しむので、衣を必要以上に厚くしない。(あれ?でも、お願いすれば汁も出してくれた事が…あったような記憶も…ないでもないような気もしてきたなぁ…。あれ?どっちだ!って。)







蕎麦掻・径山寺味噌.jpg

右上:蕎麦掻(値段、忘れました)、左上・下の立派なワサビ&大根おろし、青ネギが先に出てきて、上質で美味しい焼き海苔を「巻いて食べても…」と、おまけしてくれた。至れり尽くせり、とは正にこの事。本当に有難うございます。


右下:径山寺味噌(きんざんじみそ・唯一本物・和歌山、と書いてあり)¥500.-
「一緒に食べて、美味しいですよ」と、瑞々しいきゅうりを、何本も付けてくれたのだけれど、話に夢中になって、つい写真を撮る前に、パクパクっと。







傘亭ー昆布.jpg

「美味しいから食べて」と-おまけ、昆布。

上品で深い旨み。当然、日本酒に凄〜く合う。




 

傘亭焼蕎麦味噌.jpg

次なる、おまけは、京都の白みそをつかった蕎麦焼味噌。そりゃぁ〜美味しいです。





蕎麦うどん




傘亭うどん.jpg

こんな時になって、初めて食べる傘亭の「うどん」

汁の色は、蕎麦汁より薄〜く、昆布の香りも。薬味は、青ねぎとおろし生姜。
麺は、普通にイメージするうどんよりも、ずっと細打ちで少し黄色っぽく、しっかりとした小麦の風味がある。麺の表面がとてもすべらかで、歯にも感じるこのピチピチとした食感は、キュゥッと締まった確かなコシから生まれているのだろう。





傘亭二色.jpg



二色そば(せいろと芥子)¥1300.-




薬味に、山形の辛味大根「ピリカリ」のおろし。



傘亭せいろー麺.jpg

せいろからは、穀物の香り、しっかりとしたソバの旨みがある。今となってはなかなか食べる機会のない(収量が少ないから、希少と言ってもいいかも)、なんと北海道・牡丹ソバだとのこと。特別に栽培農家から分けてもらっているそうだ。こんなルートを、今後誰か受け継ぐのだろうか…。



傘亭芥子きりー麺.jpg

美しい芥子きりには、芥子のつぶつぶが沢山見て取れて、香ばしいコクのある細打ち麺に仕上がっている。








 

蕎麦後



傘亭蕎麦後 柿.jpg

頃合いを見計らって、良く熟れた柿をまるまる1個/人、そして、巨峰を房半分ほども出してくれた。最後に季節のフルーツを出してくださるけれど、今日はまた、量もたっぷり。

有難うございました。




 

■住所新宿区高田馬場3-33-■電話03-3364-5758 ■営業時間1210〜蕎麦の売り切れるまで。(夕方には、なくなります)■定休日金曜(祝日の場合は営業)





posted by 笑門来福 at 14:29| 東京 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | 新宿・豊島・渋谷区 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする