2012年08月01日

第5回千葉県そば大学講座



平成24年7月28日(土)、「第5回千葉県そば大学講座」が開催された。(主催:千葉手打ち蕎麦の会、協賛:千葉県そば推進協議会、後援:全国麺類文化地域間交流推進協議会・千葉県教育庁・習志野市教育委員会・日本大学生産工学部)酷暑の中、蕎麦フリーク200余名が、日本大学生産工学部・津田沼キャンパスに集結し、統一テーマ「そばを学ぶ」に沿って一日蕎麦講座に浸った。



そば打ちは創造である
東北学院大学教授 石川文康氏



私たち蕎麦好きで、講師石川文康先生を、多数の蕎麦関連書物の著者として、また蕎麦研究会の主宰者として、そのご高名を知らないものはいない。今回この講座を受講し、大変失礼ながら「あっ!そうだ。そういえば、哲学者だったんだ」とカント研究の第一人者である事を、今更ながら思い出した。



千葉そば大学 石川先生.jpg



そば打ちが「創造」であること。そして、その「意味すること」を格調高く哲学的に説いた90分は、私たちにとって耳に優しい心地の良い内容で、ちょっとコソバユイ気持ちにもなった。講義中あげられた事例の幾つかは、既に仲間内で体感し、周知のことではあったけれど、こうして哲学者から大義名分を授かったからには、益々大手を振って蕎麦打ちにのめり込む者が続出することだろう。





そばの科学に学ぶ
手打ちそば研究家 熊田 鴻氏

江戸ソバリエには、お馴染みの熊田先生である。今回の講座内容も、電子顕微鏡の写真を多用し、とことん数値化し、グラフで見せ、図解してのソバ粉や蕎麦打ちに纏わる諸動作についての講義だ。昨年度の「プロのそば打ちに学ぶ」講座蕎麦屋八兵衛 町塚延夫先生の使った粉の分析資料が加わったことが、興味深かった。



尚、講師熊田先生のHP「蕎麦打ちの科学」へは、この石臼の会ブログ右脇に常設リンクをはっている。そのなかの「資料室」というカテゴリから、当日の講演資料(PDFファイル)を読むことができる。





プロのそば打ちに学ぶ
磐梯そば道場主宰 長谷川 徹氏

毎回、素晴らしいプロの技を質疑応答も交えてフランクに見学できるこの時間が、とてもとても楽しみだ。プレゼンテーション能力を兼ね備えた匠の名人を、講師にお願いする主催者の大変な努力にも、敬服する。



今回の、福島で名人の名を欲しい侭にしている長谷川先生は、「会津の丸のし」を、巧みな話術とともに見せてくださった。



この日匠の用意した「会津のかおり」1kgを、43%の加水で手早く水回し、まとめ上げる。

自動回転方式(=今、私が勝手に命名。麺棒を簡単に上下に転がしているようで、何故か麺体が自分で回っていく。結果、丸の形が綺麗に大きくなっている)



丸だししたそれからが、なんと!exclamationなんと!exclamation&questionなんと!exclamation×2である。

丸く大きくなった麺体の周囲を、1cm程ぐるりと切り取るのだ。切ったそれ(=「へた」、というそうだ)を丸く練り直し、麺体の真ん中に水を付けてペタンと貼り付けて同化させ、何事もなかったかの如く、更にそのまま丸くのしてゆく。



千葉そば大学 ヘタを貼り付ける.jpg

ペタンと中央に貼り付けたところ


長谷川先生の説明では、「この方法は、保科正之つながりで、高遠→会津に伝わったもの。今でも信州の一部地域のおばあちゃん達もやっている。寒い外で打つことも多かったから、寒風で外周がひび割れるのに対応して編み出した工夫だ。」と。



なんと!ぴかぴか(新しい)初めて見た打ち方ぴかぴか(新しい)である。高遠→山形→会津とお国替えした名君 保科正之・・・なのだから、高遠の次の赴任地である山形はどうなのかと、どうしても気になる。この6月に見学した山形「庄司屋」の打ち方は、普通の丸のしであったけれど。山形のどこかに残っているかもしれない。どうなんだ?

ひらめきこれを読んだご存知の方、是非教えてください。



私の驚きを置いて、更に作業はすすみ、まさに「打つ」という言葉の通り、ダイナミックにトントンと打ちつけるように音をさせて、麺帯を巻きつけた麺棒(直径4cm・長さ120cm)を操る。

丸くのしたものを、難しいたたみ方で畳んで、土手の形が特徴的な“会津のこま板”を使って、スイスイとリズミカルに切る。美しく製麺されたものは、舟に縦に重ねて並べる。終了。


手際の良いアッという間の時間に、何度「あっ!えっ!」と言ったことか。まぁ〜なんと、いろいろな打ち方があるものだ。だから、益々蕎麦打ちって面白い。







蕎麦料理に学ぶ
永山塾主宰 永山 寛康氏

経歴や技の確かさから、蕎麦界の第一人者として活躍中の永山先生の講座は、毎回人気がある。今回は蕎麦屋の種物の延長線上にある「蕎麦料理」について美味しそうな写真を多用して、お話しくださった。



お腹がグゥ〜と鳴ってしまいそうな、美味しそうなお話は、とても素晴らしく楽しかったし、レジュメに、多くの解説やレシピも親切に開示してあり、とても参考になった。…のだけれど、そこはソレ、やはりプロの修行をした者が作れる、技と込みになったキリリと洗練された料理であるからして、90分受講しただけでは、とても解説通りに作れそうにはない。何か一つ位は出来る様になりたいと思うものの、まだまだ蕎麦打ちの下手糞な私は、蕎麦料理実践となれば敷居も高く「へぇ〜、そうやって作っているんだ」「難しそうだなぁ、凄いなぁ」と言うのが正直なところ。お客さんとして、蕎麦屋さんを味わい楽しむ為の嗜みとして、今は覚えておいて、いつか?もぅ少し蕎麦打ちが上達したら、実践チャレンジしたい。



ラベル:千葉 蕎麦 講座
posted by 笑門来福 at 06:19| 東京 🌁| Comment(5) | TrackBack(0) | ■「耳学」いろいろと薀蓄を | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする