宵 待 庵 閑日記
2012・2・9
節分の日、雪を見るために会津へ出かけた。茨城県北は晴れ。春近しを感じさせる陽気。県境から福島へ入ると、所々に雪があり、気温が下がる。磐梯熱海では、すっかり雪に覆われ、久方の雪道運転。分離帯も車線も消え、白い道は美しい。
宿の露天風呂に入る頃には、雪は止み、月が輝いた。風呂から見える灯篭の雪、庭の石積みの横には一輪の山茶花。やがて小雪が舞い、雪国の茶室にいるような按配である。千宗易もこれほどのシツラエと演出ができるであろうか。偶然のめぐり合わせ、自然の差配の賜物。正に雪月花を、日本の美を心ゆくまで味わい尽くせた。侘び、寂びではなく、艶と粋に酔った宵であった。
明くる二月四日は立春。東北の雪国は冬真っ只中。朝寝坊を満喫し、ゆるりと動き出して、会津若松を巡り、南会津、下野街道の宿場町、大内宿を目指した。磐梯熱海では、積雪は例年の半分と聞いた。日本海側では約二倍の積雪という話。大内宿は雪の中。雪見が目的ではあるが、かねてから念願の水蕎麦を体験。
地吹雪で寒く、痛い顔を覆いながら、『三澤屋』の暖簾をくぐった。
中は土間で、太い梁や柱が生活と時を感じさせる。かなりの客で土間は混雑していたが、囲炉裏の炭火は寒気で硬くなった体をほぐすのに十分であった。しばしの待ち時間のあと、座敷に上がり、囲炉裏端に着座。
挨拶が済み、注文の前に出されたのは、会津名産「みしらず柿」と共に漬けた大根の漬物。大根と柿の相性の良さ。塩だけでこの味わい、漬物好きにはたまらない。田舎文化の潔さ。次に運ばれてきたものは、高遠蕎麦、いわゆるネギ蕎麦である。ネギの一本付けが人を呼ぶ。
「水蕎麦」は大きな椀の氷水に盛ってある。大根の搾り汁が入った蕎麦猪口二個が用意され、好みで生醤油、削り鰹、おろし大根で食す。いまひとつは、焼き味噌、胡桃を入れて食す。やはり一本ネギ付き。美味。
〜posted by 奥久慈山荘 宵待庵 〜
会津大内宿「三澤屋」:
■住所福島県南会津郡下郷町大字大内字山本26-1■電話0241-68-2927■営業時間9:30〜17:00 ■アクセス電車の場合:会津若松駅から会津鉄道で約43分、湯野上温泉駅下車、湯野上温泉駅から車で約20分。/車の場合:東北道西那須野塩原ICよりR400、R121経由で会津若松方面へ約1時間30分 大内宿の共同駐車場から歩いて4軒目
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