
オープン4日が過ぎ、華やかな土地六本木から来た店舗らしく、私でも知っている芸能人からの花も、まだズラリと並んでいる店の表。
入口すぐに置かれた師匠 阿部孝雄さんからのお花は、大輪をつけた純白の胡蝶蘭だった。

店内に入ってみると直ぐ、既に馴染んだ心持になる。それもそのはず、六本木「竹やぶ」のテーブルや椅子がそのまま使われており、スタッフもどうやら同じ人である。
壁にはオブジェとなった師匠からの励ましの言葉などが掛り、内装の雰囲気も什器類も六本木「竹やぶ」時代と同じ。座席数は22ほどで、上手く仕切りや区切りで、個室仕様になっているところも。
■■田舎せいろ
■■ お隣のテーブルの方が召し上がっている「せいろ」が、見たところ六本木「竹やぶ」のせいろと瓜二つだったので、同行者でもないのに、一緒にちょっと手繰った気になって、それじゃぁ〜私は「田舎せいろ」\1000.-で、と。それに体験的に言わせてもらえば、夜くれば「田舎」は時に品切れになっているだろうから、早い時間に来た時にコレを注文すれば、得をした気分にもなるという寸法。


玄ソバを皮ごと石臼で挽いてある。美しい星が散らばり、透明感のある細打ちの田舎は、手繰れば馥郁たる穀物の香りが感じられ、すぐに繊細な甘みが追ってきて、するりと抵抗感なく喉を滑り落ちる。そう、つまりは喉ごしも良い田舎。太い蕎麦をギュギュっと噛みしめて食べたり、ザラっとしたひっかかりを楽しむ田舎とは、目指すところの違う田舎だ。
なんだか言葉がヘンだけれど“都会の田舎”というかぁ、“洗練された華やぎのある田舎蕎麦”というかぁ、そもそも田舎という品書き名の似合わない田舎蕎麦だなぁ…と。

「御揚げを炊いたものです。よろしければ、召し上がってください。」と、小皿で運んでくださった。
ほんのり甘く、美味しい出汁のふんわり染みた一品。うぅ〜日本酒が欲しくなってしまいそう。いやぁ〜、でもイケない、この後の予定を思ってグッと我慢がまん。
蕎麦湯は、“何気に作った?”ナチュラル系かも。この日店が開いて、蕎麦2枚目を茹で終わった時に所望して運んでもらった蕎麦湯である。本来おそらく釜の湯は、あまりソバを感じられない程、サラサラなはず。でも、そこそこにソバを感じる白濁加減であった。敢えてポタージュ系と言われるほどの濃厚粘度にはしないのだけれど、さも何気なさげに、その実きっちりと作ったものかもしれない。それともこれは、開店前のまかない蕎麦もたっぷりと茹でた釜の湯なのか?
■■蕎麦後に水あずき
■■ 柏「竹やぶ」はじめ系列店でも私の大好物、大納言を使った自家製「水あずき」。こちらのお店では、¥450.-で。ひんやりとした冷たさが、残暑の残るこの日の陽気にもぴったり。品の良いすっきりとした甘さと、とぅる〜り滑らかな口解け感に、うっとり。2人前食べたい位、好きです。

こうして美味しい蕎麦後を、用意していてくれるお店は、とても嬉しいな。神楽坂は、蕎麦も甘味も大激戦区。消費者としては嬉しいけれど、本当に大変なんだろうなぁ。
この日この後の予定の都合で、入店後30分以内で店を後にするつもりの時間配分、ササッと手繰ってパッと出る御急ぎモードの行動であった。そんなセカセカする私が会計を済ませる頃になると、なんと苅部さんが厨房から飛び出して来て、慌てて玄関先までお見送り&ご挨拶してくださった。特に六本木時代からの旧知の常連でもないし(当然、御祝いのお花を出した芸能人でもないし)、唯の一般客の私にだ。真面目で礼儀正しい方なのだ。オープン直後で忙しい時だろうに、いやぁ〜恐縮です。
折角なので、早口になって先頃発売されたDVD「竹やぶ 阿部孝雄のそば打ち」に収録されている座談会に映った苅部さんの感想を申し述べると、これまた丁寧に真面目に応じてくださった。いやぁ〜本当に謙虚で、一生懸命な方なのだ。
賃料の関係なのか、「竹やぶ」という大看板を使わない関係なのか、理由は私には分からないけれど、蕎麦も蕎麦後も「竹やぶ」で出していた品書きとよく似ているものなのに、神楽坂「かりべ」で提供されるそれらの値段は、少しお安く設定されている。なんだかちょっと得したような、有難いような気もした。が、しかし、さらに身勝手な消費者として望むのは、だんだんに、六本木でなく神楽坂にやってきた苅部さんの独自色をも出して行ってもらいたい。興味深くとても楽しみだ。 ということで、こうしてまた何度も伺いたい店が、またまた神楽坂に増えてしまったのである。あ”ぁ”〜嬉しくもあり、恐ろしくもあり。
■品書きせいろ\1000.−、田舎せいろ\1000.−、かけ\1000.− そばがき\1200.−、とろろそば\1200.−、にしんそば¥1,700円。−、天せいろ¥2,300―、天ぷらそば¥2,300。−、他 蕎麦前もあれこれあり、予約でコースもある。
■住所新宿区若宮町11-7■電話03-6317-0951■営業時間平日昼11時半 〜 15時(LO)/夜18時〜 22時(LO)/日祝11時 〜 21時(LO)■定休日水■アクセスJR中央本線・東京メトロ東西線 南北線 有楽町線 飯田橋駅下車 徒歩5分/都営大江戸線牛込神楽坂駅下車 徒歩5分


※私たちのブログの右側にある「気になるプロのブログ」欄から、常時、「東白庵かりべ」店主さんのブログへリンクしています。
■■おまけ神楽坂情報
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ちょっとバタバタと忙しくって実際に神楽坂「東白庵かりべ」さんに伺った日から、ブログにアップするまでに、一ヶ月ほども掛かってしまった。それでたまたま、時期も良いことであるし、楽しい神楽坂情報を載せてしまう。
越後屋寄席でお馴染みの柳家さん生さんから、お知らせがきた。毘沙門天で次の日曜の昼下がりに、落語会をするそうだ。神楽坂方面に足を運ばれる方は、ぜひぜひ、落語の方にもお出かけください。
「東のさん生・西の鶴二」江戸公演・その参
日時:2011年10月23日(日)昼2時より
場所:神楽坂 毘沙門天書院
木戸:2500円(できれば予約を)
演目:さん生「妾馬」鶴二「らくだ」
予約・問い合わせ エピス 03-6914-4490
神楽坂では、10月15日(土)〜11月3日(木)まで、神楽坂まち飛びフェスタ2011を開催中だ。10月22日(土)には、「がんばろう福島!福島市」もある。普段体験できない盛りだくさんのイベントも楽しみどころ。